猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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新婚編

62.夜景

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「さて、せっかくの夜景です。少し見て回りましょう」

満足そうに微笑んだラファエロはゆっくりと立ち上がる。

「そうですわね」

リリアーナもつられるように立ち上がった。

夕闇に包まれた運河沿いは、太陽の下で見た景色とは雰囲気がガラリと変わって見えた。
先程ラファエロが『恋人達に人気の観光スポット』だと言っていたのが、良く分かる気がした。
窓や水辺の明かりで照らされた街全体が、まるで恋人達の社交場のように、あちらこちらのベンチや運河に架かるアーチ橋の上に二人仲良く寄り添って景色を眺める恋人達の姿があった。

自分たちもそのような恋人同士に見えているのだろうか。
リリアーナはそんな事を考えながら、ふとあることに気がついた。

「あの、ラファエロ様。昼間のガレリアではあのように注目されましたけれど、運河こちらに移ってからはあまり注目を集めることがなかった気がするのですけれど………?」

するとラファエロは軽い笑いを含んで頷いた。

「おや、注目を集めたかったのですか?」
「いいえ!そんな事はありませんわ。寧ろこの方が気ままに歩くことが出来てありがたいですわ」

本当はガレリアの中の店をもっとゆっくりと見て回りたかったが、あのような状況ではあの時そのまま周囲の目線を無視し続けたとしても、叶わなかっただろう。

「………そうですね。こちらはガレリアと比較すると、人通りの多さが全く違うというのもありますが、やはりここは恋人達が集まる場所なので、周囲を気にすることが少ないというのはあるでしょうね」

ラファエロは答えながら静かに微笑んだ。

「この場所にあなたを連れて来たのは、ここが夜景が美しいというのもありますが、周囲の目を気にしなくても済むからというのも理由の一つだったんですよ。………ですから、今は周りを気にせず景色を眺めながら、ゆっくりと二人の時間を過ごしましょうね」

同時にリリアーナの手を握るラファエロの手に優しく力が込められた。

リリアーナは答える代わりにラファエロに微笑みかけながら頷くと、水面に映った家々の窓から溢れた明かりを見つめる。
それはまるでつい先程まで空に輝いていた太陽の光が運河の水に溶け出したかのように美しく揺らめいていた。
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