猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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新婚編

46.土産?

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「………見たいのは、本当にこの店なのですか?」

店の前までやってくると、ラファエロは少し驚いたように、小さな声で囁く。

「え、ええ!勿論ですわ!」

リリアーナが何度も何度も大きく頷くと、ラファエロは可笑しそうに笑いながら店とリリアーナを交互に見る。

「ひょっとすると、大好きな義姉上の影響でしょうか?」

リリアーナ達の前にあったのは、趣のある古い書店だった。
確かに自分が好むような明るくて可愛らしい雰囲気の店というよりも、クラリーチェが好みそうな静かで落ち着いた店構えだ。

「そうですわ!クラリーチェ様に素敵なお土産でも選ぼうかと思いまして、こちらのお店がちょうど目に入りましたの」

早口に捲し立てながら微笑むと、ラファエロは苦笑いを浮かべた。

「いくら本好きな義姉上への贈り物でも、オズヴァルド土産として本を選ぶというのは初めて聞きましたね」

おそらく、ラファエロはリリアーナが照れ隠しで適当にこの店を指さしたのだということに気がついているのだろう。
だが明確に指摘してこないため、リリアーナは誤魔化し続けることにした。

「ど………どうせなら喜んで頂けるものを選びたいんですもの」
「なるほど。あなたがそう言うのであればお任せします。ちなみにあちらにオズヴァルドの特産品として知られる革工芸の工房がありますので、選んだ本に、皮で作られた栞を合わせても良いかもしれませんね」

いつものように誤魔化し続けるリリアーナを静かに追い詰めて本音を引き出すのかと思いきや、ラファエロは穏やかな笑顔を浮かべて親切なアドバイスまで付け加えてくれた。
ラファエロの意外な反応に、リリアーナは戸惑いつつも頷いた。

「そうですわね。素敵なアドバイスをありがとうございます」

ラファエロに礼を言いながら、リリアーナは店の中へと足を踏み入れた。
さほど広くはない店内は薄暗く、ひんやりとした空間には羊皮紙と紙とインクの匂いが漂っている。

店の両側に聳える本棚には様々な本がきっちりと並べられていて、年代物の燭台から漏れる明かりで背表紙の文字が照らし出されていた。

「………いらっしゃい」

店の奥から、白髪の老人がゆっくりと進み出てきたのに気が付き、リリアーナは笑顔を浮かべる。

「本好きな姉に、プレゼントを探しているのですけれど、何かお勧めはありますか?」

ラファエロに『貴族令嬢の口調』と指摘された口調が出ないよう、気をつけながら、リリアーナは店主らしき老人に声を掛けた。
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