猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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新婚編

33.魅力

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そうしてカタリーナに挨拶を済ませた二人は、孤児院を後にした。
帰り際に子供達がリリアーナを引き留めようとしたが、カタリーナが上手に宥めてくれたお陰で何とか馬車に乗り込むことが出来た。

「私のプリンセスがあんなにも子供達に好かれるとは、予想外でした。………まあ、こんなにも美しくて愛らしいプリンセスは現実世界にはあなた以外存在しませんから、当然と言えば当然なのですけれどね」

満面の笑みを浮かべたラファエロが恥ずかしげもなくそう言ってのけるのを聞き、リリアーナのほうが恥ずかしくなって肩を窄めた。

「私よりもクラリーチェ様のほうが、物語のお姫様だと思いますわ」

約束通り、リリアーナが本心からの言葉を口にすると、ラファエロはゆっくりと目を閉じ、数回程首を横に振った。

「確かに義姉上は一般に好まれるような恋物語の主人公のように、不幸な境遇から王妃となった素晴らしい方ですが、可愛らしいプリンセス、というよりも儚げな印象の姫君といった方がしっくりくると思います」
「………確かに、そのとおりですけれど………」

的確過ぎるほど的確なラファエロの感想に、リリアーナは素直に同意する他はなかった。

「あなたがその『儚げなお姫様』を理想像としていることは勿論知っていますけれど、あなたは今のままで十分過ぎる程に魅力的だということが、今日の子供達の反応でわかったでしょう?」
「………そう、なのでしょうか?」

リリアーナが熱狂的なクラリーチェのファンだということはラファエロもよく理解してくれているので何の問題いもないのだが、その話を利用しつつさらりと褒められると、どう反応したら良いのか正直分からなった。

戸惑いながらラファエロを見つめるリリアーナに、魅惑的なエメラルド色の双眸が向けられた。

「ええ、そうですよ。………全く、私の女神は無自覚に他人を魅了してしまうのですから、困ったものですね………。まあその飾らないところもまた魅力的なのですけれど?」

わざとらしく深い溜息を零すと、ラファエロはにっこりと笑った。
リリアーナを表す言い回しも、いつの間にか『プリンセス』から『女神』に変化しており、リリアーナは更に困って顔を朱に染め上げながら、居心地悪そうに俯くほかはなかった。
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