猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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新婚編

30.お見通し

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するとラファエロは、ゆっくりと微笑みを浮かべる。

「確かにそうですね。オズヴァルドは広大な国土を維持する為に、優秀な人材を多く確保する必要があります。その為にはこういった人材育成の仕組みを充実させる必要があったのでしょう。………それは今のキエザにも当てはめられることですね」

リリアーナの言葉に同調するような言葉に、リリアーナはほっと胸を撫で下ろしながら頷いた。
と。

「………でも、本当に考えていたのは、そんなことではありませんよね?」
「えっ?」

 まるで確信しているように、自信たっぷりに宣言されて、リリアーナは一瞬何を言われているのか、理解が出来なかった。
ただ驚いたように、抜けるような碧色をした瞳を見開いていると、改めて確認を取るかのように、立ち止まったラファエロがリリアーナの前に回り込んで向かい合う。

「私の説明を聞いても気がそぞろだったのは、オズヴァルドとキエザの教育の違いについて考えている訳ではなかったですよね?」

今度ははっきりとそう告げられて、リリアーナは焦りと緊張で一気に全身の体温が上昇していくのを感じた。

「あ………あの………っ」

どうして分かったのだろうという気持ちと、何を言えば良いのだろうと考える必死さで、頭の中はぐちゃぐちゃになり、うまく言葉が出てこない。
いつもは上手に誤魔化せるのに、ラファエロ相手だと自分の全てがまっさらになって曝け出されるようで、『いつも通りの自分』が装えない。

(………どんなに誤魔化そうとしても、ラファエロ様は初めから、私が何を感じ、何を考えているのか全てお見通しだったのではないのかしら………?)

混乱した頭の中に、ふとそんな考えが浮かび上がってきた。
そしてその結論は、リリアーナの中でどんどん膨らみ、やがて確信へと変わる。

今までのラファエロの言動を振り返ってみればすぐに分かりそうなものなのに、恥ずかしさが先に立って全く気が付かなかったが、ラファエロはいつだってリリアーナの思考を、まるで読心術でも使っているかのように正確に読み取っていたではないか。

「…………ラファエロ様は、意地悪ですわ………っ」

何かが詰まったように苦しい喉の奥から精一杯の声を振り絞ると、同時にリリアーナの目から一粒の涙が零れ落ちた。
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