猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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新婚編

11.馬車の中で

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アルベルタのお茶会がお開きになったのは、太陽が西の山の向こう側に沈んだ頃だった。

「すっかり遅くなってしまいましたわね」

乗り込んだ馬車の中でリリアーナは疲労の色を含んだ笑顔を見せる。
あの後結局アルベルタとソニアに質問攻めにされ、まるで生気を全部吸いつくされたかのような気分だった。

ラファエロの方もリリアーナと同じだけ受け答えをしていたはずだが、疲労感など微塵も感じさせない様子で、にこやかにリリアーナを見つめているのがほんの少しだけ悔しく感じる。

だが、口を開くのも億劫なほどだったが、ラファエロの穏やかな笑顔を見ていると、不思議と心が安らぎ、疲労感も和らいでいくような気がした。

「昔から伯母上はとても好奇心旺盛ですからね。その点はあなたの伯母上も負けず劣らずといったところですが………」

ラファエロの表情が微妙に変わり、苦笑いに近いものになる。
好奇心旺盛、などという言葉で済むようなレベルではない気もするが、本当にアルベルタとソニアはそういった部分で良く似ている。
寧ろあの二人が揃えば、エドアルドですらも血相を変えて逃げ出すのではないだろうかと思ってしまう程だ。

「いずれにしても、あなたには負担をかけてしまいましたね」
「いいえ。確かにあのお二人の相手をするのは疲れましたけれど、でもそれ以上に楽しかったですわ!ラファエロ様の幼い頃の貴重なお話も聞けましたし………」

ふふふ、とリリアーナが笑い声を上げると、ラファエロはほんの少し目を丸くしてから嬉しそうに微笑んだ。

「そうですか。少し恥ずかしかったですが、あなたがそう言ってくれるのなら良かったです」

恥ずかしそうな様子など見せていなかったが、やはり幼少期の話をされると恥ずかしいのかと、リリアーナは内心少し驚く。

「以前にリベラート王太子殿下がいらっしゃった時に、昔話を始めた時は必死に止めようとしていらっしゃいましたのに………」

あれはまだ、ラファエロとリリアーナがお互いの想いを確かめ合って間もない頃の事だったが、ラファエロ達の幼少期をよく知るリベラートが、オズヴァルドでの出来事をあれこれと話してくれたのを思い出す。

「それは当然ですよ。あの頃はあなたに少しでも良く見せたかったですし、何よりも相手がリベラートでしたからね。伯母上達を止めようとしても、軽く鼻であしらわれるか、もっと面白がられるかどちらかですから、大人しくしているのが一番なのですよ」

それは、ラファエロが経験を重ねて習得した知恵なのだろう。
口元に浮かんだ皮肉げな笑みが、その結論に辿り着くまでの苦労経験を如実に表わしているようで、リリアーナはくすくすと笑い声を上げながら納得したのだった。
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