猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

154.謁見

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謁見の間に足を踏み入れ、まず真っ先に目に入ってきたのは、居心地悪そうにして佇んでいるラヴィニアの姿だった。
いつもの派手な服装ではなく、装飾品の少ないシンプルな、薄い紫色のドレスを身に付け、印象的な緋色の髪もきっちりと纏め上げていた。
その後ろには同じく質素な装いのルカが、神妙な面持ちで控えている。
そして、その二人の前には非常に恰幅の良い老年と言っていいくらいの年の男性と騎士と思わしき数名の従者が立っていた。

「おや、これはこれは………。こちらに向かったのは使殿、と聞いていたのですが、まさかオルカーニャの国王陛下が直々にいらっしゃるとは驚きましたね」
「え…………っ?」

いつも通りの穏やかな笑顔を浮かべながら、ラファエロが口を開いた。
驚いた、と言っている割には全く動じていないところを見ると、国王自らが遠路はるばるやってくることを予想していたのだろう。
リリアーナは共に入室してきたエドアルドとクラリーチェに静かに視線を移すが、彼らもやはり表情を変えることなく、冷静にオルカーニャ国王を見つめていた。

一介の使者が王女よりも玉座に近い位置にいることも、ラヴィニアがあのような表情を浮かべていることにも疑問を持ったが、ラファエロによって事実が明かされたことで全て納得出来た。
てっきり宰相か、それ相応の役職に就いている大貴族がやってくるものとばかり思っていたリリアーナは驚きながらも、まじまじと目の前に立つ老人を観察してみる。

オルカーニャ国王アメリーゴ・オルカーニャ。
南方の国の国王らしく、よく日焼けした褐色の肌と、短く刈り込んだ白髪混じりの癖の強い赤毛にと同じ色の顎髭が印象的な男だった。
たっぷりとした身体に、髪と同じオルカーニャの旗印の色である赤のゆったりとした服を身に付けているせいか、見た目だけでもかなりの貫禄があった。
リリアーナの記憶が正しければ六十に届く程の年齢だったはずだが、人の良さそうな顔のせいか、それとも栄養過多のせいで歳と共に刻まれる筈の皺が目立たないせいなのか、実年齢よりも若く見えた。
しかし、今に限って言えば、かなり疲労が溜まり、やや憔悴しているようにリリアーナの目には写った。
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