猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

137.甘い夜

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「ああ、待たせてしまったようですね」

申し訳無さそうに目を伏せ、ラファエロが近づいてきた。
太陽の光をそのまま閉じ込めたかのような、クセの強い明るい金髪は僅かに濡れていて、蝋燭の明かりを反射して、キラキラと輝いて見える。
リリアーナは神々しさすら感じるラファエロの姿にしばし見とれていたが、ゆっくりと視線を動かしていく。
すると白いガウンの袂から覗く、よく鍛え上げられた、全く無駄のないラファエロの胸元に釘付けになる。

彼の半裸を見るのは、温泉テルメの時以来で、これが初めてではない。
それなのに、どうしてこんなにもそわそわと落ち着かない気持ちになるのだろう。
何とも居心地の悪い気分に、リリアーナは寝台の隅の方に腰掛けたまま、もじもじと膝を擦り合わせた。

「レディの身支度の時間を上手く見計らったつもりだったのですが………まだまだ私も修行が足りないようですね」

ほんの少し肩を竦めると、ラファエロはゆっくりとリリアーナに近づき、隣に腰を下ろした。

「そ、そんな事はありませんわ!私、たった今支度が終わったところですもの。ね、そうでしょう…………?」

気恥ずかしさを隠そうと、控えていたマリカとエラに話題を振る。
しかし、その問い掛けに答える声は返ってこなかった。
驚いて部屋の中を見回すが、彼女達の姿はどこにも見当たらない。

「マリカとエラならば、既に退出しましたよ?」

ラファエロはクスクスと笑い声を上げた。

「え………?」
「私が部屋に入るタイミングを見計らって出ていったんですよ。マリカはそういった教育を徹底的に受けていますが、エラもマリカに負けず劣らず優秀な侍女ですね。流石はグロッシ侯爵、人を見る目があります」

感心したように呟くと、ラファエロは透き通ったエメラルド色の瞳でリリアーナを見つめた。

「………ラファエロ様に見とれていて、全然気が付きませんでしたわ………」

愕然とした吐息と共に、本心が思わず零れた。
するとラファエロは驚いたように目を瞠った後、甘く蕩けるような、極上の笑顔を見せた。

「見とれていたのは、私も同じですよ、リリアーナ。今宵もあなたは、誰よりも綺麗です」

笑顔と同じくらいに、優しく甘い言葉を囁いた後、ラファエロはゆっくりとリリアーナの方へと顔を近付け、唇を重ねた。
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