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結婚編
134.駆け引き
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「さぁ………どうでしょうね?私が侯爵夫人とお話をしたときは、必ず侯爵も一緒でしたから。………義理の親子になるというのに、全く狭量な人ですね」
今度は声を上げてクスクスと笑うラファエロの曖昧な答えから、リリアーナは犯人が母ではない事を読み取る。
同時に、誰が犯人なのかを探るよりも、リリアーナ自身も見当がつかないような相手からリリアーナの嗜好を聞き出すラファエロ本人を警戒するのが正しいような気がしてきた。
あの年齢になっても異性と二人きりで過ごすのを良しとしない父のことを『狭量だ』と笑っているが、ラファエロ自身も大差が無い気がする。
「ラファエロ様は私のことを何でもご存知なのですね」
小さな吐息と共に、常々思っていることを口にすると、ラファエロは少し考え込むように俯き、それから首を左右にゆっくりと振った。
「いいえ。そんなことはありませんよ」
「ですが、ラファエロ様はいつも私の考えていることを言い当てたり、先回りして私の望みを叶えたくださったりしているではありませんか」
何度驚かされた事か、と呟きながらリリアーナが口を尖らせると、ラファエロは楽しそうに笑った。
「それは、偶然ですよ。確かに私は他の人達よりもほんの少しだけ他人の気持ちを読み取る能力に長けているかもしれませんが、読心術を使えるわけではありませんしね。………それに、それ以外にもあなたに関して知らない部分はまだありますよ」
「え…………?」
言われている意味が分からず、きょとんとしているリリアーナの前で、ラファエロは式典服のボタンを一つずつ丁寧に外し始める。
「………分かりませんか?」
ラファエロのエメラルド色の瞳が、艶っぽい光を帯びてリリアーナを捉えた。
途端にリリアーナの心臓は、まるで別の生き物にでもなったかのように強く、早く脈打ち始める。
(………ラファエロ様が知らない私というのは、やはり…………)
リリアーナが上目遣いにラファエロを見返すと、ラファエロは笑みを深くしただけで、それ以上口を開くことはなかった。
ラファエロがはっきりと言わないところを見れば、彼はおそらく閨の事を言っているのだろうということは察する事ができた。
今度は声を上げてクスクスと笑うラファエロの曖昧な答えから、リリアーナは犯人が母ではない事を読み取る。
同時に、誰が犯人なのかを探るよりも、リリアーナ自身も見当がつかないような相手からリリアーナの嗜好を聞き出すラファエロ本人を警戒するのが正しいような気がしてきた。
あの年齢になっても異性と二人きりで過ごすのを良しとしない父のことを『狭量だ』と笑っているが、ラファエロ自身も大差が無い気がする。
「ラファエロ様は私のことを何でもご存知なのですね」
小さな吐息と共に、常々思っていることを口にすると、ラファエロは少し考え込むように俯き、それから首を左右にゆっくりと振った。
「いいえ。そんなことはありませんよ」
「ですが、ラファエロ様はいつも私の考えていることを言い当てたり、先回りして私の望みを叶えたくださったりしているではありませんか」
何度驚かされた事か、と呟きながらリリアーナが口を尖らせると、ラファエロは楽しそうに笑った。
「それは、偶然ですよ。確かに私は他の人達よりもほんの少しだけ他人の気持ちを読み取る能力に長けているかもしれませんが、読心術を使えるわけではありませんしね。………それに、それ以外にもあなたに関して知らない部分はまだありますよ」
「え…………?」
言われている意味が分からず、きょとんとしているリリアーナの前で、ラファエロは式典服のボタンを一つずつ丁寧に外し始める。
「………分かりませんか?」
ラファエロのエメラルド色の瞳が、艶っぽい光を帯びてリリアーナを捉えた。
途端にリリアーナの心臓は、まるで別の生き物にでもなったかのように強く、早く脈打ち始める。
(………ラファエロ様が知らない私というのは、やはり…………)
リリアーナが上目遣いにラファエロを見返すと、ラファエロは笑みを深くしただけで、それ以上口を開くことはなかった。
ラファエロがはっきりと言わないところを見れば、彼はおそらく閨の事を言っているのだろうということは察する事ができた。
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