猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

120.従者

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「………私が何を言っているのか理解できていないようですね」

静まり返った広間に、ラファエロの声が響く。

「あなたは結局のところ、我が国には結婚するためにいらっしゃったのでしょう?」

ラファエロは、口にするのも忌々しいといったように、僅かに目を細めた。

「…………そうですわ」

何故今になってその話を持ち出すのか分からない様子のラヴィニアは、微かに震える声で答える。

「その目的は果たされずに終わった訳ですが………、仮に兄上が追放した元王子の誰かが独身のまま残っていて、あなたとの結婚の話が纏まったとしたならば、当然インサーナ侯爵令息には母国に戻ってもらう予定だったのでしょう?」

ラファエロの言葉に、ルカははっと目を見開き、それから少し悲しそうな様子で、静かに眼を伏せた。

「ラファエロ様…………何を仰っているのか、わたくしには…………」

先程指摘したにも関わらず、名前を呼ばれたことに対して、ラファエロは心底不快そうに顔を顰めたが、それを指摘することにすら嫌悪感を感じるようで、ラファエロはあえて口にすることをしなかった。

「…………そもそも女性王族の従者は、同性が選ばれるのが普通です。国民の手本となるべき王族が、貞操概念を疑われるような真似は出来ませんからね」
「わ、わたくしはルカとはそんな関係では…………!」

ラヴィニアは慌てたようにラファエロの言葉を遮った。

「事実がどうなのかは重要ではありません」

厭わしい表情はそのままに、ラファエロはラヴィニアの反論をばっさりと切り捨てた。

「あなたの意志とは関係なく、周囲からはそのような目で見られるのですよ。………ですが、あなたの父君もあなた自身も、そのような意見が出ることを承知の上で彼を従者にしたのでしょう?」
「……………」

ラファエロの問い掛けに、ラヴィニアは答えなかった。
いや、正しくは答えることが出来なかったのだろう。
オルカーニャ国王はともかく、ラヴィニアはそこまで深くは考えていなかったのだろうとリリアーナは思った。
おそらくは、『一緒にいるのが当然』位にしか思っていないのだろう。
そんなリリアーナの考えを肯定するかのように、ラヴィニアの顔には先程よりも更に強い動揺が浮かんで見えた。
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