猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

112.コルシーニ伯爵の怒り

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「………そうですか」

驚く様子も見せずにただ頷いたルカは、おそらくこちら側が調査のために動いたことを察していたのだろう。

(………本当に、どうしてインサーナ侯爵令息はラヴィニア王女の従者なんていう立場に甘んじているのかしら………)

リリアーナの目から見ても、ルカの持つ能力はかなり高いように見えた。
政務官になれば、おそらくはリリアーナの兄ウルバーノと同等の能力を発揮するだろう。
それなのに王位を継承する見込みのない、しかも人格と常識に難しかない横暴な王女の従者など、彼にとってなんのメリットもないだろう。

「………こそ泥の真似事だなんて、やはり伯爵程度のやることは野蛮だわ」

ぼそりとラヴィニアが呟いた瞬間、コルシーニ伯爵とエドアルドが同時にラヴィニアを睨み付ける。

「…………何か仰られましたか?」

地を這うような、ざらざらとした低い声は強い怒りを含んでいるように聞こえた。
コルシーニ伯爵は負っている任務のせいもあり、無口な人だった。
リリアーナ自身も彼の声を聞いたのは数えるほどだったと思うが、こんなにも感情を剥き出しにした声を聞くのは初めてだった。
その様子を目の当たりにし、ラヴィニアは己の発言が完全に失言だと気がついたようだったが、案の定謝罪の言葉は出てこなかった。

「王族だと言うのに、諜報の重要さすらも知らないとは、王家の人間を名乗る資格すらありませんね。ましてやその職務を担う存在がなくては国などすぐに滅びかねないと言うのに、それを侮辱するとは無知で纏めるにはあまりにも愚かすぎます」

コルシーニ伯爵以上に低いトーンのラファエロの声は、背筋が凍るようだとリリアーナは思う。
ラヴィニアを睨めつける彼の双眸も、いつものエメラルド色ではなく闇色に見えた。

「…………あなたは王族であることを誇りにしているようですが、中身は虫ケラ以下の下等生物ですよ」

思い切り侮蔑を込めた言葉をラヴィニアにぶつけると、ラファエロは溜息をついた。
ラヴィニアは返す言葉もなく、ぶるぶると震えながら、黙り込んだ。

「………それで、インサーナ侯爵令息。他に弁明することはありますか?」

そんなラヴィニアの様子に少し苛立ったようにルカに問いかけると、ルカは申し訳無さそうな表情を浮かべながら俯くと、再び口を開いたのだった。
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