猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

107.全否定

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ラヴィニアの黒曜石のような瞳が、これ以上なくいくら位に見開かれた。

「流石に言われている意味はお分かりですよね、王女殿下?」

ラファエロはリリアーナとの仲を見せつけるように、リリアーナの額に口付けを落とす。

「…………っ」

乱れたままで、剥き出しにしたなった肩を震わせながらラヴィニアは強く唇を噛んだようだった。

「返す言葉もありませんか?そうでしょうね。『自分』という人間に絶対の自信を持っているあなたには、耐え難いほどの屈辱でしょうからね」

ラファエロのエメラルド色の双眸が、冷たく光る。

「嘘よ………そんな、わたくしが侯爵家の娘なんかに負けるだなんて…………っ」

じわり、とラヴィニアの目には涙が浮かび上がる。
先程ラファエロにあれだけ拒絶されて、それでもなお諦めないラヴィニアのふてぶてしさだけは見上げたものだと、リリアーナは密かに感心していた。

「負けるも何も、私の妃はリリアーナ以外ありえません。あなたなどはじめから眼中になどありません。最初から勝負にすらなっていないというのに、それを理解しようとすらしないあなたの独りよがりの言動は実に滑稽でしたが………行き過ぎるとやはり鼻につくんですよね………。今ではあなたの顔を見るのも嫌なほどになりましたね。嫌いな人間に追い回される不快感は分からないでしょうね………。本当に何もかも放棄して、リリアーナと二人で逃避行にでも行こうと真剣に考えましたよ」

心底うんざりしたとでも言うように、ラファエロは深い溜息を零した。
嫌味というにはあまりにも辛辣なラファエロの言葉を受け取るラヴィニアは、それを聞いて半ば放心状態だった。

「そもそもあなたのような低俗なくせにプライドばかりが高いような輩は私に限らず、誰も伴侶としては選ばないでしょうね」

あくまでも冷静なラファエロの、止めとでも言うような台詞に、ラヴィニアはその場に崩れ落ちた。
だが、そんな彼女に手を差し伸べようとする人間は、皆無だった。
そんな自身の惨めさに気がついたのだろうか。
ラヴィニアは静かに俯いた。

「…………ふ……………っ」

同時に小さく、嗚咽が漏れる。
そんなラヴィニアを、ラファエロはこれ以上ないくらいに冷たい、嫌悪の感情しか読み取れない表情で、無言のまま見つめていた。
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