344 / 473
結婚編
閑話 結婚式の後で
しおりを挟む
「リリアーナ!」
ラファエロがリリアーナを抱え上げたまま、王宮へ戻ろうとすると、聞き覚えのある声が追いかけてきた。
「ソニア伯母様!それにアルマンド伯父様も………!」
声の主を確認し、リリアーナは嬉しそうに顔を綻ばせた。
リリアーナの伯母であるソニア・ドロエットはグロッシ侯爵の実姉であり、エドアルドとラファエロの教育係として隣国オズヴァルドへと渡り、オズヴァルドの名門貴族であるドロエット公爵家に嫁いだため、書簡でのやり取りは頻繁にしているが、実際に顔を合わせるのは数年ぶりになる。
「まあまあ!少し見ない間にこんなにも美人さんに育って………!これはダミアーノが嫁に出したくないと駄々をこねるのも分かるわ」
ドロエット公爵夫人はふふ、と含み笑いをすると、自身の後ろに佇む実弟の方を振り返る。
「………姉上………。もういい年なんですから、はしゃぐのは止めてください」
見事なダークブロンドの髪をくしゃりと掻き上げると、グロッシ侯爵は溜息をつく。
「あら、失礼な子ね。私のどこが歳だって言うの?私はちっとも衰えていないわ!今からオズヴァルドまで馬で帰れる位に元気なのよ?」
ふん、と鼻を鳴らしてからドロエット公爵夫人は、穏やかに微笑むラファエロに視線を向けた。
「ラファエロ殿下も本当に立派になられて………。まさかうちのリリアーナを妃に選ぶなんて、やはり私の育て方が良かったのね」
「ふふ、公爵夫人は相変わらずのようですね」
そう呟くラファエロも、どこか嬉しそうに見えた。
ラファエロにとって、ドロエット公爵夫人は乳母のような存在だ。母親代わりはオズヴァルドのアルベルタ王妃だったが、ラファエロにとってはそれに次ぐ関係の女性に違いない。
それが偶然にもリリアーナの伯母であったからこそ、ラファエロはリリアーナを驚かせようと密かに伯母夫婦を招待したのだろう。
「本当にこんなに素敵な式に参列出来るなんて………っ!私、感動だわ………!」
ドロエット公爵夫人は感極まった様子で、リリアーナとそっくりな紺碧色の瞳を、潤ませた。
「ソニア」
「ありがとう、アルマンド」
隣に寄り添ったドロエット公爵がすかさずハンカチーフを取り出すと、公爵夫人に差し出すと、ドロエット公爵夫人ははにかみながらハンカチーフを受け取り、公爵の頬に軽い口付けを落とした。
二人は結婚してそろそろ二十数年が経つはずだが、いつも仲睦まじい姿を見せてくれる。
ラファエロと自分も、伯母夫婦や両親のような、いつまで経っても仲睦まじい素敵な夫婦になれるだろうか。
リリアーナはじっと己を抱きかかえるラファエロを見つめた。
「………私達も、あんな素敵な夫婦になりましょうね」
まるでリリアーナの心の中を読み取ったかのようにラファエロがそう呟いた。
「………ラファエロ様は、私の心の中が読めるのですか?」
そう尋ねなければ気が済まない程に、偶然で片付けるにはあまりにも出来すぎたタイミングだった。
すると、リリアーナの問いかけにラファエロは笑顔を浮かべ直す。
「以前にも言ったでしょう?私とあなたは似た者同士なのだと。私は自分が思ったことを素直に口にしただけですよ」
リリアーナの耳元でラファエロがそっと囁く。
以心伝心。
そんな言葉が、頭に浮かんできた。
似た者同士だからこそ、考えも想像力も似通っているとしたら、なんて素敵なんだろう。
リリアーナは体をラファエロに預けたまま、ぎゅっとラファエロにしがみついた。
「あらあら、仲良しさんね!」
その様を目の当たりにしたドロエット公爵夫人が嬉しそうに声を上げるのを聞きながら、ラファエロとリリアーナは互いに向き合い、顔を見合わせて笑うのだった。
ラファエロがリリアーナを抱え上げたまま、王宮へ戻ろうとすると、聞き覚えのある声が追いかけてきた。
「ソニア伯母様!それにアルマンド伯父様も………!」
声の主を確認し、リリアーナは嬉しそうに顔を綻ばせた。
リリアーナの伯母であるソニア・ドロエットはグロッシ侯爵の実姉であり、エドアルドとラファエロの教育係として隣国オズヴァルドへと渡り、オズヴァルドの名門貴族であるドロエット公爵家に嫁いだため、書簡でのやり取りは頻繁にしているが、実際に顔を合わせるのは数年ぶりになる。
「まあまあ!少し見ない間にこんなにも美人さんに育って………!これはダミアーノが嫁に出したくないと駄々をこねるのも分かるわ」
ドロエット公爵夫人はふふ、と含み笑いをすると、自身の後ろに佇む実弟の方を振り返る。
「………姉上………。もういい年なんですから、はしゃぐのは止めてください」
見事なダークブロンドの髪をくしゃりと掻き上げると、グロッシ侯爵は溜息をつく。
「あら、失礼な子ね。私のどこが歳だって言うの?私はちっとも衰えていないわ!今からオズヴァルドまで馬で帰れる位に元気なのよ?」
ふん、と鼻を鳴らしてからドロエット公爵夫人は、穏やかに微笑むラファエロに視線を向けた。
「ラファエロ殿下も本当に立派になられて………。まさかうちのリリアーナを妃に選ぶなんて、やはり私の育て方が良かったのね」
「ふふ、公爵夫人は相変わらずのようですね」
そう呟くラファエロも、どこか嬉しそうに見えた。
ラファエロにとって、ドロエット公爵夫人は乳母のような存在だ。母親代わりはオズヴァルドのアルベルタ王妃だったが、ラファエロにとってはそれに次ぐ関係の女性に違いない。
それが偶然にもリリアーナの伯母であったからこそ、ラファエロはリリアーナを驚かせようと密かに伯母夫婦を招待したのだろう。
「本当にこんなに素敵な式に参列出来るなんて………っ!私、感動だわ………!」
ドロエット公爵夫人は感極まった様子で、リリアーナとそっくりな紺碧色の瞳を、潤ませた。
「ソニア」
「ありがとう、アルマンド」
隣に寄り添ったドロエット公爵がすかさずハンカチーフを取り出すと、公爵夫人に差し出すと、ドロエット公爵夫人ははにかみながらハンカチーフを受け取り、公爵の頬に軽い口付けを落とした。
二人は結婚してそろそろ二十数年が経つはずだが、いつも仲睦まじい姿を見せてくれる。
ラファエロと自分も、伯母夫婦や両親のような、いつまで経っても仲睦まじい素敵な夫婦になれるだろうか。
リリアーナはじっと己を抱きかかえるラファエロを見つめた。
「………私達も、あんな素敵な夫婦になりましょうね」
まるでリリアーナの心の中を読み取ったかのようにラファエロがそう呟いた。
「………ラファエロ様は、私の心の中が読めるのですか?」
そう尋ねなければ気が済まない程に、偶然で片付けるにはあまりにも出来すぎたタイミングだった。
すると、リリアーナの問いかけにラファエロは笑顔を浮かべ直す。
「以前にも言ったでしょう?私とあなたは似た者同士なのだと。私は自分が思ったことを素直に口にしただけですよ」
リリアーナの耳元でラファエロがそっと囁く。
以心伝心。
そんな言葉が、頭に浮かんできた。
似た者同士だからこそ、考えも想像力も似通っているとしたら、なんて素敵なんだろう。
リリアーナは体をラファエロに預けたまま、ぎゅっとラファエロにしがみついた。
「あらあら、仲良しさんね!」
その様を目の当たりにしたドロエット公爵夫人が嬉しそうに声を上げるのを聞きながら、ラファエロとリリアーナは互いに向き合い、顔を見合わせて笑うのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
786
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる