猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

100.誓い(1)

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それから一時間ほどで花嫁の支度は全て整った。
ラファエロの指示で、ラヴィニアに見下されないように肌の手入れを念入りにしていたが、もしかすると準備させていたのかもしれないと、今更ながら気がつく。

それは、今リリアーナの全身を包んでいる純白のウエディングドレスも同じだ。
確か、エドアルドとクラリーチェの結婚式の準備をしていたときに、ラファエロにドレスの好みを根掘り葉掘り訊かれたが、その時に伝えた通りの、レースやチュールをふんだんに使った、ロマンチックなプリンセスラインのふわりとしたデザインだった。
ドレスの裾や、長いトレーン、それに頭部を覆うヴェールにも小さなエメラルドが銀河に漂う星のように散りばめられているのは、ラファエロの独占欲の現れなのだろう。

「………お嬢様………、お綺麗ですよ」

最後に、ヴェールを押さえるための小さな金色のティアラを飾り終えると、感極まった様子のエラが、涙目でそう呟いた。

「ありがとう、エラ………それにマリカも………」

リリアーナがふわりと微笑んだ時、扉を叩く音が聞こえた。

「準備は出来ましたか?」

先程まで着ていた衣装をきちんと整え直したラファエロが、顔を覗かせる。
そして、リリアーナを見た瞬間、破顔した。

「ああ………リリアーナ。想像していたよりも、ずっと綺麗です」

ラファエロにしては飾り気のない、素直な言葉だからこそ、ラファエロの気持ちがよく伝わってきて、リリアーナは嬉しさと恥ずかしさから頬を赤く染めた。
幸いなことにヴェールを被っているおかげで、はっきりとリリアーナの顔色を確認することは出来ないだろうが、きっと隠してもラファエロにはバレてしまっているのだろう。

「ラファエロ様も、とても素敵ですわ」

恥じらいを含みながら、リリアーナがそう告げると、ラファエロは嬉しそうにリリアーナの側に歩み寄り、彼女の前で跪く。

「………リリアーナ。このような形で結婚式を挙げることになり、不満もあることでしょう。………ですが、私の気持ちは、もうあなたと出会ったときから固まっていました。私が人生を共に歩みたいと思えるのは、今までも………そしてこの先も、あなたしかいないのです」

強い意志の籠もった、真摯な眼差しをリリアーナに向けながら、ラファエロは一言一言を大切そうに紡いだ。
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