猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

92.ラファエロの気持ち

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もしも両親が、自分をただ溺愛するだけしていたとしたら、自分もラヴィニアのようになっていたのかもしれないと思うと、リリアーナは何とも言えない気持ちになった。

勿論それは仮定の話であって、グロッシ侯爵あの父親に限ってそのような事は有り得ないし、父がそうだったとしても、母が黙っていないだろう。
それに万が一両親がそのように自分を育てたとしても、ラヴィニアと同じようになったとは限らないのは分かっている。
それなのにこのように胸が痛むのは、クラリーチェに影響されて寛大な心が生まれたからなのだろうか。

「わ………わたくしは、生まれながらの王族ですのよ?気品と威厳を兼ね備えた高貴な存在に、教育など必要ありませんもの。ラファエロ様だって、そうでしょう………?ラファエロ様の婚約者を騙るその女狐とは全てが違いますの………!」

リリアーナのそんな同情心を踏みにじるように、ラヴィニアが精一杯叫んだ。
ラファエロに指摘されたことを全く理解していない姿は、最早滑稽としか言いようがなかった。

「リリアーナとあなたの全てが違う、という部分だけは唯一同意出来ますが、そもそもあなたと私の意見がそれ以上重なることは永遠になさそうですね。会話をするだけ無駄でしょう」

まるで噛み合わないやり取りに疲れたとでも言うように、ラファエロは肩を竦めた。

「この際ですから、はっきりと言わせて頂きましょう」

ラファエロは一旦言葉を切ると、静かに息を吸い込んだ。

「私はあなたのような、血筋や身分にばかり拘り、本質や中身の伴わない、無能で傲慢な人間は大嫌いなんですよ。………リリアーナ以外を伴侶に選ぶ事など絶対にありませんが、仮にこの地上からあなた以外の女性が全て消え、あなたを選ぶしか選択肢がなくなったとしても、あなたを妃に迎えることはありません」

柔らかな笑顔の消えたラファエロの表情の冷たさと、これ以上ないくらいに辛辣な言葉を投げつけられた事で、ラヴィニアの顔色は蒼白を通り越して血の気が全くなくなっていた。

「ここまで言われてもまだ、私の愛しい婚約者を貶すような発言をするのであれば、私にも考えがありますよ」

ラファエロは横にいるリリアーナをぎゅっと抱きしめると、ラヴィニアを睨み付けた。
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