猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

83.消えた王女

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ほんのひととき、甘い時間を過ごした後、ラファエロにエスコートされたリリアーナは、クラリーチェ達と合流すると、舞踏会の会場である大広間の上座に用意された主催者席へと移動した。

広間よりも一段上がった場所に立つと、広間で色とりどりの衣装に身を包み、和やかな雰囲気で談笑する貴族たちの様子がよく見渡せる。
だが、どんなに探しても、その中にはラヴィニア達の姿は見当たらなかった。
もう間もなく舞踏会は始まるというのに、一体彼女たちは、あの部屋を出てから何処へ行ったのだろうか。
まさか、グロッシ侯爵の態度に気分を害されたと、舞踏会を欠席するつもりなのではという考えが頭に浮かび、リリアーナは不安になった。
勿論あれはラヴィニアの方が悪いし、ラファエロがグロッシ侯爵の処罰するなど、絶対に有り得ない。
それなのに、どうしてこんなにも胸騒ぎがするのだろう。

「私が隣りにいるというのに、そんなにそわそわして、どうしたのですか?」

突然耳のすぐ近くで、ラファエロの声が響いた。

「ひゃっ………」

予想外の事態に、リリアーナは思わず変な声を上げてしまった。
すると、悪戯を仕掛けたラファエロが楽しそうに笑う。

「すみません。一人で百面相をしているあなたがあまりにも可愛らしくて、つい………」
「ただ少し考え事をしていただけですわ」

リリアーナは赤らんだ頬を隠すように両手で顔を覆う。

「………あの王女の姿が見えないとなると、おそらく良からぬ事を考えて、敢えてこの場に姿を現さないのでしょうね」

そう言ってラファエロは、小さく溜息をついた。
どうやらラファエロもリリアーナと同じことを考えていたらしい。

「わざと遅刻をして、舞踏会を掻き乱そうとするくらいならば良いのですが………」

付け足すようにそう呟いたラファエロのエメラルド色の瞳が、鋭い光を帯びる。

「兄上も私も、とっくに我慢の限界は超えていますからね。これ以上横暴な真似をするようならば…………」

一旦言葉を着ると、ラファエロはゆっくりと息を吸い込んだ。

「我々を敵に回したらどうなるのか、嫌というほどに分からせて差し上げなければなりませんね」

穏やかな表情からは想像もつかないほどに冷たい声で呟くラファエロは、まるでエドアルドのような不敵な笑みを浮かべていた。
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