猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

78.ラファエロとラヴィニア

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午後に入り、ラファエロとリリアーナは王宮へと向かった。
舞踏会は日没と共に開始される予定だが、エドアルド夫妻との打ち合わせをするために早く王宮に到着する必要があったからだった。
また城門でラヴィニアが待ち伏せをしているのではないかと警戒していたが、舞踏会の準備で忙しいのか、彼女が姿を見せることはなかった。

嵐の前の静けさとでも言うのだろうか。
リリアーナは何だか落ち着かない気持ちを宥めるように、ずっと作り笑いを浮かべていた。


日が傾き始めると、少しずつ貴族たちが大広間に集まり始めた。
ラヴィニアがリリアーナ達が使っている『王族専用』の控室に入ってきたのもちょうどそのくらいの時間だった。

深緑色のスレンダーなドレスに身を包んだラヴィニアは、ぱらりと扇を広げると、ねっとりとした絡みような視線でラファエロを見た。

「ご機嫌よう、ラファエロ様」
「お元気そうで、何よりです」

リリアーナの存在を全く無視したラヴィニアの挨拶に、ラファエロの冷たい声が答えた。
あからさまに作り笑いだと分かる笑顔を浮かべたラファエロは視線も合わせずに挨拶だけする。
そして、さっさと部屋を出ようとしたところを、ラヴィニアは必死な様子で止めようとした。

「今日は勿論、わたくしをエスコートしてくださるのでしょう?」

本当に、これだけ嫌がられている相手に結婚を迫るというのは、惨めな気持ちにならないのだろうか。
リリアーナは押し黙ったまま、ラファエロとラヴィニアのやり取りを見守った。

「エスコート?私には、最愛の婚約者以外にエスコートをしなければならないだなんて、聞いていませんし、する気もありません」

ラファエロは涼し気な笑顔を浮かべると、これ見よがしにリリアーナの細い腰を抱き寄せ、体を密着させた。

「……………っ!」

一瞬、憎しみのこもった視線でリリアーナを睨み付けたラヴィニアは、きっぱりと断られてもなお食い下がった。

「で、でも本日の主賓はこのわたくしなのよ?」
「主賓はそうかもしれませんが、我々は主催者側ですから」
「では、わたくしにエスコートなしで入場しろとおっしゃいますの?」
「おや?そういう時のために、あの従者の彼………インサーナ侯爵令息をお連れになったのでしょう?」

ラヴィニアの思惑を全て切り捨てながら、ラファエロはにっこりと笑みを浮かべた。
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