猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

75.ラファエロの謀略

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それからすぐに、グロッシ侯爵邸へと戻る馬車を手配したラファエロだったが、屋敷に戻ったあとは何やら忙しそうにあちらこちらに連絡を取り始めた。

「ここは王宮ではないのですから、使える人間はどうしても限られてしまいますわ。私にお手伝い出来ることがあれば、遠慮なく仰って下さいませ」

専属の侍女であるはずのマリカまで使いに出すラファエロを見兼ねたリリアーナが心配そうにそう申し出ると、ラファエロは柔らかな笑みを浮べてリリアーナを抱きしめた。

「心配しなくても大丈夫ですよ、愛しい人。あの王女を追い出す為のはかりごとを思いついたので、少々慌ただしく動いているだけですから。………それにあなたの存在なくしては、この謀は成り立たないのです。ですから、エラにお願いして、その美しさに、更に磨きを掛けて貰っておいて下さいね」
「こんな時に揶揄うなんて………」
「揶揄ってなどいませんよ?………実は、その謀略とは、宮中舞踏会の開催なんです」

ラファエロは至極真面目そうな表情で、リリアーナの紺碧の瞳を覗き込んできた。

「………宮中舞踏会?」

思いもよらぬ話に、リリアーナが目を瞬くと、ラファエロは口元に笑みを浮かべた。

「ええ。………あの王女は自分が勝手に押しかけてきたことを棚に上げて、晩餐会での歓迎会にご不満だったようでしたので、遅ればせながら彼女の望む形でのを行って差し上げようという、優しさですよ」

自分自身で『優しさ』と言ってしまう辺りがいかにもラファエロらしくて、リリアーナも釣られるように笑顔を浮かべる。

送別会、ということは王女の意志に関係なく追い出す、という意志の現れだろう。

「私が必要、ということは………今回は、秘密にせずに、きちんと私にもその謀とやらを教えてくださるのですね?」

念を押すようにリリアーナが問い掛けると、ラファエロはほんの少しだけ微妙な表情を浮かべてから、ゆっくりと頷いた。

「舞踏会ですから、私のパートナーはあなたしか有り得ません。どうせならば、あの王女が泣いて悔しがるくらいに………いえ、それよりも………負けを認めざるを得ない程に美しく磨き上げて、私との親密さを見せつけてやりましょう」

ラファエロはまるでいたずらを思いついた子供のように目を輝かせ、リリアーナに微笑みかける。
そのラファエロの様子から、彼はきっと、とんでもないことを考えているに違いないとリリアーナは悟るのだった。
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