猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

63.コルシーニ伯爵の報告

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ラヴィニアの存在を無視したラファエロは、そのまま早足でエドアルド達の執務室へと直行した。

「お久しぶりです、兄上」
「ああ。お前が元気そうで何よりだ」

婚約者を抱え上げたまま入室してきた実弟に対して、エドアルドが薄っすらと笑みを浮かべた。
エドアルド自身もクラリーチェを膝の上に乗せているせいだろうか。それともラファエロがいつもリリアーナを抱きかかえているせいだろうか。エドアルドは勿論のこと、宰相であるカンチェラーラ侯爵も、コルシーニ伯爵もラファエロの登場の仕方に、驚く素振りすらも見せなかった。
唯一、ラファエロ達の後をついてきたグロッシ侯爵だけが微妙な表情を浮かべていた。

「………さて。早速だが伯爵。報告を聞かせてもらおう」

ラファエロとリリアーナが用意された長椅子に腰を下ろしたのを確認したエドアルドが、水色の透き通った瞳をコルシーニ伯爵へと向けると、伯爵は無言のまま小さく頷き、薄い唇をゆっくりと動かした。

「そもそもオルカーニャでのラヴィニア王女の評判は、やはり我儘で傲慢だというものが殆どでしたが、中には病弱という面白い噂もありましたよ」
「………え?病弱?」

思いもよらない単語に、真っ先に顔を顰めたのは、ラファエロだった。

「………それは頭の中身と人格が残念になる病気なのでしょうか………?」

真顔でそれを言ってのけるラファエロに、厳つくて険しい顔のコルシーニ伯爵が珍しく吹き出す。

「ゴホン!………失礼致しました」

慌てて取り繕うコルシーニ伯爵は表情を変えないまま、続ける。

「それは、あくまでも出回っている噂の一つに違いありません。………その噂の真偽はさておき、やはりあのラヴィニア王女は、オルカーニャ国王が年を重ねてから出来た末娘だということもあり、かなり我儘に育てられたということは事実のようでした。………そして今回も、王女自身が突然に『キエザ王国へ遊学に行きたい』と言い始めたのだそうです。………ですので、あの王女に含みさえなければ、今回の遊学は何かしらの陰謀であることは除外されます」
「なるほど。王女自ら、ですか…………」

淡々と語るコルシーニ伯爵の話、に耳を傾けていたラファエロは何度も頷くと、小さくそう呟いた野だった。
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