猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

61.企み

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翌朝。
身支度を済ませて部屋を出たリリアーナを待っていたのは、ラファエロだった。

「おはようございます、ラファエロ様」

普段は部屋に入ってくるのに、今日に限って何故外で待ち伏せをするような真似をするのだろうと、リリアーナは首を傾げる。

「兄上から呼び出しがありました。今日は王宮に行きますよ」
「えっ………?」

リリアーナが不安そうな声が、思わず口をついて出てしまった事に気が付き、慌てて口元を手で覆う。

「大丈夫ですよ。実は、昨夜コルシーニ伯爵が戻ってきたのです。あれだけあの王女には好き放題させて差し上げたのですから、もうは十分でしょう」

そう言って嗤うラファエロは、どこか愉しそうに見えた。
ラファエロがこういう顔をするときは、間違いなく何かを企んでいる顔だ。

「では、お父様やお兄様も、その場に同席するのですわね?」
「ええ。グロッシ侯爵とはある程度の擦り合わせはしたのですが、侯爵からは生温いだのぶちのめせだの過激な意見を沢山いただきまして………」
「………父が、失礼致しました」

権力を笠に着て、好き勝手に振る舞う輩は父が最も忌み嫌う人種だ。
だからこそ、徹底的に叩き潰したいと思っているのだろうが、恐らくは半分冗談だろう。

「グロッシ侯爵の人となりは理解しているつもりですから、気にしていませんよ」

ふふ、と含み笑いをしてから、ラファエロはふと、真顔になった。

「それにあの王女には、あなたを侮辱したことを心底後悔していただかなければならないと思っている部分は、侯爵も私も同じですから、あなたは何も心配しなくていいですよ」

リリアーナの頬を指の腹で優しく撫でながら、ラファエロが美しい笑顔を浮かべる。
確かにあの王女はいけ好かないし、クラリーチェを侮辱した上に、ラファエロが拒否しているにもかかわらず付きまとっているのだから、許し難い。
しかし、自分が侮辱されたことは、正直言うとどうでも良いと思っていたが、ラファエロと父はそうではないらしい。

「別に心配をしているわけではないのですが………」

少し困ったように眉根を寄せると、ラファエロの指がゆっくりと移動し、みずみずしい桜色の唇を優しくなぞってきた。

「………全て、私に任せてくれますね?」

念を押すようなラファエロの爽やかな笑顔に、強い毒気が含まれている気がして、リリアーナは小さく溜息を零すと、静かに頷いた。
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