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結婚編
53.仮定
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そのままラファエロの執務室に辿り着くと、ラファエロは安堵したかのように深い溜息を零した。
「オルカーニャの王女殿下にあのようなことを仰って、大丈夫ですの?」
リリアーナはおそるおそるラファエロに声を掛けた。
元はといえば、自分が王女を挑発した結果、ラファエロが自分を庇いあのような発言をしたという罪悪感が、リリアーナを苛む。
「あなたが気にすることなどありませんよ。そもそもこちらの都合など鑑みず、勝手に押しかけてきたのはあちらですし、そのくせ我が国を侮辱するような言動を繰り返すような王女に対して払う敬意など持ち合わせていません。大体他国の王族が訪ねてきたからといって、王族が常に付き添って相手をしなければならないという決まりもありませんし、私は多忙なうえに婚約者がいるから相手は出来ない、とはっきり伝えました。それにも拘わらず、しつこく追いかけてくるのですから、忠告することに何の問題もありません」
珍しく饒舌なラファエロだったが、言葉の端々にうんざりとした気持ちと苛立ちが浮かんで見えることに、リリアーナは思わず苦笑した。
「………確かに、ラファエロ様の仰るとおりですわね」
「オルカーニャ王があの王女を公の場に出さなかった理由というのは………もしかするとあの性格のせいではないかとすら思ってしまいますよ」
ラファエロが何気なく零した言葉に、リリアーナははっとする。
確かに、あの王女の振る舞いが策略などではなく、彼女の性格によるものだとしたら。
父王が不出来な娘の醜聞が漏れないように、情報を隠していたとしたら。
そう仮定すると、あれほどまでにラヴィニアの事前情報を掴めなかったのも、納得できる。
「………実際、その可能性は、あり得ると思いますわ。だって、いくら時間がなかったとは言っても、コルシーニ伯爵が直々に動いていながら何の情報も得られないだなんておかしいですもの」
難しい顔をしながら呟いたリリアーナに、ラファエロが頷いた。
「それについては引き続き、コルシーニ伯爵が調べてくれています。すぐに真相は分かるでしょうが………あの王女を追い出す口実を見つけなければ追い出せないというのがなかなか歯痒いですね」
ラファエロはもう一度深い溜息をつくと、執務机に腰を下ろし、ラヴィニアの件を忘れようとするかのように、黙々と書類を片づけていくのだった。
「オルカーニャの王女殿下にあのようなことを仰って、大丈夫ですの?」
リリアーナはおそるおそるラファエロに声を掛けた。
元はといえば、自分が王女を挑発した結果、ラファエロが自分を庇いあのような発言をしたという罪悪感が、リリアーナを苛む。
「あなたが気にすることなどありませんよ。そもそもこちらの都合など鑑みず、勝手に押しかけてきたのはあちらですし、そのくせ我が国を侮辱するような言動を繰り返すような王女に対して払う敬意など持ち合わせていません。大体他国の王族が訪ねてきたからといって、王族が常に付き添って相手をしなければならないという決まりもありませんし、私は多忙なうえに婚約者がいるから相手は出来ない、とはっきり伝えました。それにも拘わらず、しつこく追いかけてくるのですから、忠告することに何の問題もありません」
珍しく饒舌なラファエロだったが、言葉の端々にうんざりとした気持ちと苛立ちが浮かんで見えることに、リリアーナは思わず苦笑した。
「………確かに、ラファエロ様の仰るとおりですわね」
「オルカーニャ王があの王女を公の場に出さなかった理由というのは………もしかするとあの性格のせいではないかとすら思ってしまいますよ」
ラファエロが何気なく零した言葉に、リリアーナははっとする。
確かに、あの王女の振る舞いが策略などではなく、彼女の性格によるものだとしたら。
父王が不出来な娘の醜聞が漏れないように、情報を隠していたとしたら。
そう仮定すると、あれほどまでにラヴィニアの事前情報を掴めなかったのも、納得できる。
「………実際、その可能性は、あり得ると思いますわ。だって、いくら時間がなかったとは言っても、コルシーニ伯爵が直々に動いていながら何の情報も得られないだなんておかしいですもの」
難しい顔をしながら呟いたリリアーナに、ラファエロが頷いた。
「それについては引き続き、コルシーニ伯爵が調べてくれています。すぐに真相は分かるでしょうが………あの王女を追い出す口実を見つけなければ追い出せないというのがなかなか歯痒いですね」
ラファエロはもう一度深い溜息をつくと、執務机に腰を下ろし、ラヴィニアの件を忘れようとするかのように、黙々と書類を片づけていくのだった。
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