猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

46.呆然

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その後は静かなものだった。
というのも、まるで拗ねたかのように、ラヴィニアが会話をしようとしなかったからだ。

エドアルドは初めから、ラヴィニアに話しかけようとしなかったが、その代わりにクラリーチェやラファエロが話を振っていた。
しかしラヴィニアは気のない返事を繰り返し、面白くなさそうな顔をしている。
そんなラヴィニアに、リリアーナは心底呆れていた。
この王女の人間性は、ついこの前までキエザの後宮に巣食っていたディアマンテを筆頭とした女たちと同類………あるいはそれ以下かもしれない。
大体話しかけられているというのにあの態度は何なのだろう。
クラリーチェとラファエロが蔑ろにされているのが悔しくて仕方ないが、リリアーナは持てる理性を全てかき集め、怒りを押し殺していた。

「わたくし、食事はもう食べたくないわ。部屋で休んでも構わないわよね?」

突然カトラリーを置いたラヴィニアはそう言い放つと、席を立ちあがった。
いくら主賓とはいえ、まだメイン料理も運ばれてきていないのに席を立つなど、言語道断だ。
その場にいた人々は皆一様に唖然とし、ラヴィニアを見た。

「………長旅で、お疲れなのですよね。ご気分が優れないことに気が付かずに申し訳ありませんでした。どうぞごゆっくりお休みください」

女主人であるクラリーチェが適当な言い訳をしてフォローをするが、ラヴィニアはそんなクラリーチェを鬱陶しそうに見、溜息をついた。

「王妃様は簡単に謝罪の言葉を口にされるのですね。もう少し、王族としての自覚をもう少しお持ちになられたほうがいいのではなくて?」

くすり、と嗤いながらそう吐き捨てると、ラヴィニアは甲高い靴音を響かせながら従者を連れて部屋を出て行った。

「…………兄上、よく持ちこたえましたね」

水を打ったように静まり返った中、真っ先に口を開いたのはラファエロだった。
正直なところ、最愛の妃をあれだけ侮辱されたのだから、エドアルドが暴れ出すのではとラファエロも貴族たちも気が気ではなかった。

「あと少し、あの女が退出するのが遅かったら切りかかっていたところだな。そういうお前こそ堪えた方だろう」
「そうですか?感情のままに動くのは賢明ではありませんし、事故を装ってを葬るのは難しいことではありませんが、後々面倒になりますからね………」

国王兄弟の、まったく冗談に聞こえない会話に、リリアーナは苦笑いを浮かべた。
そして、自分が立ち去った後、こんな会話が繰り広げられていることを、あの王女は想像しているのだろうかと考え、溜息を零すのだった。
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