猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

43.波乱の晩餐会(1)

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その夜、不承不承ではあるものの、ラヴィニア王女歓迎の晩餐会が開かれた。

来訪の知らせが齎されたのが一週間前だったこともあり、本来は晩舞踏会を開催するのが慣例だったが、準備期間が殆どないに等しい状況だった為、晩餐会を開くということに決めたのはラファエロだった。

「短期間で準備をするのならば、舞踏会よりも晩餐会のほうが無難でしょうね。………王女がいつまで滞在するのかは分かりませんが、後日改めて開催することとしたほうが無難でしょう。知らせが遅かったのはあちらの落ち度ですし。………まあ本音を言えば、人となりもよく分からないような、勝手に押しかけてくる迷惑な王女の為に舞踏会など開く必要があるかどうか、甚だ疑問ですがね」

確かにラファエロの理論は正しいが、選ぶ言葉にいちいち棘が含まれているようにリリアーナには感じられた。

「………何だかんだと正当化しているが、お前も私がクラリーチェ以外と踊りたくないのと同じで、グロッシ侯爵令嬢以外とは踊りたくない、というのが舞踏会を開催したく一番の理由なのだろう?」
「嫌だなあ、兄上と違いますから、そんなことはしませんよ」
「さて、どうだかな?」

そんなやりとりをした上で、舞踏会は取り敢えず持ち越しになったのだった。



「国王陛下と王妃殿下はまだ新婚だとお伺いしまして………僭越ながらわたくし、結婚祝いの品として我が国特産の檸檬酒リモンチェッロをお持ちしましたの」
「まあ、貴重なお品を頂けたこと、大変嬉しく思いますわ」

屈託のない笑顔を浮かべるラヴィニアに、クラリーチェが丁寧に礼を述べた。

「喜んでいただけて、遠路はるばる運んできた甲斐がありましたわ。もしよろしければ、一杯如何ですか?」
「………ありがたいお申し出だが、生憎妃は酒が苦手なのだ。私が彼女の分も頂こう」

クラリーチェが戸惑いの表情を顔に出すより先に、エドアルドがさり気なく庇うのを見て、リリアーナは感心する。

「まあ………それは残念ですわ」

ラヴィニアは心底がっかりしたように溜息を零した。
そして彼女はその悲しそうな表情のままクラリーチェの方に視線を移したのを、リリアーナは見逃さなかった。

「ですが………一国の王妃ともあろうお方が、お酒の一口も召し上がれないとは、わたくし些か驚きましたわ」

続いてラヴィニアの口から飛び出した言葉に、その場の空気は凍りついた。
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