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結婚編
19.約束
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「………ラファエロ様は、何を願ったのですか?」
銅像の前に佇んだまま、リリアーナはふと気になってラファエロに訊ねてみた。
「何を願ったと思いますか?」
「私がお訊きしているのに、それを質問で返されるということは、教えてくださる気持ちがないのですわね」
秘密主義のラファエロのことだ。なんとなくそんな気はしていたが、リリアーナは落胆の溜息をついた。
「おや、私はそのような意地の悪い男だと思っているのですか?」
「あら、違いますの?」
心外だ、とでも言うように、ラファエロは肩を竦めて見せた。
「あなたが、ずっと私から離れずにいてくれるように祈りました」
思いのほか素直に答えたラファエロに、訊ねたリリアーナのほうが驚いた。
「………私はこの命が尽きるまで、………いえ、例えこの身が滅びても、あなたを手放すつもりなどありません。ですが、あなたの気持ちが変わってしまえば、私にはどうすることもできませんからね」
甘さと切なさを含んだ、何とも言えない表情を浮かべたラファエロの腕に力が込められたかと思うと、次の瞬間、リリアーナの体はラファエロの腕の中に閉じ込められていた。
恐ろしいほどの執着心が現れた言葉が聞こえた気がしたが、それよりも突然抱き締められたことで、そんなことを気にしている場合ではなくなってしまう。
「ですから、あなたがずっと心変わりせずに、私の隣に立ち続けてくれることを祈りました。………私は現実主義者の筈なのですが、可愛らしい婚約者の影響でしょうか。この像が齎してくれる『幸せ』を信じてみたくなりました」
次いで向けられた、熱を帯びた蕩けるような微笑みに、リリアーナは胸の鼓動の早まりとともに、体温がどんどん上昇していくような錯覚を覚えた。
「あなたを愛おしいと思えば思うほどに、更に気持ちが強く、大きくなってしまう。………ずっと昔から、あなただけを探し求めていたかのような、そんな気持ちにすらなるのですよ」
その言葉はまさに、大好きな恋物語の中で主人公たちが結ばれた時の台詞だった。
「ラファエロ様………」
呼吸すらも忘れてしまいそうなほどに、リリアーナは体中を興奮と、幸福感が駆け巡っていくのを感じながら、ただラファエロの名を呼ぶ。
恋物語の中で、よく運命の相手を指す言葉で『番』という言葉が出てくるが、そういったものが実際にあるのならば、ラファエロはまさにそんな相手なのだと思う。
「離れてなど、いきません。………だって、離れがたいくらいに好きなのですから」
静かにそう呟くと、リリアーナはラファエロの背中に手を回す。
「生まれ変わっても共に、と約束したではありませんか」
リリアーナがプロポーズを受けた日の夜のことを口にすると、ラファエロが微かに息を吸い込んだのを感じた。
ラファエロの胸から頬を離し、彼の顔を見上げると、エメラルド色の瞳がすぐ間近にあった。
「覚えていて下さったのですね」
「当たり前ですわ。ですから、つまらない心配などしないでくださいませ」
リリアーナは紺碧の瞳を細め、ラファエロを見つめる。
「………本当に、あなたには敵いませんね。どこまで私を夢中にさせるつもりですか?」
一瞬にして、ラファエロの顔が幸せそうに綻んだ。
リリアーナはそんな彼の顔がゆっくりと近づいてくるのを感じながら静かに目を閉じた。
ざわざわと、心地の良い風が頬を撫でるのを感じると同時に、ラファエロの唇がリリアーナのそれに触れる。
そしてそのまま、二人は互いの気持ちを確かめ合うかのように長い長い口付けを交わしたのだった
銅像の前に佇んだまま、リリアーナはふと気になってラファエロに訊ねてみた。
「何を願ったと思いますか?」
「私がお訊きしているのに、それを質問で返されるということは、教えてくださる気持ちがないのですわね」
秘密主義のラファエロのことだ。なんとなくそんな気はしていたが、リリアーナは落胆の溜息をついた。
「おや、私はそのような意地の悪い男だと思っているのですか?」
「あら、違いますの?」
心外だ、とでも言うように、ラファエロは肩を竦めて見せた。
「あなたが、ずっと私から離れずにいてくれるように祈りました」
思いのほか素直に答えたラファエロに、訊ねたリリアーナのほうが驚いた。
「………私はこの命が尽きるまで、………いえ、例えこの身が滅びても、あなたを手放すつもりなどありません。ですが、あなたの気持ちが変わってしまえば、私にはどうすることもできませんからね」
甘さと切なさを含んだ、何とも言えない表情を浮かべたラファエロの腕に力が込められたかと思うと、次の瞬間、リリアーナの体はラファエロの腕の中に閉じ込められていた。
恐ろしいほどの執着心が現れた言葉が聞こえた気がしたが、それよりも突然抱き締められたことで、そんなことを気にしている場合ではなくなってしまう。
「ですから、あなたがずっと心変わりせずに、私の隣に立ち続けてくれることを祈りました。………私は現実主義者の筈なのですが、可愛らしい婚約者の影響でしょうか。この像が齎してくれる『幸せ』を信じてみたくなりました」
次いで向けられた、熱を帯びた蕩けるような微笑みに、リリアーナは胸の鼓動の早まりとともに、体温がどんどん上昇していくような錯覚を覚えた。
「あなたを愛おしいと思えば思うほどに、更に気持ちが強く、大きくなってしまう。………ずっと昔から、あなただけを探し求めていたかのような、そんな気持ちにすらなるのですよ」
その言葉はまさに、大好きな恋物語の中で主人公たちが結ばれた時の台詞だった。
「ラファエロ様………」
呼吸すらも忘れてしまいそうなほどに、リリアーナは体中を興奮と、幸福感が駆け巡っていくのを感じながら、ただラファエロの名を呼ぶ。
恋物語の中で、よく運命の相手を指す言葉で『番』という言葉が出てくるが、そういったものが実際にあるのならば、ラファエロはまさにそんな相手なのだと思う。
「離れてなど、いきません。………だって、離れがたいくらいに好きなのですから」
静かにそう呟くと、リリアーナはラファエロの背中に手を回す。
「生まれ変わっても共に、と約束したではありませんか」
リリアーナがプロポーズを受けた日の夜のことを口にすると、ラファエロが微かに息を吸い込んだのを感じた。
ラファエロの胸から頬を離し、彼の顔を見上げると、エメラルド色の瞳がすぐ間近にあった。
「覚えていて下さったのですね」
「当たり前ですわ。ですから、つまらない心配などしないでくださいませ」
リリアーナは紺碧の瞳を細め、ラファエロを見つめる。
「………本当に、あなたには敵いませんね。どこまで私を夢中にさせるつもりですか?」
一瞬にして、ラファエロの顔が幸せそうに綻んだ。
リリアーナはそんな彼の顔がゆっくりと近づいてくるのを感じながら静かに目を閉じた。
ざわざわと、心地の良い風が頬を撫でるのを感じると同時に、ラファエロの唇がリリアーナのそれに触れる。
そしてそのまま、二人は互いの気持ちを確かめ合うかのように長い長い口付けを交わしたのだった
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