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結婚編
10.出立
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そして迎えた出発の日の朝。
エドアルドとクラリーチェの見送りの為に、王宮へと駆けつけると、城門の前にはラファエロが待っていた。
「おはようございます、私のかわいい人」
「おはようございます、ラファエロ様。いいお天気ですわね」
深い緑色の生地に金糸の刺繍をあしらった美しいドレスの裾を抓んでカーテシーをすると、ラファエロは嬉しそうに微笑んだ。
「ええ。絶好の旅日和ですね」
ラファエロは朝暉から迸る光に、金色の髪を輝かせながら眩しそうにエメラルド色の目を細めた。
その姿が、まるで光から生まれた男神のように美しくて、リリアーナは視線を動かすことが出来なかった。
するとそんなリリアーナに気がついたのか、ラファエロはそっとリリアーナに近づくと体を抱き寄せて、甘く微笑む。
たったそれだけで、リリアーナの心臓は一気に全速力で脈動し始める。
こんな様子で、殆ど一ヶ月近い時間を共に過ごしたら自分はどうなってしまうのだろう。
そんな不安と、甘い期待に胸を支配されながら、リリアーナはゆっくりとラファエロに体を預けた。
「ああ、漸く来たみたいですね」
それから間もなく、旅支度に身を包んだエドアルドとクラリーチェが姿を見せた。
満面の笑みを浮かべたエドアルドは、そわそわと落ち着かない様子のクラリーチェをエスコートしながら長距離移動用の馬車に乗り込んでいく。
クラリーチェは、その不幸な生い立ちのせいで今まで王都から一歩も外に出たことがないのだと聞いた。
つまり今回が人生で初めての遠出になる。
落ち着かないように見えるのはきっもそのせいだろう。
馬車に乗り込んでからも二人であれこれと話をしている様がなんだか微笑ましくて、リリアーナはうっとりと目を細めた。
何を話しているのかまでは聞こえないが、クラリーチェは恥ずかしそうに顔を赤らめる様子が見て取れる。
「クラリーチェ様は今日も可愛らしいですわ」
「ふふ。あなたには敵いませんよ、リリアーナ」
さらりとそう耳元で囁かれて、リリアーナもクラリーチェ同様にかあっと頬を赤らめた。
「そろそろ、時間ですね。では兄上、義姉上、留守はしっかりと守りますので、思う存分楽しんできてくださいね」
ラファエロは爽やかな笑顔を浮かべると、そんなリリアーナを隠すかのように抱き締めてからそう宣言する。
それを合図に、御者が手綱を引き、ゆっくりと馬車が動き出した。
リリアーナはクラリーチェに向かって大きく手を振る。
いつもとは違う日常の始まりを彩るように、一点の曇りもない陽の光が、彼ら四人を照らしていた。
エドアルドとクラリーチェの見送りの為に、王宮へと駆けつけると、城門の前にはラファエロが待っていた。
「おはようございます、私のかわいい人」
「おはようございます、ラファエロ様。いいお天気ですわね」
深い緑色の生地に金糸の刺繍をあしらった美しいドレスの裾を抓んでカーテシーをすると、ラファエロは嬉しそうに微笑んだ。
「ええ。絶好の旅日和ですね」
ラファエロは朝暉から迸る光に、金色の髪を輝かせながら眩しそうにエメラルド色の目を細めた。
その姿が、まるで光から生まれた男神のように美しくて、リリアーナは視線を動かすことが出来なかった。
するとそんなリリアーナに気がついたのか、ラファエロはそっとリリアーナに近づくと体を抱き寄せて、甘く微笑む。
たったそれだけで、リリアーナの心臓は一気に全速力で脈動し始める。
こんな様子で、殆ど一ヶ月近い時間を共に過ごしたら自分はどうなってしまうのだろう。
そんな不安と、甘い期待に胸を支配されながら、リリアーナはゆっくりとラファエロに体を預けた。
「ああ、漸く来たみたいですね」
それから間もなく、旅支度に身を包んだエドアルドとクラリーチェが姿を見せた。
満面の笑みを浮かべたエドアルドは、そわそわと落ち着かない様子のクラリーチェをエスコートしながら長距離移動用の馬車に乗り込んでいく。
クラリーチェは、その不幸な生い立ちのせいで今まで王都から一歩も外に出たことがないのだと聞いた。
つまり今回が人生で初めての遠出になる。
落ち着かないように見えるのはきっもそのせいだろう。
馬車に乗り込んでからも二人であれこれと話をしている様がなんだか微笑ましくて、リリアーナはうっとりと目を細めた。
何を話しているのかまでは聞こえないが、クラリーチェは恥ずかしそうに顔を赤らめる様子が見て取れる。
「クラリーチェ様は今日も可愛らしいですわ」
「ふふ。あなたには敵いませんよ、リリアーナ」
さらりとそう耳元で囁かれて、リリアーナもクラリーチェ同様にかあっと頬を赤らめた。
「そろそろ、時間ですね。では兄上、義姉上、留守はしっかりと守りますので、思う存分楽しんできてくださいね」
ラファエロは爽やかな笑顔を浮かべると、そんなリリアーナを隠すかのように抱き締めてからそう宣言する。
それを合図に、御者が手綱を引き、ゆっくりと馬車が動き出した。
リリアーナはクラリーチェに向かって大きく手を振る。
いつもとは違う日常の始まりを彩るように、一点の曇りもない陽の光が、彼ら四人を照らしていた。
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