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婚約編
41.ラファエロの私室にて
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ラファエロがリベラートの許を訪れている頃。
「お嬢様もお疲れでしょう?湯浴みの準備は出来ておりますよ」
マリカがふわりと微笑むと、リリアーナは小さく頷いた。
「そうさせてもらおうかしら」
「畏まりました。どうぞこちらへ」
リリアーナは立ち上がり、借りている客室に向かおうと扉の方へと歩いていくと、マリカに止められた。
「お嬢様。浴室は、こちらでございます」
「ですがそこは…………」
「はい、殿下のお部屋の浴室でございますね」
マリカはにっこりと笑いながら平然と答える。
「ラファエロ様の浴室を使わせていただくのは流石に…………」
「殿下からのご指示ですから、何も問題はございませんよ」
テキパキと湯浴みの支度を始めるマリカに、リリアーナは激しく戸惑った。
(ラファエロ様の婚約者になった途端に、ラファエロ様の浴室を使うだなんて…………。でも、一緒に入るわけではないから、はしたなくはないわよね?)
ただ浴室を借りるだけなのだから、何も疚しいことなどないのに、どうしてこんなにも恥ずかしいのだろう。
加えて頭の中では恋物語で、恋人同士の色々なやり取りを読み過ぎているせいか、妙な想像だけが次々と浮かんできた。
「心配されなくとも、殿下の浴室は毎日私が隅から隅まで綺麗に磨き上げておりますから、清潔ですよ」
「ええと………そういう心配はしておりませんわ………っ」
寧ろラファエロの残り湯に浸かってみたい、と変態じみたことを考えかけて、リリアーナははっと我に返り、顔を真っ赤にした。
「ふふっ、お嬢様は本当にお可愛らしいですこと」
まるでリリアーナの心の中を見透かすように、マリカは笑いながらリリアーナを浴室へと案内した。
流石は王族の浴室だとリリアーナは感嘆した。
広々とした室内は磨き上げられた大理石造りで、浴槽も三人は余裕で入れそうな程に大きかった。
「早くしないと、始まってしまいますから、私がお手伝い致しますね」
「始まる?」
リリアーナの長い髪を手に取り、洗髪を始めるマリカに、リリアーナは不思議そうに尋ねると、マリカはまたにこりと笑った。
「それは、秘密です。先に聞いてしまったら楽しみも半減しますでしょう?ですから秘密だと、殿下からきつく言われているのです」
マリカはきっぱりとそう告げると、それ以上の詮索は許さないといったように、鼻歌を歌いながらリリアーナの髪を洗い流していく。
どんなに尋ねても、答えてもらえないのは明白だった。
きっとまた、ラファエロは自分を驚かせようとしているに違いない。
それでも自分だけが仲間はずれにされているような気がして、リリアーナは不服そうに頬を膨らませるのだった。
「お嬢様もお疲れでしょう?湯浴みの準備は出来ておりますよ」
マリカがふわりと微笑むと、リリアーナは小さく頷いた。
「そうさせてもらおうかしら」
「畏まりました。どうぞこちらへ」
リリアーナは立ち上がり、借りている客室に向かおうと扉の方へと歩いていくと、マリカに止められた。
「お嬢様。浴室は、こちらでございます」
「ですがそこは…………」
「はい、殿下のお部屋の浴室でございますね」
マリカはにっこりと笑いながら平然と答える。
「ラファエロ様の浴室を使わせていただくのは流石に…………」
「殿下からのご指示ですから、何も問題はございませんよ」
テキパキと湯浴みの支度を始めるマリカに、リリアーナは激しく戸惑った。
(ラファエロ様の婚約者になった途端に、ラファエロ様の浴室を使うだなんて…………。でも、一緒に入るわけではないから、はしたなくはないわよね?)
ただ浴室を借りるだけなのだから、何も疚しいことなどないのに、どうしてこんなにも恥ずかしいのだろう。
加えて頭の中では恋物語で、恋人同士の色々なやり取りを読み過ぎているせいか、妙な想像だけが次々と浮かんできた。
「心配されなくとも、殿下の浴室は毎日私が隅から隅まで綺麗に磨き上げておりますから、清潔ですよ」
「ええと………そういう心配はしておりませんわ………っ」
寧ろラファエロの残り湯に浸かってみたい、と変態じみたことを考えかけて、リリアーナははっと我に返り、顔を真っ赤にした。
「ふふっ、お嬢様は本当にお可愛らしいですこと」
まるでリリアーナの心の中を見透かすように、マリカは笑いながらリリアーナを浴室へと案内した。
流石は王族の浴室だとリリアーナは感嘆した。
広々とした室内は磨き上げられた大理石造りで、浴槽も三人は余裕で入れそうな程に大きかった。
「早くしないと、始まってしまいますから、私がお手伝い致しますね」
「始まる?」
リリアーナの長い髪を手に取り、洗髪を始めるマリカに、リリアーナは不思議そうに尋ねると、マリカはまたにこりと笑った。
「それは、秘密です。先に聞いてしまったら楽しみも半減しますでしょう?ですから秘密だと、殿下からきつく言われているのです」
マリカはきっぱりとそう告げると、それ以上の詮索は許さないといったように、鼻歌を歌いながらリリアーナの髪を洗い流していく。
どんなに尋ねても、答えてもらえないのは明白だった。
きっとまた、ラファエロは自分を驚かせようとしているに違いない。
それでも自分だけが仲間はずれにされているような気がして、リリアーナは不服そうに頬を膨らませるのだった。
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