猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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婚約編

30.夜会(2)

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「ラファエロ様………っ!」

ラファエロの思わぬ行動に、リリアーナは慌てるが、ラファエロは優雅な笑みを浮かべている。

「………は、恥ずかしいですわ」

困惑しながらラファエロを見つめると、ラファエロの手に更に力が籠もった。

「ねぇ………リリアーナ、気が付いていますか?」
「何が、でしょう?」

リリアーナはきょとんとしながら、質問に質問を返した。
するとラファエロはリリアーナを伴ったまま、ゆっくりと歩き出した。

「今日の夜会は、#初めて__・__私のパートナーとしてあなたが出席した、最初の夜会になるのですよ」

穏やかな、けれどもいつもよりも少し大きな声で、宣言をするかのようにラファエロはそう告げた。

リリアーナは一瞬、思考回路を停止させ、それからようやく言われている意味を理解して…………何とも言えない嬉しそうな笑顔を浮かべた。 

確かに、ラファエロの言うとおり、今日の夜会は『ラファエロのパートナー』として初めて出席をした、記念すべきものには違いなかった。
それを、ラファエロが喜んでくれていることが、何よりも嬉しかったのだ。

「ですから、あなたをこうしてダンスに誘うのも、初めてなのですよ」

今度は少しはにかんだような笑顔を見せて、ラファエロが徐ろにリリアーナに熱い視線を向けた。

「……可愛らしいレディ?私と一曲、お相手願えませんか?」

体が密着しているせいで、お辞儀は本当に形だけだったが、その代わりに向けられた眼差しは誰よりも熱かった。

「………はい、喜んで」

リリアーナがラファエロに向かって微笑み直すと、二人は示し合わせたかのように頷きあい、それからゆっくりと広間の中心のほうへと進んだ。

耳に入ってきたのは軽快なワルツだった。
リリアーナは一旦ラファエロから離れ、優雅な仕草でカーテシーをすると、ラファエロもボウアンドスクレープで返してくれた。
そのまま、ゆっくりと互いに歩み寄り、音楽に合わせて踊り始めた。

軽快な音楽に負けないような、ラファエロの軽妙なのに洗練されたステップは、流石王族としか言いようがなかった。
加えてリードの仕方も巧妙で、驚いてしまうほどに踊りやすかった。

ジュストと踊ったことは数えるほどしかなかったが、あの男とて決して下手なわけではないはずなのに、ラファエロと比較すると、彼の足元にも及ばないと感じる。

「ラファエロ様、お上手ですわね」

お世辞抜きの賛辞を贈ると、ラファエロは形の良い眉をぴくりと跳ね上げ、甘やかな笑顔を浮かべた。
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