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ラファエロ編
90.告白(3)
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リリアーナがゆっくりと頷くのを見て、ラファエロは微笑んだ。
それは、いつも浮かべている穏やかな微笑みでも、エドアルドから向けられる慈しみへの喜びの笑顔でもなく、心の底から幸せを感じ、自然と浮かび上がった心からの、とびきりの笑顔だった。
「リリアーナ嬢。はっきりと言葉にして、聞かせてくれませんか?」
ラファエロが懇願するように囁いた。
するとリリアーナは少し恥じらうように視線を泳がせてから、潤んだ瞳でラファエロを見上げる。
「好きです、ラファエロ様………」
リリアーナの口から紡がれたのは、たったそれだけ。
たったそれだけの言葉なのに、まるで魔法に掛けられたかのように目に映る景色が全て輝いて見えるようだった。
ラファエロは更に笑みを深くすると、優しく、だが力強くリリアーナを抱きしめ返す。
体がみっちゃくし、ドレス越しにリリアーナの体温が伝わってくる。
「リリアーナ嬢…………」
どれ位の間そうしていただろうか。
リリアーナの背中に回した腕の力を緩め、ゆっくりと身を屈めてリリアーナの目線に己のそれを合わせる。
そして、こつりと額を合わせた。
「あなたの可愛らしい唇から、そのような言葉が聞けるだなんて、本当に夢のようです。………私は、きっとこの国で一番の幸せ者ですね」
蕩けるような笑顔を浮かべると、ラファエロは柔らかな声でそう囁いた。
「………本当は、不安だったのです。傷心のあなたが、私の気持ちを受け入れてくれるのかと………」
そう続けながら、今度は先程よりも顔を僅かに歪める。
彼女が自分に好意を持っているということは気がついていたが、だからといってそれは彼女が自分を選んでくれるという保証や確約は何もない。
そんな不安な日々すらも、今となっては懐かしかった。
「そんな………。私はあのジュスト・ブラマーニの元婚約者ですわよ?………と言っても、手続きはまだこれからですけれど」
まだ涙の浮かぶ目元にふわりと笑顔を浮かべるリリアーナの目元に手を近づけて、零れそうな雫を再び拭う。
それから、リリアーナの頬を優しく撫ぜた。
「あぁ………婚約解消の手続きでしたらもう全て済んでいますよ。先程お父上にも書類は全てお渡ししておきました。………ですから言いましたよね?『婚約という足枷がなくなった今、堂々とあなたに想いを告げることが出来る事が、嬉しくて堪らない』、と………」
そう言ってラファエロは、今度は不敵な笑みを浮かべた。
「あ…………っ!」
ラファエロの言葉の意味を、ようやく理解したらしいリリアーナは泣いていた事も忘れたかのように大きく目を瞑った。
「い………いつの間に………?」
「時間は有効に活用しないと勿体ないのですよ、リリアーナ嬢?」
含み笑いを浮かべるラファエロのに、リリアーナも笑顔を浮かべている。
彼女を手に入れる為ならば、何を犠牲にしてもいいと、そう思っていた。
だからこそこんなにも長い間彼女を見守り、打てる手を打ってきたのだ。
「ラファエロ様には、絶対に敵いませんわね」
リリアーナが、嬉しそうに囁く。
「さぁ、それはどうでしょうか………?」
まるで真相をはぐらかすような発言をするラファエロが肩を竦めると、自然と二人の間に笑顔が生まれた。
二人は楽しそうに笑い合い、それからじっと見つめ合う。
また、風が吹いてきた。
揺れ動く緑の中でゆっくりと目を閉じると、ラファエロほ彼女の唇を重ねたのだった。
それは、いつも浮かべている穏やかな微笑みでも、エドアルドから向けられる慈しみへの喜びの笑顔でもなく、心の底から幸せを感じ、自然と浮かび上がった心からの、とびきりの笑顔だった。
「リリアーナ嬢。はっきりと言葉にして、聞かせてくれませんか?」
ラファエロが懇願するように囁いた。
するとリリアーナは少し恥じらうように視線を泳がせてから、潤んだ瞳でラファエロを見上げる。
「好きです、ラファエロ様………」
リリアーナの口から紡がれたのは、たったそれだけ。
たったそれだけの言葉なのに、まるで魔法に掛けられたかのように目に映る景色が全て輝いて見えるようだった。
ラファエロは更に笑みを深くすると、優しく、だが力強くリリアーナを抱きしめ返す。
体がみっちゃくし、ドレス越しにリリアーナの体温が伝わってくる。
「リリアーナ嬢…………」
どれ位の間そうしていただろうか。
リリアーナの背中に回した腕の力を緩め、ゆっくりと身を屈めてリリアーナの目線に己のそれを合わせる。
そして、こつりと額を合わせた。
「あなたの可愛らしい唇から、そのような言葉が聞けるだなんて、本当に夢のようです。………私は、きっとこの国で一番の幸せ者ですね」
蕩けるような笑顔を浮かべると、ラファエロは柔らかな声でそう囁いた。
「………本当は、不安だったのです。傷心のあなたが、私の気持ちを受け入れてくれるのかと………」
そう続けながら、今度は先程よりも顔を僅かに歪める。
彼女が自分に好意を持っているということは気がついていたが、だからといってそれは彼女が自分を選んでくれるという保証や確約は何もない。
そんな不安な日々すらも、今となっては懐かしかった。
「そんな………。私はあのジュスト・ブラマーニの元婚約者ですわよ?………と言っても、手続きはまだこれからですけれど」
まだ涙の浮かぶ目元にふわりと笑顔を浮かべるリリアーナの目元に手を近づけて、零れそうな雫を再び拭う。
それから、リリアーナの頬を優しく撫ぜた。
「あぁ………婚約解消の手続きでしたらもう全て済んでいますよ。先程お父上にも書類は全てお渡ししておきました。………ですから言いましたよね?『婚約という足枷がなくなった今、堂々とあなたに想いを告げることが出来る事が、嬉しくて堪らない』、と………」
そう言ってラファエロは、今度は不敵な笑みを浮かべた。
「あ…………っ!」
ラファエロの言葉の意味を、ようやく理解したらしいリリアーナは泣いていた事も忘れたかのように大きく目を瞑った。
「い………いつの間に………?」
「時間は有効に活用しないと勿体ないのですよ、リリアーナ嬢?」
含み笑いを浮かべるラファエロのに、リリアーナも笑顔を浮かべている。
彼女を手に入れる為ならば、何を犠牲にしてもいいと、そう思っていた。
だからこそこんなにも長い間彼女を見守り、打てる手を打ってきたのだ。
「ラファエロ様には、絶対に敵いませんわね」
リリアーナが、嬉しそうに囁く。
「さぁ、それはどうでしょうか………?」
まるで真相をはぐらかすような発言をするラファエロが肩を竦めると、自然と二人の間に笑顔が生まれた。
二人は楽しそうに笑い合い、それからじっと見つめ合う。
また、風が吹いてきた。
揺れ動く緑の中でゆっくりと目を閉じると、ラファエロほ彼女の唇を重ねたのだった。
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