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ラファエロ編
81.ラファエロの思惑
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「リリアーナ嬢。少しお願いがあるのですが………。ちょうど今からクラリーチェ嬢の様子を見に行こうかと思っていたところなのですが、私一人では外聞がよろしくないでしょう?このような遅い時間に申し訳ないのですが、ご同行願えませんでしょうか?」
「え、ええ………構いませんけれど………」
運良くリリアーナに会えた以上、ラファエロは彼女を侯爵邸に帰すつもりはなかった。
勿論、リリアーナに手を出そうとかといった考えはなかったが、せっかくの好機をラファエロが逃す筈もない。
ここで一気に距離を詰めようと、ラファエロは迷わずクラリーチェの名を出す。
案の定リリアーナは提案に乗ってきたが、少し申し訳無さそうに、マリカに帰りの馬車の手配を頼んでしまったと明かしてくれた。
マリカの事まで気にかけてくれる優リリアーナの優しさに、ラファエロは僅かに目を細めた。
「グロッシ侯爵には、クラリーチェ嬢の為に王宮にお泊り頂くと使いを出しておきますから、ご安心下さい。勿論馬車の手配の方も心配いりませんよ」
リリアーナを安心させるように言葉を連ねると、有無を言わせない、僅かな凄みを含ませた笑顔を向ける。すると案の定、リリアーナは頷いてくれたがどこか不安気だった。
今日はあんなことがあったのだ。
リリアーナが崇拝していると言っても過言ではないクラリーチェの様子を見に行くと伝えたことで、クラリーチェの身に何かあったと考えたのかもしれない。
そんなリリアーナの不安を払拭するように、ラファエロは彼女に向かって嫣然と微笑んで見せた。
「クラリーチェ様のお部屋には、国王陛下がいらっしゃるのに、私もお伺いして宜しいのですか?」
少し間を置いて、リリアーナがおずおずと尋ねて来た。
なるほど。
リリアーナはエドアルドとクラリーチェが共に過ごす時間の邪魔になると思ったらしい。
「兄上がいるからこそ、なのですよ。………兄上が女性を嫌っているというのは当然ご存知ですよね?」
直前までのエドアルドとのやり取りを思い出しながら、ラファエロは小さく溜息をついた。
「ええ、勿論ですわ」
「兄上がクラリーチェ嬢を見て一目で恋に落ちたというのは、本当に青天の霹靂なのですよ。………それ故になのでしょうか。かなり奥手なところがありましてね………」
今度は含み笑いを浮かべ、力の抜けたような笑い声を上げる。
「つまり、クラリーチェ様が………というよりもラファエロ様は陛下の事が心配なのですわね?」
「………まぁ端的に言ってしまえばそんなところです。リリアーナ嬢は本当に話の分かる方だ」
心からの言葉をリリアーナに向けると、ラファエロは自然な動作で彼女の手を取った。
それからゆっくりと、リリアーナを導くように歩き始めた。
先程はあんなにも長く感じられた廊下が、とても短く感じられる。
ラファエロはリリアーナの温もりを感じながら、彼女と共にクラリーチェの部屋へと向かった。
「え、ええ………構いませんけれど………」
運良くリリアーナに会えた以上、ラファエロは彼女を侯爵邸に帰すつもりはなかった。
勿論、リリアーナに手を出そうとかといった考えはなかったが、せっかくの好機をラファエロが逃す筈もない。
ここで一気に距離を詰めようと、ラファエロは迷わずクラリーチェの名を出す。
案の定リリアーナは提案に乗ってきたが、少し申し訳無さそうに、マリカに帰りの馬車の手配を頼んでしまったと明かしてくれた。
マリカの事まで気にかけてくれる優リリアーナの優しさに、ラファエロは僅かに目を細めた。
「グロッシ侯爵には、クラリーチェ嬢の為に王宮にお泊り頂くと使いを出しておきますから、ご安心下さい。勿論馬車の手配の方も心配いりませんよ」
リリアーナを安心させるように言葉を連ねると、有無を言わせない、僅かな凄みを含ませた笑顔を向ける。すると案の定、リリアーナは頷いてくれたがどこか不安気だった。
今日はあんなことがあったのだ。
リリアーナが崇拝していると言っても過言ではないクラリーチェの様子を見に行くと伝えたことで、クラリーチェの身に何かあったと考えたのかもしれない。
そんなリリアーナの不安を払拭するように、ラファエロは彼女に向かって嫣然と微笑んで見せた。
「クラリーチェ様のお部屋には、国王陛下がいらっしゃるのに、私もお伺いして宜しいのですか?」
少し間を置いて、リリアーナがおずおずと尋ねて来た。
なるほど。
リリアーナはエドアルドとクラリーチェが共に過ごす時間の邪魔になると思ったらしい。
「兄上がいるからこそ、なのですよ。………兄上が女性を嫌っているというのは当然ご存知ですよね?」
直前までのエドアルドとのやり取りを思い出しながら、ラファエロは小さく溜息をついた。
「ええ、勿論ですわ」
「兄上がクラリーチェ嬢を見て一目で恋に落ちたというのは、本当に青天の霹靂なのですよ。………それ故になのでしょうか。かなり奥手なところがありましてね………」
今度は含み笑いを浮かべ、力の抜けたような笑い声を上げる。
「つまり、クラリーチェ様が………というよりもラファエロ様は陛下の事が心配なのですわね?」
「………まぁ端的に言ってしまえばそんなところです。リリアーナ嬢は本当に話の分かる方だ」
心からの言葉をリリアーナに向けると、ラファエロは自然な動作で彼女の手を取った。
それからゆっくりと、リリアーナを導くように歩き始めた。
先程はあんなにも長く感じられた廊下が、とても短く感じられる。
ラファエロはリリアーナの温もりを感じながら、彼女と共にクラリーチェの部屋へと向かった。
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