猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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ラファエロ編

54.待ち侘びた瞬間

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じっとリリアーナを見つめながら、兄がいよいよ『本題』を切り出したことで、ブラマーニ公爵らは更に追い詰められていくのだと思い、ラファエロは思わず呟いた。

「いよいよ核心に迫ってきましたね。………やはり、彼らはしらを切り通すと思いますか?」
「核心………ですか?」

意味深なラファエロの言葉に、この先に何が起きるのかを知らないリリアーナは静かに首を傾げる。
それから暫く考えを巡らせ、ラファエロの言葉が「ジャクウィント家の呪い」を指しているのだと勘づいたようだった。

「もしや、『ジャクウィント家の呪い』は………?」
「ふふ。見ていれば分かりますよ」

ラファエロは表情を変えることなく、微かに震えるフェラーラ侯爵と、それをじわじわと追い詰めるエドアルドへと視線を向けた。

エドアルドが証拠品を突きつけるとフェラーラ侯爵もブラマーニ公爵もしらを切ってはいるが、明らかに同様していた。

「証拠品を突き付けられても、まだ言い逃れをするつもりのようですわね」

初めてリリアーナが話し掛けてきた。

「兄上も私も、彼等を追い詰める為に色々動いていても、中々尻尾を掴ませませんでしたからね。………この程度は十分想定内です」

証拠品は、王の影が集めてきたものに加え、先日クラリーチェがジャクウィント侯爵邸を訪れた時に見つけたものなど、ありとあらゆるものを用意してある。
どのように言い逃れをしようとも、最早彼等の運命は決まっているのだ。

しかも、エドアルドは『ジャクウィント家の呪い』だけではなく、自分達の生母リオネッラ妃の死の真相についても糾弾するつもりだ。
いつまでもゆっくりと、彼等の戯言に付き合ってはいないだろう。

「ただ、兄上もそろそろ痺れを切らすかもしれませんね。元々そんなに気が長い訳ではないんですよ」

ラファエロがそう呟いた途端、場の空気が一気に下がった。

「既に国王気取りになっていて忘れているようだが、現国王はこの私だ。………そして、。………先程そなたは、貴族たちの………この私の目の前で近衛騎士に命令をした。………それは簒奪と見なされても、文句はい言えまい………?」

まるで獲物を追い詰めるような肉食獣のように、エドアルドは言葉巧みにブラマーニ公爵達を追い詰めていく。

簒奪の一言で、広間の中が一気にざわめき始めた。
確かに先程エドアルド達が正体を明かす直前に、ブラマーニ公爵はクラリーチェと自分を捕らえるようにと近衛騎士に命令を出した。
それは、今度こそ言い逃れの出来ない事実だった。

その既成事実を作りあげる為に、わざわざ彼等を野放しにし、わざと彼等の計画に乗り、事故から生還した後変装までして、公爵達を欺いて会場内に紛れ込み、あのタイミングで正体を明かしたのだ。

待ち侘びた瞬間を迎え、ラファエロは静かに笑みを浮かべながら、深く息を吐き出した。
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