猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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ラファエロ編

51.腹の中

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そこから暫くの間、エドアルドによる審尋が始まった。
どんなに言い逃れをしようとも、証拠も証人も既に揃っているのだから、無駄な抵抗でしかないというのに、ブラマーニ公爵達は必死の形相で保身のために全ての責任を、腹心であるフェラーラ侯爵に押し付け、全てはフェラーラ侯爵の独断で行われた事だと言い始めた。

「フェラーラ侯爵も曲者ですからね。……ただ、ブラマーニ公爵よりも頭が回る分、自分が見限られたことで思いもよらない行動に出るかもしれませんよ?」

ラファエロは、フェラーラ侯爵が裏切る事を予想していた。
もしそうなればブラマーニ公爵は更に慌てることだろう。
想像しただけで笑いが込み上げてくるようだった。

「あら、父に言わせれば『どちらも大して変わらない屑』だと申しておりましたわ」
「流石にグロッシ侯爵は手厳しいですね。絶対に敵に回したくない相手の一人です」
「よく父に申し伝えておきますわ」

リリアーナもつられるように、含み笑いをする。
流石はグロッシ侯爵令嬢だと感じざるを得ない、リリアーナの言葉の辛辣さと、それとは正反対の可愛らしい仕草にラファエロはフェラーラ侯爵の言い訳など殆ど聞いてはいなかった。

暫くやり取りが続いたあと、エドアルドがダンテに合図を送ると、ダンテと騎士達が打ち合わせ通りに証人となる船頭達が数人連れて入室してくる。
明らかに場違いな雰囲気に、男たちは怯えきっているようだった。

「あんなに怯えて………可哀想に………」

隣りにいるリリアーナが男たちに憐みの視線を投げかけた。
優しいその眼差しを見つめながら、ラファエロは目を細めた。

「グロッシ侯爵令嬢は本当にお優しいんですね。でも、心配はいりませんよ。罰を受けるべきなのは悪人だと昔から相場は決まっていますから」
「陛下のことを、信頼なさっているのですね」
「勿論です。私のたった一人の、自慢の兄ですから」

思いもよらない言葉を、リリアーナから掛けられ、ラファエロは得意気に満面の笑みを浮かべた。
ラファエロにとってエドアルドは、常に自分の数歩先を行く、絶対的な存在だ。
尊敬や親愛などという言葉だけでは言い表せないような、強い絆で結ばれているのだとラファエロは信じている。

だが、その大切な兄以上の存在を、ラファエロは見つけてしまった。
………それが、今隣りにいるリリアーナ・グロッシ。
先程の婚約解消宣言で、彼女を捕らえていた呪縛が、漸く解き放たれた。
正式な手続きはこれからになるが、ブラマーニ公爵家は今日という日を最後に消滅する。
兄がジュスト元婚約者にどのような処罰を下すのかは分からないが、いずれにしてもリリアーナの婚約の手続きは簡単に済むことだろう。
ラファエロは口元に静かな微笑みを湛えると、フェラーラ侯爵の断罪を行うエドアルドの声に耳を傾けるのだった。
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