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ラファエロ編
44.キエザ王宮
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予定通りに王宮の裏口から王宮へと入ったエドアルド達は、騎士団の宿舎で待機していた騎士達と合流し、決戦の舞台となる大広間へと向かった。
「既にブラマーニ公爵とフェラーラ侯爵は王宮へと到着しております」
「それも予定通りだな。今頃どこぞの部屋で高笑いしながら祝杯でもあげているのだろう。………全くおめでたい事だ」
「ふふ。きっと既に城主気取りで玉座の座り心地でも確かめているのではありませんか?………後で消毒が必要ですね。腐った根性が付着していたら大変ですから」
エドアルドが嘲笑うと、ラファエロも同意する。
広間の扉を開けると、がらんと人気のない冷たい空気が満ちていた。
「………こうして見てみると、何だか知らない場所のようだな」
ぽつりと、エドアルドが呟いた。
「そうですね。一番最後に入場するのが常ですから、こうして誰もいない広間を目にするのは斬新ですね」
ぐるりと室内を見渡してから、ラファエロは天井を仰いだ。
とりあえず、無事にここまでに辿り着けた事に安堵しながらも、これからは長年自分達を苦しめ続けていたブラマーニ公爵達と対峙する事を考えると、様々な感情が去来する。
証拠も証人も、全て揃っているし、何よりもブラマーニ公爵やフェラーラ侯爵から王位簒奪を示唆するような言動があれば、これからこの広間に集まってくるであろう貴族たち全員が証人となり得る。
「………この日が来るのを、どんなに待ち望んだことか…………」
ラファエロは誰にも聞こえないような小さな声でそう呟いた。
「………ダンテ。最終確認を頼みます。私は別室の方の確認をしてきますね」
「かしこまりました」
ラファエロは鎧を着込んでいるとは思えないような俊敏さで踵を返すと、ブラマーニ公爵家の断罪用に用意してある別室へと足を運んだ。
「………これは殿下。無事のご帰還、心よりお喜び申し上げます」
広間から少し離れたその部屋には、コルシーニ伯爵夫人が待機していた。
無表情のまま恭しく挨拶をすると、すっと気配を消して壁際へと下がっていく。
「頼んでおいた物も、全て準備出来ていますか?」
「はい。全ては殿下の、ご指示通りにしてございます」
一切無駄のない受け答えに、ラファエロは深く頷く。
「流石に仕事が早いですね。………伯爵の方も準備はできていますか?」
「はい。全ては予定通りです」
「助かります。では、また後程重罪人をお土産に連れ帰って来ますので、楽しみにしていてくださいね」
ラファエロがにこりと微笑むのを見た伯爵夫人は、無表情のまま頷いたが、内心は戸惑いと疑問で一杯だった。
というのも、ラファエロが伯爵夫人に頼んでいたものは、若い令嬢用の靴と靴下、ドレス、それにハンカチだった。
この部屋で行われるのは犯罪者への審尋と拷問のはずなのになぜそのようなものが必要なのか甚だ疑問だったが、王の影は、余計な詮索はしない。
ただ主の命令に従うのみだと自身に言い聞かせながら、コルシーニ伯爵夫人は目を閉じるのだった。
「既にブラマーニ公爵とフェラーラ侯爵は王宮へと到着しております」
「それも予定通りだな。今頃どこぞの部屋で高笑いしながら祝杯でもあげているのだろう。………全くおめでたい事だ」
「ふふ。きっと既に城主気取りで玉座の座り心地でも確かめているのではありませんか?………後で消毒が必要ですね。腐った根性が付着していたら大変ですから」
エドアルドが嘲笑うと、ラファエロも同意する。
広間の扉を開けると、がらんと人気のない冷たい空気が満ちていた。
「………こうして見てみると、何だか知らない場所のようだな」
ぽつりと、エドアルドが呟いた。
「そうですね。一番最後に入場するのが常ですから、こうして誰もいない広間を目にするのは斬新ですね」
ぐるりと室内を見渡してから、ラファエロは天井を仰いだ。
とりあえず、無事にここまでに辿り着けた事に安堵しながらも、これからは長年自分達を苦しめ続けていたブラマーニ公爵達と対峙する事を考えると、様々な感情が去来する。
証拠も証人も、全て揃っているし、何よりもブラマーニ公爵やフェラーラ侯爵から王位簒奪を示唆するような言動があれば、これからこの広間に集まってくるであろう貴族たち全員が証人となり得る。
「………この日が来るのを、どんなに待ち望んだことか…………」
ラファエロは誰にも聞こえないような小さな声でそう呟いた。
「………ダンテ。最終確認を頼みます。私は別室の方の確認をしてきますね」
「かしこまりました」
ラファエロは鎧を着込んでいるとは思えないような俊敏さで踵を返すと、ブラマーニ公爵家の断罪用に用意してある別室へと足を運んだ。
「………これは殿下。無事のご帰還、心よりお喜び申し上げます」
広間から少し離れたその部屋には、コルシーニ伯爵夫人が待機していた。
無表情のまま恭しく挨拶をすると、すっと気配を消して壁際へと下がっていく。
「頼んでおいた物も、全て準備出来ていますか?」
「はい。全ては殿下の、ご指示通りにしてございます」
一切無駄のない受け答えに、ラファエロは深く頷く。
「流石に仕事が早いですね。………伯爵の方も準備はできていますか?」
「はい。全ては予定通りです」
「助かります。では、また後程重罪人をお土産に連れ帰って来ますので、楽しみにしていてくださいね」
ラファエロがにこりと微笑むのを見た伯爵夫人は、無表情のまま頷いたが、内心は戸惑いと疑問で一杯だった。
というのも、ラファエロが伯爵夫人に頼んでいたものは、若い令嬢用の靴と靴下、ドレス、それにハンカチだった。
この部屋で行われるのは犯罪者への審尋と拷問のはずなのになぜそのようなものが必要なのか甚だ疑問だったが、王の影は、余計な詮索はしない。
ただ主の命令に従うのみだと自身に言い聞かせながら、コルシーニ伯爵夫人は目を閉じるのだった。
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