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リリアーナ編
87.告白(2)
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二人の間を、庭園に咲き誇る花の薫りを含んだ穏やかな風が吹き抜けた。
突然の事態に、リリアーナはただ呆然とすることしか出来なかった。
強すぎる願望が、幻を見せているのか、それとも白昼夢だろうか。
紡ぎ出された言葉がリリアーナの胸に刺さり、蕩けて、全身に広がっていくようだった。
目眩めく絶頂感が、リリアーナを支配し、思わず体が震えた。
「ラファエロ………様………」
強すぎる幸福感が、思考回路を侵食し、戦慄く唇が漸く奏でたのは、愛しい彼の名前だった。
「これは、私の心からの想いです。………リリアーナ嬢。あなたは昨日漸くジュストとの婚約が解消になったばかりで、まだ色々と気持ちの整理がついていない事は解っているつもりですが、それでも今のあなたの率直な気持ちを聞かせては下さいませんか?」
目の前に佇むラファエロが、降り注ぐ陽の光を浴びてどうしようもないくらいに輝いて見えた。
その姿が息を呑むほどに眩しくて、自然とリリアーナの双眸に涙が浮かんだ。
「…………っ」
泣くつもりなどないのに、次々と目尻から泪が零れ落ちる。
そんなリリアーナに、ラファエロはゆっくりと近づくと、靭やかな指で雫を掬い取り、彼女を宥めるように優しく背中を撫でてくれた。
「………泣き出すほどに、嫌でしたか………?」
先程とは違った意味で驚いて、リリアーナがはっと顔を上げると、ラファエロは傷付いたように綺麗な顔を顰めていた。
「違いますわ…………っ」
次の瞬間、否定の言葉と共に、リリアーナは衝動的にラファエロの胸に飛び込んでいた。
「リ、リリアーナ嬢………っ!?」
流石のラファエロも驚いたように声を上げたが、リリアーナは構わず、彼の背中に回した両手に力を込めた。
怪我を負っている右手が痛んだが、そんな事に構っている場合ではなかった。
「嫌だなどと、私は一言も申し上げておりませんわっ………!大好きで、大好きで仕方のない方から愛の言葉を聞いて驚いて、言葉すらも浮かんでこないのですから、仕方ないでしょう………?」
喉の奥から漏れる嗚咽と共に、ずっと心の奥に押し込めていた気持ちを、ゆっくりとラファエロにぶつけた。
すると少し意外そうに、ラファエロは形の良い眉毛をぴくりと跳ね上げた。
「リリアーナ嬢、そんなに可愛らしい事言われたら、私は自分に都合よく受け取ってしまいますよ?」
小さく溜息を零したラファエロがゆっくりと顔を近づけて来て、その真摯な眼差しに絡め取られたかのように、リリアーナは彼から視線が離せなくなった。
突然の事態に、リリアーナはただ呆然とすることしか出来なかった。
強すぎる願望が、幻を見せているのか、それとも白昼夢だろうか。
紡ぎ出された言葉がリリアーナの胸に刺さり、蕩けて、全身に広がっていくようだった。
目眩めく絶頂感が、リリアーナを支配し、思わず体が震えた。
「ラファエロ………様………」
強すぎる幸福感が、思考回路を侵食し、戦慄く唇が漸く奏でたのは、愛しい彼の名前だった。
「これは、私の心からの想いです。………リリアーナ嬢。あなたは昨日漸くジュストとの婚約が解消になったばかりで、まだ色々と気持ちの整理がついていない事は解っているつもりですが、それでも今のあなたの率直な気持ちを聞かせては下さいませんか?」
目の前に佇むラファエロが、降り注ぐ陽の光を浴びてどうしようもないくらいに輝いて見えた。
その姿が息を呑むほどに眩しくて、自然とリリアーナの双眸に涙が浮かんだ。
「…………っ」
泣くつもりなどないのに、次々と目尻から泪が零れ落ちる。
そんなリリアーナに、ラファエロはゆっくりと近づくと、靭やかな指で雫を掬い取り、彼女を宥めるように優しく背中を撫でてくれた。
「………泣き出すほどに、嫌でしたか………?」
先程とは違った意味で驚いて、リリアーナがはっと顔を上げると、ラファエロは傷付いたように綺麗な顔を顰めていた。
「違いますわ…………っ」
次の瞬間、否定の言葉と共に、リリアーナは衝動的にラファエロの胸に飛び込んでいた。
「リ、リリアーナ嬢………っ!?」
流石のラファエロも驚いたように声を上げたが、リリアーナは構わず、彼の背中に回した両手に力を込めた。
怪我を負っている右手が痛んだが、そんな事に構っている場合ではなかった。
「嫌だなどと、私は一言も申し上げておりませんわっ………!大好きで、大好きで仕方のない方から愛の言葉を聞いて驚いて、言葉すらも浮かんでこないのですから、仕方ないでしょう………?」
喉の奥から漏れる嗚咽と共に、ずっと心の奥に押し込めていた気持ちを、ゆっくりとラファエロにぶつけた。
すると少し意外そうに、ラファエロは形の良い眉毛をぴくりと跳ね上げた。
「リリアーナ嬢、そんなに可愛らしい事言われたら、私は自分に都合よく受け取ってしまいますよ?」
小さく溜息を零したラファエロがゆっくりと顔を近づけて来て、その真摯な眼差しに絡め取られたかのように、リリアーナは彼から視線が離せなくなった。
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