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リリアーナ編
41.王の帰還
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輝くような金髪が零れ落ち、「一度目にしたら忘れられない」とまで称される美しい顔が露わになる。
彼はどこまでも透き通った水色の瞳でクラリーチェを見つめると、微笑んだ。
「エド、アルド………さま………?」
信じられないというように、クラリーチェが彼の名を呼ぶ声が聞こえると同時に、彼女の淡い紫色の瞳が潤み、そして堰を切ったように涙が溢れだした。
「………本当に………?本当にエドアルド様なのですか………?」
戦慄く唇で、クラリーチェは何とか言葉を紡いでいるようだった。
それを目の前で見ているリリアーナも、まるで夢を見ているような気持になる。
「ああ、私だ。………愛しいクラリーチェ、辛い思いをさせて、すまなかった」
謝罪の言葉とともに、エドアルドがクラリーチェを抱き寄せる。
「………無事のご帰還、大変嬉しく………存じますっ………。心より、お待ち………申し上げて、おりました………」
クラリーチェらしい挨拶の言葉が、嗚咽で途切れ途切れになってしまっているところが、彼女の心境を物語っていた。
そんなクラリーチェの額に口付けを落とし、まるで彼女の姿を隠すかのように深紅のマントでクラリーチェを包み込むエドアルドの姿は、恋物語さながらだった。
「感動の、再会ですね」
背後からそんな言葉が聞こえて、リリアーナもまた瞠目してその場に凍り付く。
この声。この口調。
聞き間違えるはずがなかった。
「イチャつきたいというお気持ちは分かりますが、とりあえずあちらのゴミ屑貴族をどうにかなさってからにしてくださいね、兄上」
背後の近衛騎士が動く気配がして、恐る恐る振り返ると、近衛騎士がエドアルド同様に兜を脱ぐところだった。
癖の強い金髪に、エメラルド色の瞳、エドアルドとよく似た顔立ちにいつもどおりの穏やかな笑顔を浮かべたラファエロが、立っていた。
「王弟殿下………!」
「ラファエロ殿下………⁉」
リリアーナとクラリーチェが驚きの声を上げるのは、ほぼ同時だった。
ラファエロは小さく頷いた後、リリアーナをじっと見つめる。
「グロッシ侯爵令嬢。先ほどの強烈な一撃、お見事でした。………ですが、あなたの手も無事ではないでしょう?………少し、失礼します」
ラファエロは徐にリリアーナの前に跪くと、赤く腫れあがったリリアーナの右手を優しく手に取り、甲冑を着ているとは思えないような器用な手つきで、どこからともなく取り出したハンカチを巻いて応急処置を施してくれた。
(嘘………っ、ラファエロ様が跪いて、私の手にっ………!)
突然の事態にリリアーナは完全に固まった。
思考回路が壊れてしまったかのように、文字通り頭の中が真っ白になってしまい、お礼の言葉すらも出てこなかった。
見目麗しい貴公子にこんな風にされて、ときめかない乙女などいないだろう。
ラファエロはほんのり頬を薔薇色に染めるリリアーナに向かって優しく微笑むと、ゆっくり立ち上がり、リリアーを守るかのように傍らに立ったのだった。
彼はどこまでも透き通った水色の瞳でクラリーチェを見つめると、微笑んだ。
「エド、アルド………さま………?」
信じられないというように、クラリーチェが彼の名を呼ぶ声が聞こえると同時に、彼女の淡い紫色の瞳が潤み、そして堰を切ったように涙が溢れだした。
「………本当に………?本当にエドアルド様なのですか………?」
戦慄く唇で、クラリーチェは何とか言葉を紡いでいるようだった。
それを目の前で見ているリリアーナも、まるで夢を見ているような気持になる。
「ああ、私だ。………愛しいクラリーチェ、辛い思いをさせて、すまなかった」
謝罪の言葉とともに、エドアルドがクラリーチェを抱き寄せる。
「………無事のご帰還、大変嬉しく………存じますっ………。心より、お待ち………申し上げて、おりました………」
クラリーチェらしい挨拶の言葉が、嗚咽で途切れ途切れになってしまっているところが、彼女の心境を物語っていた。
そんなクラリーチェの額に口付けを落とし、まるで彼女の姿を隠すかのように深紅のマントでクラリーチェを包み込むエドアルドの姿は、恋物語さながらだった。
「感動の、再会ですね」
背後からそんな言葉が聞こえて、リリアーナもまた瞠目してその場に凍り付く。
この声。この口調。
聞き間違えるはずがなかった。
「イチャつきたいというお気持ちは分かりますが、とりあえずあちらのゴミ屑貴族をどうにかなさってからにしてくださいね、兄上」
背後の近衛騎士が動く気配がして、恐る恐る振り返ると、近衛騎士がエドアルド同様に兜を脱ぐところだった。
癖の強い金髪に、エメラルド色の瞳、エドアルドとよく似た顔立ちにいつもどおりの穏やかな笑顔を浮かべたラファエロが、立っていた。
「王弟殿下………!」
「ラファエロ殿下………⁉」
リリアーナとクラリーチェが驚きの声を上げるのは、ほぼ同時だった。
ラファエロは小さく頷いた後、リリアーナをじっと見つめる。
「グロッシ侯爵令嬢。先ほどの強烈な一撃、お見事でした。………ですが、あなたの手も無事ではないでしょう?………少し、失礼します」
ラファエロは徐にリリアーナの前に跪くと、赤く腫れあがったリリアーナの右手を優しく手に取り、甲冑を着ているとは思えないような器用な手つきで、どこからともなく取り出したハンカチを巻いて応急処置を施してくれた。
(嘘………っ、ラファエロ様が跪いて、私の手にっ………!)
突然の事態にリリアーナは完全に固まった。
思考回路が壊れてしまったかのように、文字通り頭の中が真っ白になってしまい、お礼の言葉すらも出てこなかった。
見目麗しい貴公子にこんな風にされて、ときめかない乙女などいないだろう。
ラファエロはほんのり頬を薔薇色に染めるリリアーナに向かって優しく微笑むと、ゆっくり立ち上がり、リリアーを守るかのように傍らに立ったのだった。
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