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リリアーナ編
28.不穏な空気
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ジュストがクラリーチェの側から離れたのを見計らい、リリアーナは彼女に駆け寄った。
「クラリーチェ様!先程、あの男に絡まれておりましたでしょう?大丈夫でしたか?」
「え………、ええ」
リリアーナは勢いよくクラリーチェに近づくと、ぎゅっと手を握った。
やはりおかしな事を言われていたのか、心なしか顔色が悪いように感じる。
「手出しされなくて、本当に良かったですわ。クラリーチェ様はいつ見てもお美しいですけれど、今日のお美しさはまた格別ですもの。この場にいる全員が、一瞬でクラリーチェ様に心奪われてしまいましたわ。………そうですわよね、陛下?」
嫋やかな笑みを浮かべながら、リリアーナはうっとりとクラリーチェを見つめる。
突然話を振られたエドアルドは戸惑いながらも頷いた。
実際、開港祭に集まった人々はクラリーチェに見惚れているのを、こうして近くに立つだけでも向けられる視線が物語っていた。
「リリアーナ様こそ、花の妖精かと思うくらいくらいに素敵ですわ」
「まあ。クラリーチェ様からお褒めの言葉をいただけるだなんて光栄です」
二人が楽しそうにお互いを褒めあっていると、そこに声を掛けてきた人物がいた。
「お二人共、楽しそうねぇ」
はっとして、声の方を振り返ると、ディアマンテと、ブラマーニ公爵夫妻、そしてフェラーラ侯爵夫妻が立っていた。
「………あら、陛下。お久しぶりでございますわね」
血のように真っ赤な唇の端を釣り上げたディアマンテがちらりとエドアルドを見た。
その様子は敬いとはかけ離れたものに感じられて、リリアーナは冷ややかな視線を三人へと向けた。
「あら、クラリーチェ様の側に控えている侍女方は今日はいらっしゃらないのねぇ?」
紫暗色の瞳を僅かに細めて、ディアマンテは探るようにそう呟いたのを聞き、リリアーナははっとする。
言われてみれば、リディアの姿が見当たらない。
「本日は、所用がございまして………」
「まあ、体調でも崩されたのかしら?クラリーチェ様もお忙しい身でしょうから、お気をつけ遊ばせ?」
ディアマンテの言葉に違和感を覚えたリリアーナは眉を顰めた。
そしてちらりとクラリーチェを見ると、僅かに瞠目しているようだった。
その様子を見て、ディアマンテは再び微笑みを浮かべると、黒い扇子を広げて口元を隠した。
「それにしても、今日は絶好の祭り日和ですな」
「波も穏やかですし、お天気も良いですものね」
ブラマーニ公爵夫妻が、殺伐とした雰囲気を無視して話しかけてきた。
「この分だと、今年の開港祭はさぞかし盛り上がることでしょうね。………事故などなく、全てが滞りなく終わることをお祈りしております」
フェラーラ侯爵が、意味深な笑顔を浮かべながら、静かにそう呟いた。
不穏な空気が辺りを支配して、リリアーナは先程感じた胸騒ぎが、再び湧き上がってくるのを感じたのだった。
「クラリーチェ様!先程、あの男に絡まれておりましたでしょう?大丈夫でしたか?」
「え………、ええ」
リリアーナは勢いよくクラリーチェに近づくと、ぎゅっと手を握った。
やはりおかしな事を言われていたのか、心なしか顔色が悪いように感じる。
「手出しされなくて、本当に良かったですわ。クラリーチェ様はいつ見てもお美しいですけれど、今日のお美しさはまた格別ですもの。この場にいる全員が、一瞬でクラリーチェ様に心奪われてしまいましたわ。………そうですわよね、陛下?」
嫋やかな笑みを浮かべながら、リリアーナはうっとりとクラリーチェを見つめる。
突然話を振られたエドアルドは戸惑いながらも頷いた。
実際、開港祭に集まった人々はクラリーチェに見惚れているのを、こうして近くに立つだけでも向けられる視線が物語っていた。
「リリアーナ様こそ、花の妖精かと思うくらいくらいに素敵ですわ」
「まあ。クラリーチェ様からお褒めの言葉をいただけるだなんて光栄です」
二人が楽しそうにお互いを褒めあっていると、そこに声を掛けてきた人物がいた。
「お二人共、楽しそうねぇ」
はっとして、声の方を振り返ると、ディアマンテと、ブラマーニ公爵夫妻、そしてフェラーラ侯爵夫妻が立っていた。
「………あら、陛下。お久しぶりでございますわね」
血のように真っ赤な唇の端を釣り上げたディアマンテがちらりとエドアルドを見た。
その様子は敬いとはかけ離れたものに感じられて、リリアーナは冷ややかな視線を三人へと向けた。
「あら、クラリーチェ様の側に控えている侍女方は今日はいらっしゃらないのねぇ?」
紫暗色の瞳を僅かに細めて、ディアマンテは探るようにそう呟いたのを聞き、リリアーナははっとする。
言われてみれば、リディアの姿が見当たらない。
「本日は、所用がございまして………」
「まあ、体調でも崩されたのかしら?クラリーチェ様もお忙しい身でしょうから、お気をつけ遊ばせ?」
ディアマンテの言葉に違和感を覚えたリリアーナは眉を顰めた。
そしてちらりとクラリーチェを見ると、僅かに瞠目しているようだった。
その様子を見て、ディアマンテは再び微笑みを浮かべると、黒い扇子を広げて口元を隠した。
「それにしても、今日は絶好の祭り日和ですな」
「波も穏やかですし、お天気も良いですものね」
ブラマーニ公爵夫妻が、殺伐とした雰囲気を無視して話しかけてきた。
「この分だと、今年の開港祭はさぞかし盛り上がることでしょうね。………事故などなく、全てが滞りなく終わることをお祈りしております」
フェラーラ侯爵が、意味深な笑顔を浮かべながら、静かにそう呟いた。
不穏な空気が辺りを支配して、リリアーナは先程感じた胸騒ぎが、再び湧き上がってくるのを感じたのだった。
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