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リリアーナ編
20.二人のお茶会(1)
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約束の一週間後。
リリアーナはお気に入りの若草色に小花柄を散らした可愛らしいデザインのドレスを身に着けると、王宮へと向かった。
王家主催の舞踏会以外で王宮を訪れたのは、勿論初めてのことで、何だか気後れしてしまいそうだった。
「上手くおもてなし出来るか分かりませんけれど、今日はよろしくお願いしますね」
エドアルドの瞳の色と同じ、水色のクラシックなデザインのドレスを身に着けたクラリーチェが出迎えてくれる。
「………クラリーチェ様は、本がお好きなのですか?」
招き入れられた部屋の中で真っ先に目に飛び込んできたのは大きな本棚と、所狭しと並べられた分厚い本だった。
「ええ。沢山の知識を授けてくれるし、本を読んでいるととても心が安らぐ気がするのです。もしかして、リリアーナ様も………?」
あの分厚い本の中身が、恋物語でないということは分かっていたが、クラリーチェと共通の趣味があったということが嬉しくて仕方がなかった。
「クラリーチェ様のような、難しい本ではなくて………お恥ずかしいのですが、巷で流行している恋物語が好きで読んでいるのです。特に、大人気の物語の主人公がクラリーチェ様に似ているような気がして、密かに憧れていたのです」
ずっと明かそうと思って、胸に秘めていたことを、意を決して口にする。
するとクラリーチェはほんの少し驚いたように目を見開いた。その仕草すらも美しいと思いながら、リリアーナは再び口を開いた。
「………あんな男が婚約者だなんて、夢も希望もありませんでしょう?だから、せめてほんの中だけでもときめきや刺激が欲しいのです」
クラリーチェのように、運命の相手が突然自分を連れに来てくれたらどんなに幸せだろう。
リリアーナはそんなことを考えながら呟くと、クラリーチェが優しく微笑んだ。
「本は、夢を見せてくれるものです。それを楽しむ心を、恥じることはありませんよ」
同じくらいの年頃で、こんなにも美しく、穏やかで思いやりのある優しい女性をリリアーナは知らなかった。
流石は女嫌いの国王が見初めたというだけはあるといったところだろうか。
「本当に、クラリーチェ様はお優しいのですね。お美しくて優しいだなんて、私の理想そのものですわ………!………あの、クラリーチェ様!是非私とお友達になってくださいませ!」
落ち着かなければと思うのに、感動に打ち震えたリリアーナの理性は弾け飛び、勢いよくクラリーチェの手を握ってしまった。
その気迫に圧倒されたのか、クラリーチェは淡い紫色の目を丸くして、それから何度も瞬きをしたのだった。
自分が普段は猫を被っており、よそ行きの顔と本音を使い分けていることは、クラリーチェも分かっているはずだ。
それでも、あまりの興奮で引かれてしまったのかと、リリアーナは不安になった。
リリアーナはお気に入りの若草色に小花柄を散らした可愛らしいデザインのドレスを身に着けると、王宮へと向かった。
王家主催の舞踏会以外で王宮を訪れたのは、勿論初めてのことで、何だか気後れしてしまいそうだった。
「上手くおもてなし出来るか分かりませんけれど、今日はよろしくお願いしますね」
エドアルドの瞳の色と同じ、水色のクラシックなデザインのドレスを身に着けたクラリーチェが出迎えてくれる。
「………クラリーチェ様は、本がお好きなのですか?」
招き入れられた部屋の中で真っ先に目に飛び込んできたのは大きな本棚と、所狭しと並べられた分厚い本だった。
「ええ。沢山の知識を授けてくれるし、本を読んでいるととても心が安らぐ気がするのです。もしかして、リリアーナ様も………?」
あの分厚い本の中身が、恋物語でないということは分かっていたが、クラリーチェと共通の趣味があったということが嬉しくて仕方がなかった。
「クラリーチェ様のような、難しい本ではなくて………お恥ずかしいのですが、巷で流行している恋物語が好きで読んでいるのです。特に、大人気の物語の主人公がクラリーチェ様に似ているような気がして、密かに憧れていたのです」
ずっと明かそうと思って、胸に秘めていたことを、意を決して口にする。
するとクラリーチェはほんの少し驚いたように目を見開いた。その仕草すらも美しいと思いながら、リリアーナは再び口を開いた。
「………あんな男が婚約者だなんて、夢も希望もありませんでしょう?だから、せめてほんの中だけでもときめきや刺激が欲しいのです」
クラリーチェのように、運命の相手が突然自分を連れに来てくれたらどんなに幸せだろう。
リリアーナはそんなことを考えながら呟くと、クラリーチェが優しく微笑んだ。
「本は、夢を見せてくれるものです。それを楽しむ心を、恥じることはありませんよ」
同じくらいの年頃で、こんなにも美しく、穏やかで思いやりのある優しい女性をリリアーナは知らなかった。
流石は女嫌いの国王が見初めたというだけはあるといったところだろうか。
「本当に、クラリーチェ様はお優しいのですね。お美しくて優しいだなんて、私の理想そのものですわ………!………あの、クラリーチェ様!是非私とお友達になってくださいませ!」
落ち着かなければと思うのに、感動に打ち震えたリリアーナの理性は弾け飛び、勢いよくクラリーチェの手を握ってしまった。
その気迫に圧倒されたのか、クラリーチェは淡い紫色の目を丸くして、それから何度も瞬きをしたのだった。
自分が普段は猫を被っており、よそ行きの顔と本音を使い分けていることは、クラリーチェも分かっているはずだ。
それでも、あまりの興奮で引かれてしまったのかと、リリアーナは不安になった。
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