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第2章 魔王動乱
side エオロー
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王城から戻って、ウルに気持ちを伝えて。このまま平和に過ごすつもりだったのに、数日後にやってきたナティリアス……ナティから王太子はまだウルが魔王だと言っている事を聞いて陰鬱な気分になった。
アザリーシャ王太子が言うようにウルは魔王だ。俺が実際にこの目で見たから事実だろう。けれど本人は魔王になりたくないしなるつもりもない。なのにどうして蜂の巣をつつくような真似をするのか――まあ弟達にはない手柄が欲しいだけなんだろうが。
「兄上がどうしてウルティスレットを魔王だと断言しているのかはわからないんだけれど……」
ナティの視線を追って窓を見れば、外ではウルがギフトと洗濯物を干している所だった。何が楽しいのか2人で何かを話して大笑いしているのが少しだけ腹立たしい。
「嫉妬か?僕の師匠は随分狭量だったんだな」
「やかましい」
「まあ僕も人の事は言えないけどね」
つい忘れてしまいそうになるが、目の前の男はギフトのパートナーの1人だ。
昔ティールの暴走に巻き込まれまくった所為で、ギフトには他のSwitchと違う特殊な症状がある。格上のDomに切り替えられる以外の時にも時折勝手にSub化してしまうんだ。
だからDomの時のパートナーとSubの時のパートナー、2人のパートナーがいる。ギフト的にはずっと憧れていた魔法学の教師が本命みたいだが、この男は汚い事を何も知りませんみたいな顔をして虎視眈々とギフトの唯一を狙ってやがるんだ。
ただSub化した時にはほぼSubドロップした状態になってるからDomのパートナーは必須。パートナー同士でもギフトを失うわけにはいかない、って事で一応お互い納得の上で奇妙な関係は続いているらしい。
「ギフトが受け入れてるから何も言わないが、悲しませるような事をするなら容赦しないからな」
ギフトもティールも弟のような息子のような存在だ。泣かせるような相手にやるつもりはねえ。
「悲しませるような事は僕もしたくないから安心してくれ。――しかし見れば見る程普通の子なんだけどね」
今度は庭の草取りでもしてるのか姿は見えないが何か楽しげに騒いでいる声は聞こえてくる。
「普通だよ。どこにでもいる、普通の人間だ」
人より我慢強くて、素直に痛い、辛い、悲しい、苦しいって言えないだけの普通の子なんだ。
それなのにどいつもこいつもウルを怖がらせて悲しませるような事ばかりする。あいつを守るべきだった大人達もこぞってあいつを虐げて心の傷を笑顔で覆ってしまうようにさせた。
「何かあるとしたら兄上が持ってたあの日記だと思うんだ」
「中身は知らないのか?」
「知らない。そもそもあれはオセル殿の日記らしいが――誰があれを兄上に渡したと思う?」
帰る前にバルドに確認したら間違いなくオセルの筆跡だと言ったらしい。つまりあの日記をオセルと無関係の王太子に渡したヤツがいるって事だ。
日記の存在をバルドは知らなかった。そして言い方的にウルに関わる事が書かれているのは間違いないそうだが結局日記はバルドが持って帰ってしまったから何が書いてあったのかはわからない。
日記にウルの事が書いてあったと言うのなら公爵邸にあったと考えるのが普通だろう。
なら公爵邸の“誰”があの日記を持ち出しわざわざ王太子に渡したのか。
「今家にいるのは三男らしいが……」
ウルにキスをしたというウルの弟。顔も見たことがない相手だが俺がいない間に店にやって来てウルを追い詰めた相手。
あの時マリオットが偶然訪ねて来なかったら店の奴らが見つけるまでウルはSubドロップを起こしたままだった。しかもあの日俺はそのまま魔物狩りに連れ出されていたから、対処出来たのはシーラだけだ。
そう考えるとウルを自分本意に扱った弟に腹が立つ。
日記を渡したのはそいつだろうか。スタンレール王太子の付き添いでパルヴァン王城に来ていたらしいし、王家が動き出したのもその頃だ。
「だけど三男は父親を追い出して公爵代理として動いているだろう?しかもウルティスレットの除籍撤回を申し立ててると聞いたぞ?なのに今わざわざ公爵家が不利になるような事をするかな」
「確かに自分の家から魔王が出たなんて醜聞どころの騒ぎじゃないか」
下手したら一家、いや一族もろとも処刑の可能性もある。それなら公爵家と何も関係のない今の状態でいた方がまだ言い逃れも可能だろうと思うんだが……。
「他に可能性があるとしたら公爵か公爵婦人か……」
「確かにあの2人は怪しいな。いくら領地に追いやられているとは言え公爵の持つツテは多いだろう」
公爵、公爵婦人、その息子2人。使用人の誰かが金目当てに持ち出した可能性だってある。バルドにでも売り付ければ言い値で買いそうだし。
「誰が日記を渡したにせよ兄上がウルを狙っているのは確かだ。騎士を派遣したい所だけどそれが逆に兄上を刺激してしまうことになるかも知れない」
「……しばらくはティールにも店にいてもらう事にする」
「ああ。僕とリンクも時折顔を出すことにしよう。僕達の目の前で何か事を起こすとは考えにくいからね」
目の前で服を脱がせたのはカウントされないのか、と思いはしたが味方は多い方がいい。黙って頷くに留めた。内心は腹立たしい思いが燻ってるんだけどな。
◇
そんな話しをした数日後。王城から馬車でようやく戻ってきたバルドが、恐らくその足で店に来た。丁度ウルはユリアのマッサージ中でいない時だった。
それを聞いたバルドは残念がるどころか安心したように一息ついてドサリとカウンターに座る。珍しく酒を頼んで来るその様子にまだ開店前だ、なんて言えなくて無言でエールを出した。
「呪いだ」
「……呪い?」
ぽつり、と呟いた小さな声はおよそバルドらしくなく、聞こえた言葉も聞き間違いかと思うようなものだった。
無言で渡された厚めのこれがオセルの日記なんだろう。投げたように背表紙の一部がひしゃげていて、開けば後半は破りとった跡が多く見られる。
前半はまだ結婚直前の穏やかな日常が記録されていた。
両親とどこそこへ行った話。
今は王と王妃になってる2人がまだ王太子と王太子妃で、その2人とバルドのやり取りに笑った話。
結婚前の最後の一時を大切にしないといけない、と穏やかな字で綴られていた。
そこを過ぎてバルドを忘れて幸せになれるかと結婚への緊張と希望が綴られたあと。
「――これは本当の事か……?」
そこからしばらく日付が空いて、再び日記を綴り始めた先はもう呪詛のような言葉が並んでいる。
結婚初日に地下に閉じ込められた事。
アフターケアもないまま来る日も来る日も抱かれ続けた事。
Ωの発情を促す薬を使われてSubドロップと発情が同時に起きて気が狂いそうになった事。
それら全てに怨みの言葉が上から塗り潰すように書き殴られている。
『公爵も前公爵夫妻も僕に望むのは子供だけ』
『だったら望み通り子供を生んでやる』
『その身に呪いを宿した子供を――、全てを破壊する呪われた子を!!』
「……もう最後の辺りはSubドロップで正気じゃない頃の日記だ……。けどな、オセルが命と引き換えに何かの儀式をした形跡はあったらしい」
「確かな情報か?」
「元使用人を尋問して吐かせた。何かしらの魔方陣があって辺り一面血塗れで、中央でウルが1人泣いていたと。――腰に何かの紋様があったのを見たそうだ」
「腰……」
焼け爛れた痕のある部分だろうか。
ウルは子供の頃継母に焼けた鉄を押し付けられたって言っていた筈だ。あの部分に紋様らしきものはなかったが……まさか紋様を消す為に焼いたのか?
「前公爵夫妻はビビっちまってウルの機嫌を損ねないように過ごしてたらしいが、公爵にとっちゃ気味悪い上に邪魔な存在だ。それでも自分と後妻の子供を王太子妃にする為には盾にする人間が必要だった」
「それで生かさず殺さず、か」
俯いたバルドの手元にポタポタと雫が落ちる。
「――最後の日になぁ……あの子は抱いてくれって、そう言ってきてなぁ……」
今から嫁に行くヤツを抱けるか、と冗談のように受け流したけれど本当は番にしてしまって離れなくても良いようにしたかった。
だけどパルヴァンでは血が繋がってなくても戸籍上兄弟に当たる自分達は結婚出来ない。だからその手を離したのに――
「幸せに暮らしていると……思ってたんだ」
――何度手紙を出しても返事が来ないのは新婚で忙しいからだと思いたくてわざわざ国境を超えてまで会いに行かなかった。
過保護過ぎる兄だと思われてオセルが恥をかくかも知れないとかそんな些細な理由を言い訳にして、本当は他の男と幸せそうにしているオセルを見るのが辛かったから。
独り言のようなバルドの言葉が紡がれる。
「あんなに優しい子が自分の子供を呪うくらいの目に遭ってるなんて知ろうともしなかった」
ぽたぽたと落ち続ける雫が止まるまで俺は何も言えないままただ横に座って待った。
言える言葉なんてない。バルドも慰めは望んでないだろう。だからただ側にいる事しか出来ない。
最後の一粒が落ちて弾けた後顔を上げたバルドは温くなったエールを一気飲みして立ち上がる。
「オセルは助けられなかった。だからウルは絶対助ける」
「当たり前だ」
あの子には何の罪もないんだから。
まずオセルがどんな呪いをかけたのか調べて解呪方法も探してくる、と言い放ったバルドの瞳にはもう涙はなかった。
アザリーシャ王太子が言うようにウルは魔王だ。俺が実際にこの目で見たから事実だろう。けれど本人は魔王になりたくないしなるつもりもない。なのにどうして蜂の巣をつつくような真似をするのか――まあ弟達にはない手柄が欲しいだけなんだろうが。
「兄上がどうしてウルティスレットを魔王だと断言しているのかはわからないんだけれど……」
ナティの視線を追って窓を見れば、外ではウルがギフトと洗濯物を干している所だった。何が楽しいのか2人で何かを話して大笑いしているのが少しだけ腹立たしい。
「嫉妬か?僕の師匠は随分狭量だったんだな」
「やかましい」
「まあ僕も人の事は言えないけどね」
つい忘れてしまいそうになるが、目の前の男はギフトのパートナーの1人だ。
昔ティールの暴走に巻き込まれまくった所為で、ギフトには他のSwitchと違う特殊な症状がある。格上のDomに切り替えられる以外の時にも時折勝手にSub化してしまうんだ。
だからDomの時のパートナーとSubの時のパートナー、2人のパートナーがいる。ギフト的にはずっと憧れていた魔法学の教師が本命みたいだが、この男は汚い事を何も知りませんみたいな顔をして虎視眈々とギフトの唯一を狙ってやがるんだ。
ただSub化した時にはほぼSubドロップした状態になってるからDomのパートナーは必須。パートナー同士でもギフトを失うわけにはいかない、って事で一応お互い納得の上で奇妙な関係は続いているらしい。
「ギフトが受け入れてるから何も言わないが、悲しませるような事をするなら容赦しないからな」
ギフトもティールも弟のような息子のような存在だ。泣かせるような相手にやるつもりはねえ。
「悲しませるような事は僕もしたくないから安心してくれ。――しかし見れば見る程普通の子なんだけどね」
今度は庭の草取りでもしてるのか姿は見えないが何か楽しげに騒いでいる声は聞こえてくる。
「普通だよ。どこにでもいる、普通の人間だ」
人より我慢強くて、素直に痛い、辛い、悲しい、苦しいって言えないだけの普通の子なんだ。
それなのにどいつもこいつもウルを怖がらせて悲しませるような事ばかりする。あいつを守るべきだった大人達もこぞってあいつを虐げて心の傷を笑顔で覆ってしまうようにさせた。
「何かあるとしたら兄上が持ってたあの日記だと思うんだ」
「中身は知らないのか?」
「知らない。そもそもあれはオセル殿の日記らしいが――誰があれを兄上に渡したと思う?」
帰る前にバルドに確認したら間違いなくオセルの筆跡だと言ったらしい。つまりあの日記をオセルと無関係の王太子に渡したヤツがいるって事だ。
日記の存在をバルドは知らなかった。そして言い方的にウルに関わる事が書かれているのは間違いないそうだが結局日記はバルドが持って帰ってしまったから何が書いてあったのかはわからない。
日記にウルの事が書いてあったと言うのなら公爵邸にあったと考えるのが普通だろう。
なら公爵邸の“誰”があの日記を持ち出しわざわざ王太子に渡したのか。
「今家にいるのは三男らしいが……」
ウルにキスをしたというウルの弟。顔も見たことがない相手だが俺がいない間に店にやって来てウルを追い詰めた相手。
あの時マリオットが偶然訪ねて来なかったら店の奴らが見つけるまでウルはSubドロップを起こしたままだった。しかもあの日俺はそのまま魔物狩りに連れ出されていたから、対処出来たのはシーラだけだ。
そう考えるとウルを自分本意に扱った弟に腹が立つ。
日記を渡したのはそいつだろうか。スタンレール王太子の付き添いでパルヴァン王城に来ていたらしいし、王家が動き出したのもその頃だ。
「だけど三男は父親を追い出して公爵代理として動いているだろう?しかもウルティスレットの除籍撤回を申し立ててると聞いたぞ?なのに今わざわざ公爵家が不利になるような事をするかな」
「確かに自分の家から魔王が出たなんて醜聞どころの騒ぎじゃないか」
下手したら一家、いや一族もろとも処刑の可能性もある。それなら公爵家と何も関係のない今の状態でいた方がまだ言い逃れも可能だろうと思うんだが……。
「他に可能性があるとしたら公爵か公爵婦人か……」
「確かにあの2人は怪しいな。いくら領地に追いやられているとは言え公爵の持つツテは多いだろう」
公爵、公爵婦人、その息子2人。使用人の誰かが金目当てに持ち出した可能性だってある。バルドにでも売り付ければ言い値で買いそうだし。
「誰が日記を渡したにせよ兄上がウルを狙っているのは確かだ。騎士を派遣したい所だけどそれが逆に兄上を刺激してしまうことになるかも知れない」
「……しばらくはティールにも店にいてもらう事にする」
「ああ。僕とリンクも時折顔を出すことにしよう。僕達の目の前で何か事を起こすとは考えにくいからね」
目の前で服を脱がせたのはカウントされないのか、と思いはしたが味方は多い方がいい。黙って頷くに留めた。内心は腹立たしい思いが燻ってるんだけどな。
◇
そんな話しをした数日後。王城から馬車でようやく戻ってきたバルドが、恐らくその足で店に来た。丁度ウルはユリアのマッサージ中でいない時だった。
それを聞いたバルドは残念がるどころか安心したように一息ついてドサリとカウンターに座る。珍しく酒を頼んで来るその様子にまだ開店前だ、なんて言えなくて無言でエールを出した。
「呪いだ」
「……呪い?」
ぽつり、と呟いた小さな声はおよそバルドらしくなく、聞こえた言葉も聞き間違いかと思うようなものだった。
無言で渡された厚めのこれがオセルの日記なんだろう。投げたように背表紙の一部がひしゃげていて、開けば後半は破りとった跡が多く見られる。
前半はまだ結婚直前の穏やかな日常が記録されていた。
両親とどこそこへ行った話。
今は王と王妃になってる2人がまだ王太子と王太子妃で、その2人とバルドのやり取りに笑った話。
結婚前の最後の一時を大切にしないといけない、と穏やかな字で綴られていた。
そこを過ぎてバルドを忘れて幸せになれるかと結婚への緊張と希望が綴られたあと。
「――これは本当の事か……?」
そこからしばらく日付が空いて、再び日記を綴り始めた先はもう呪詛のような言葉が並んでいる。
結婚初日に地下に閉じ込められた事。
アフターケアもないまま来る日も来る日も抱かれ続けた事。
Ωの発情を促す薬を使われてSubドロップと発情が同時に起きて気が狂いそうになった事。
それら全てに怨みの言葉が上から塗り潰すように書き殴られている。
『公爵も前公爵夫妻も僕に望むのは子供だけ』
『だったら望み通り子供を生んでやる』
『その身に呪いを宿した子供を――、全てを破壊する呪われた子を!!』
「……もう最後の辺りはSubドロップで正気じゃない頃の日記だ……。けどな、オセルが命と引き換えに何かの儀式をした形跡はあったらしい」
「確かな情報か?」
「元使用人を尋問して吐かせた。何かしらの魔方陣があって辺り一面血塗れで、中央でウルが1人泣いていたと。――腰に何かの紋様があったのを見たそうだ」
「腰……」
焼け爛れた痕のある部分だろうか。
ウルは子供の頃継母に焼けた鉄を押し付けられたって言っていた筈だ。あの部分に紋様らしきものはなかったが……まさか紋様を消す為に焼いたのか?
「前公爵夫妻はビビっちまってウルの機嫌を損ねないように過ごしてたらしいが、公爵にとっちゃ気味悪い上に邪魔な存在だ。それでも自分と後妻の子供を王太子妃にする為には盾にする人間が必要だった」
「それで生かさず殺さず、か」
俯いたバルドの手元にポタポタと雫が落ちる。
「――最後の日になぁ……あの子は抱いてくれって、そう言ってきてなぁ……」
今から嫁に行くヤツを抱けるか、と冗談のように受け流したけれど本当は番にしてしまって離れなくても良いようにしたかった。
だけどパルヴァンでは血が繋がってなくても戸籍上兄弟に当たる自分達は結婚出来ない。だからその手を離したのに――
「幸せに暮らしていると……思ってたんだ」
――何度手紙を出しても返事が来ないのは新婚で忙しいからだと思いたくてわざわざ国境を超えてまで会いに行かなかった。
過保護過ぎる兄だと思われてオセルが恥をかくかも知れないとかそんな些細な理由を言い訳にして、本当は他の男と幸せそうにしているオセルを見るのが辛かったから。
独り言のようなバルドの言葉が紡がれる。
「あんなに優しい子が自分の子供を呪うくらいの目に遭ってるなんて知ろうともしなかった」
ぽたぽたと落ち続ける雫が止まるまで俺は何も言えないままただ横に座って待った。
言える言葉なんてない。バルドも慰めは望んでないだろう。だからただ側にいる事しか出来ない。
最後の一粒が落ちて弾けた後顔を上げたバルドは温くなったエールを一気飲みして立ち上がる。
「オセルは助けられなかった。だからウルは絶対助ける」
「当たり前だ」
あの子には何の罪もないんだから。
まずオセルがどんな呪いをかけたのか調べて解呪方法も探してくる、と言い放ったバルドの瞳にはもう涙はなかった。
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