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特訓
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マリアンナ様の教え方はとても上手くて、もちろんネイビスの時みたいに内部爆発なんて起こす事もなく自分でもびっくりするくらい順調に使える高位魔法が増えた。
ただパニックになった時の悪癖は直らないだろうから基本的にはネイビスに習った身体強化で戦って、余裕がある時にはマリアンナ様に習った魔法で応戦する、って感じ。
「あの……ありがとうございます」
俺自身魔力が高いのはわかってても使い方が分からなかったから、マリアンナ様が教えてくれて本当に助かった。
――でも相変わらずネイビスと仲良くしてて、胸の奥がモヤってしてるんだけど。
「まだこの国では孤児院への援助が足りていないように感じますわ。この戦いが終わったら国に一言申し上げる必要がありますわね」
ここ半月訓練の合間で俺の境遇を聞いたマリアンナ様は眉を顰めて思案している。
王都周辺の孤児院ならまだしも田舎の方に行けば行くほど貧しい村は増えるし、横暴な領主も増える。多分俺がいた所はそれでもまだマシな方だったんだと思う。勉強する暇なんかなかったけど、酷い所は寄付金をせしめて孤児を娼館に売り飛ばす事もあるらしいからな。
そんな未来の話をしてたら、最近眉間の皺がすごい事になってるネイビスが迎えに来た。
流石に俺の魔法を街中でぶっ放すわけにいかないから、近くの森に聖女様が結界を張ってその中での特訓なんだ。終わる頃にこうやってネイビスが迎えに来るのがここ最近の日課。フランツ達は先に食堂で席を確保してくれてて、マリアンナ様は騎士の人とこの街の教会で寝泊まりしてるから特訓が終わったらここでお別れだ。
「デュナ様も感覚で覚えるタイプのようですが、本当に良く頑張られましたね」
不意に手をぎゅ、っと握られてびっくりする。
柔らかくて線の細い女の人の手だ。ちょっと力は強めだけど、あんまり女の人と触れ合った事のない俺はあわあわしてしまう。でも握り合った手の繋ぎ目をネイビスが手刀で離れさせたから女の人の手を堪能する間もなかったんだけど。
マリアンナ様は「まあ」と驚いた声を上げて頬に手を当てた。
「ネイビス、あまり乱暴な事は関心しませんわ」
「もう時間だろ。こいつは連れて帰る」
ぎゅ、って抱き込まれた俺の腕を引っ張って張り付いてくるマリアンナ様の胸に思考が停止してしまったけど、マリアンナ様が見てるのは俺じゃない。
「そんなに強く握ったらデュナ様が折れてしまいますわ」
「そっちこそその手を離せ」
「まあ!少しくらい世間話に付き合ってくれても良いではありませんか」
俺を挟んで2人の気安いやり取りが続いて居たたまれない。
それにモヤモヤも酷くなるし、俺は2人の手を振り払って距離を取った。驚いたような2人の顔をまともに見られないまま、多分引き攣りまくってる笑顔らしきものを何とか浮かべる。
「俺、転移の練習がてら先に行ってるな」
魔力量的には使えるだろうと思ってた転移はマリアンナ様の指導のおかげできっちり使えるようになったから、2人を巻き込まないようにもう何歩か距離を取って魔法を展開する。
ネイビスがちょっと待て、って言ってた気がするけどこのままここにいたらモヤモヤが言葉になっちゃいそうで嫌だったから。
転移先に人がいたら大変だから一旦自室に戻ってからフランツ達が待ってる筈の食堂に行く。
「……イツカ~……」
既に並んだ料理と酒で勝手に夕食を始めてるのはどうなんだ、と思いながらイツカの袖を引いた。この間はイツカが言ってた事の意味がわからなかったけど流石の俺でも半月経ったらこのモヤモヤの意味くらいわかる。
俺はネイビスと仲が良いマリアンナ様にヤキモチを焼いてるんだ。だってあの2人たまにコソコソ話してその度にネイビスが照れたような顔してそっぽ向いたり可愛い反応するんだよ。傍から見てたら恋人同士とかもしくは両片思いみたいな、何かそんな感じで。
マリアンナ様も良い人だと思ってるけどたまに学生時代の、俺の知らないネイビスの話を楽しそうにしてくるから俺は勝手に劣等感を抱いてしまうわけで。
「うわ、重症」
何も言わなくてもしょぼぼ、ってなってる俺の考えがわかったらしいイツカに言われて余計にしょぼ、っとしてしまう。
「デュナにも人並みにヤキモチ焼く感覚あったんだ?」
「うるさい。俺を何だと思ってるんだ」
しょぼくれてる仲間に塩塗りたくるとは何事だコノヤロー。
ネイビスは俺の事好きだって言ってくれたから!マリアンナ様の事を好きなわけじゃないから!って口から飛び出しそうになる自分が嫌だ。
だってあの2人は単純に俺が知らない学園時代の話をしてるだけで、別にイチャイチャしてるわけじゃない……って言い聞かせてるんだけど。あのたまに照れた顔してマリアンナ様をあしらうネイビスとの気安いやり取りがどうにもこうにもモヤモヤして。
「マリアンナ様は別にわざとしてるわけじゃないのわかってるのに……」
「え?そう?あれわざとでしょ」
「どう見てもわざとだな」
恋愛もポンコツな俺と違ってフランツとイツカは逆に驚いたように言う。むしろ俺が気付いてない事にびっくり、って感じだ。いや俺もびっくりですけど。
あれわざとだったの?わざとネイビスにちょっかいかけてたの?という事はマリアンナ様ももしかしてネイビスの事好きなの?
ただパニックになった時の悪癖は直らないだろうから基本的にはネイビスに習った身体強化で戦って、余裕がある時にはマリアンナ様に習った魔法で応戦する、って感じ。
「あの……ありがとうございます」
俺自身魔力が高いのはわかってても使い方が分からなかったから、マリアンナ様が教えてくれて本当に助かった。
――でも相変わらずネイビスと仲良くしてて、胸の奥がモヤってしてるんだけど。
「まだこの国では孤児院への援助が足りていないように感じますわ。この戦いが終わったら国に一言申し上げる必要がありますわね」
ここ半月訓練の合間で俺の境遇を聞いたマリアンナ様は眉を顰めて思案している。
王都周辺の孤児院ならまだしも田舎の方に行けば行くほど貧しい村は増えるし、横暴な領主も増える。多分俺がいた所はそれでもまだマシな方だったんだと思う。勉強する暇なんかなかったけど、酷い所は寄付金をせしめて孤児を娼館に売り飛ばす事もあるらしいからな。
そんな未来の話をしてたら、最近眉間の皺がすごい事になってるネイビスが迎えに来た。
流石に俺の魔法を街中でぶっ放すわけにいかないから、近くの森に聖女様が結界を張ってその中での特訓なんだ。終わる頃にこうやってネイビスが迎えに来るのがここ最近の日課。フランツ達は先に食堂で席を確保してくれてて、マリアンナ様は騎士の人とこの街の教会で寝泊まりしてるから特訓が終わったらここでお別れだ。
「デュナ様も感覚で覚えるタイプのようですが、本当に良く頑張られましたね」
不意に手をぎゅ、っと握られてびっくりする。
柔らかくて線の細い女の人の手だ。ちょっと力は強めだけど、あんまり女の人と触れ合った事のない俺はあわあわしてしまう。でも握り合った手の繋ぎ目をネイビスが手刀で離れさせたから女の人の手を堪能する間もなかったんだけど。
マリアンナ様は「まあ」と驚いた声を上げて頬に手を当てた。
「ネイビス、あまり乱暴な事は関心しませんわ」
「もう時間だろ。こいつは連れて帰る」
ぎゅ、って抱き込まれた俺の腕を引っ張って張り付いてくるマリアンナ様の胸に思考が停止してしまったけど、マリアンナ様が見てるのは俺じゃない。
「そんなに強く握ったらデュナ様が折れてしまいますわ」
「そっちこそその手を離せ」
「まあ!少しくらい世間話に付き合ってくれても良いではありませんか」
俺を挟んで2人の気安いやり取りが続いて居たたまれない。
それにモヤモヤも酷くなるし、俺は2人の手を振り払って距離を取った。驚いたような2人の顔をまともに見られないまま、多分引き攣りまくってる笑顔らしきものを何とか浮かべる。
「俺、転移の練習がてら先に行ってるな」
魔力量的には使えるだろうと思ってた転移はマリアンナ様の指導のおかげできっちり使えるようになったから、2人を巻き込まないようにもう何歩か距離を取って魔法を展開する。
ネイビスがちょっと待て、って言ってた気がするけどこのままここにいたらモヤモヤが言葉になっちゃいそうで嫌だったから。
転移先に人がいたら大変だから一旦自室に戻ってからフランツ達が待ってる筈の食堂に行く。
「……イツカ~……」
既に並んだ料理と酒で勝手に夕食を始めてるのはどうなんだ、と思いながらイツカの袖を引いた。この間はイツカが言ってた事の意味がわからなかったけど流石の俺でも半月経ったらこのモヤモヤの意味くらいわかる。
俺はネイビスと仲が良いマリアンナ様にヤキモチを焼いてるんだ。だってあの2人たまにコソコソ話してその度にネイビスが照れたような顔してそっぽ向いたり可愛い反応するんだよ。傍から見てたら恋人同士とかもしくは両片思いみたいな、何かそんな感じで。
マリアンナ様も良い人だと思ってるけどたまに学生時代の、俺の知らないネイビスの話を楽しそうにしてくるから俺は勝手に劣等感を抱いてしまうわけで。
「うわ、重症」
何も言わなくてもしょぼぼ、ってなってる俺の考えがわかったらしいイツカに言われて余計にしょぼ、っとしてしまう。
「デュナにも人並みにヤキモチ焼く感覚あったんだ?」
「うるさい。俺を何だと思ってるんだ」
しょぼくれてる仲間に塩塗りたくるとは何事だコノヤロー。
ネイビスは俺の事好きだって言ってくれたから!マリアンナ様の事を好きなわけじゃないから!って口から飛び出しそうになる自分が嫌だ。
だってあの2人は単純に俺が知らない学園時代の話をしてるだけで、別にイチャイチャしてるわけじゃない……って言い聞かせてるんだけど。あのたまに照れた顔してマリアンナ様をあしらうネイビスとの気安いやり取りがどうにもこうにもモヤモヤして。
「マリアンナ様は別にわざとしてるわけじゃないのわかってるのに……」
「え?そう?あれわざとでしょ」
「どう見てもわざとだな」
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あれわざとだったの?わざとネイビスにちょっかいかけてたの?という事はマリアンナ様ももしかしてネイビスの事好きなの?
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