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お前は誰だ?
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「ロロア……?」
振り向いた先にいたのは行方不明になっていた筈のロロアだった。
ロロア、の筈だ。だけど俺の本能がそれはロロアじゃない、って言ってる。姿形はロロアだけど、中身が違う。知ってるような、知らないような得体の知れない気味の悪い気配に全身が総毛立つ。
ネイビスも同じようで既にいつでも戦える体勢だ。
「ふふ、いいね。その顔――」
気付いたら目の前にいた筈のロロアが背後にいて後ろから俺の頬を指でつつつ、って撫でてきて思わず全力で杖を振った。でもその場所に当然その姿はない。今度は木の上で無邪気に足をブラブラ揺らしながら笑ってる。
「誰だお前!」
ロロアの姿を纏った誰かはクスクスと笑って、
「わかんないなんて悲しいなぁ」
だなんて嘯いている。
知らない――知らない筈だ。でもどこかに感じる知った気配に違和感がある。
誰だ。どこで会った?いや、そもそもどうしてロロアの中にロロアじゃない気配がする?おかしい。
「本当にわかんない?僕達兄弟の中で一番仲が良かったのに。ねぇ、ロメリオ兄さん」
「――ロランド……?」
どんなに長生きしたとしても俺が死んだ時既に18を超えていたロランドが100年経った今も生きているわけないから、俺達みたいに別人として転生していた可能性はあるだろう。でも今目の前にいるロロアを見てもネイビス達に感じた懐かしさなんて欠片も感じない。むしろ禍々しい気配の中に微かに知ってるような気がする気配がある――そんな程度だ。
でもロロアの中の誰かが俺達が酒場で話していたのを聞いてからかっているだけかも知れない。
「ああ、良いね。その顔。僕は昔から兄さんのその澄ました顔を崩してやりたくて堪らなかったんだ――ジュリエラに仮死の薬を盛ったのも僕だよ」
さっきまで木の上にいたロロアの――ロランドの声が耳元で聞こえてまた杖を全力で振るけど今度も当たらない。
「あの時の兄さんの顔、最高だったなぁ」
静かに魔法を練っていたネイビスの氷魔法がロランドの足元で展開されるけど炎の魔法で相殺されてしまう。ロロアにそんな高等な魔法は扱えなかったから、目の前の相手はやっぱりロロアじゃない。
それにジュリエラが仮死だったのを知ってるのも、あの日記を読んだ俺達と当事者のネイビスだけだ。酒場ではその事を詳しく口に出してない。
だからこれは本当にロランド……なんだろうか。
「せっかくだから兄さんの全部を奪いたかったのにジュリエラは自害しちゃうし。つまんなかったけど……今の兄さんならむしろ兄さんを手に入れた方が楽しそうだね」
「うぐ……っ」
いつの間にか木の根に絡みつかれて体を拘束されてしまう。
「お前……ロロアを乗っ取ったな……!?」
さっきから感じてた違和感の正体。
禍々しい気配に、他の皆に感じた懐かしさのない魂。
絶対逃げられる筈のない護送車から消えたロロア。
禁術として封じられていた魂移しの魔法だ。
「あれだけ僕を使っておきながら結局ジュリエラを死なせたって僕を処刑した奴らに復讐する為にね」
今のユーステル領を管理するのはアーバインの関係者で、結局ユーステルの王族は全員が戦死か処刑されたって事だ。
「復讐は終わったけど、そしたらつまらなくなってさ」
横目で結界に阻まれるネイビスを見る。
確かにロランドは魔法の才能が兄弟一だった。ドラゴンを1人で倒せるネイビスですら結界を破るのに苦戦するくらいに。
――あの戦争で一緒に戦ってくれてたら勝てたかも知れないくらいに。いや、ジュリエラを失ったと思った時点で俺に生きる気力はなかったから無理だったかも知れないけど。
全身木の根でぐるぐる巻きにされてる俺の頬を撫でるロランドのうっとりした顔に怖気が走る。
「でもこの世界は廻ってる。いつかきっと兄さんが戻ってくると思って待ってたんだよ」
バリン、と結界に入ったヒビに忌々しそうな顔を向けて、でもまた俺に向けた顔は恍惚としてた。
「本当は今回も兄さんの恋人を奪ってやろうと思ってたんだけど、僕はジュリエラの聖人ぶってる所も嫌いだったんだよね。だから今2人が一緒にいてくれて本当に嬉しいよ」
寄せられる唇が気持ち悪くて唯一動く足で腹を蹴り上げるけど、まるで子供を相手してるみたいに簡単にいなされてしまう。
「ロロアはどうした」
「ああ、家族に見捨てられたのがよっぽどショックだったみたいだね。簡単にこの体から弾け飛んじゃった。丁度良かったんじゃない?こいつ指名手配犯だったんでしょ?」
ロロアのしてきた事は到底許される事じゃないけど、でも個人が勝手に裁いて良い事じゃないし、まして魂が弾け飛んだって事は二度と転生出来ないって事だ。
「あれ、怒ったの?あいつに襲われそうになってたのに?」
顔を寄せてくるロランドから必死で顔を背けるけど、片手でぐい、っと正面を向かされてしまう。
「あんなすぐバレる場所で襲うなんてバカだよねぇ」
「……まさかお前が何かしたのか」
「ん?ふふ、ちょっとだけね。理性の強い人だったらかからない魔法だよ?あんな簡単にかかっちゃうなんてよっぽど兄さんを犯したかったんだね。――でも気持ちはわかるなぁ。前の兄さんは周りを使って心を折ってやりたかったけど、今の兄さんなら僕も犯してやりたい」
その瞬間目の前に業火が飛んできて正直クソビビったけど、木の根が解けて落下する俺をネイビスが受け止めてくれた事で結界が破られた事を知る。
流石ネイビス!この短時間で良く結界を破ってくれた!ありがとう!
「禁術の所為で死ねなくなってつまんなかったんだけど、やっと役者が揃ってくれたみたいで嬉しいな。ねえ兄さん、今度は誰から殺そうか。殺さないでって僕に股開いてくれるなら殺さないであげるからよく考えて?――また来るね」
振り向いた先にいたのは行方不明になっていた筈のロロアだった。
ロロア、の筈だ。だけど俺の本能がそれはロロアじゃない、って言ってる。姿形はロロアだけど、中身が違う。知ってるような、知らないような得体の知れない気味の悪い気配に全身が総毛立つ。
ネイビスも同じようで既にいつでも戦える体勢だ。
「ふふ、いいね。その顔――」
気付いたら目の前にいた筈のロロアが背後にいて後ろから俺の頬を指でつつつ、って撫でてきて思わず全力で杖を振った。でもその場所に当然その姿はない。今度は木の上で無邪気に足をブラブラ揺らしながら笑ってる。
「誰だお前!」
ロロアの姿を纏った誰かはクスクスと笑って、
「わかんないなんて悲しいなぁ」
だなんて嘯いている。
知らない――知らない筈だ。でもどこかに感じる知った気配に違和感がある。
誰だ。どこで会った?いや、そもそもどうしてロロアの中にロロアじゃない気配がする?おかしい。
「本当にわかんない?僕達兄弟の中で一番仲が良かったのに。ねぇ、ロメリオ兄さん」
「――ロランド……?」
どんなに長生きしたとしても俺が死んだ時既に18を超えていたロランドが100年経った今も生きているわけないから、俺達みたいに別人として転生していた可能性はあるだろう。でも今目の前にいるロロアを見てもネイビス達に感じた懐かしさなんて欠片も感じない。むしろ禍々しい気配の中に微かに知ってるような気がする気配がある――そんな程度だ。
でもロロアの中の誰かが俺達が酒場で話していたのを聞いてからかっているだけかも知れない。
「ああ、良いね。その顔。僕は昔から兄さんのその澄ました顔を崩してやりたくて堪らなかったんだ――ジュリエラに仮死の薬を盛ったのも僕だよ」
さっきまで木の上にいたロロアの――ロランドの声が耳元で聞こえてまた杖を全力で振るけど今度も当たらない。
「あの時の兄さんの顔、最高だったなぁ」
静かに魔法を練っていたネイビスの氷魔法がロランドの足元で展開されるけど炎の魔法で相殺されてしまう。ロロアにそんな高等な魔法は扱えなかったから、目の前の相手はやっぱりロロアじゃない。
それにジュリエラが仮死だったのを知ってるのも、あの日記を読んだ俺達と当事者のネイビスだけだ。酒場ではその事を詳しく口に出してない。
だからこれは本当にロランド……なんだろうか。
「せっかくだから兄さんの全部を奪いたかったのにジュリエラは自害しちゃうし。つまんなかったけど……今の兄さんならむしろ兄さんを手に入れた方が楽しそうだね」
「うぐ……っ」
いつの間にか木の根に絡みつかれて体を拘束されてしまう。
「お前……ロロアを乗っ取ったな……!?」
さっきから感じてた違和感の正体。
禍々しい気配に、他の皆に感じた懐かしさのない魂。
絶対逃げられる筈のない護送車から消えたロロア。
禁術として封じられていた魂移しの魔法だ。
「あれだけ僕を使っておきながら結局ジュリエラを死なせたって僕を処刑した奴らに復讐する為にね」
今のユーステル領を管理するのはアーバインの関係者で、結局ユーステルの王族は全員が戦死か処刑されたって事だ。
「復讐は終わったけど、そしたらつまらなくなってさ」
横目で結界に阻まれるネイビスを見る。
確かにロランドは魔法の才能が兄弟一だった。ドラゴンを1人で倒せるネイビスですら結界を破るのに苦戦するくらいに。
――あの戦争で一緒に戦ってくれてたら勝てたかも知れないくらいに。いや、ジュリエラを失ったと思った時点で俺に生きる気力はなかったから無理だったかも知れないけど。
全身木の根でぐるぐる巻きにされてる俺の頬を撫でるロランドのうっとりした顔に怖気が走る。
「でもこの世界は廻ってる。いつかきっと兄さんが戻ってくると思って待ってたんだよ」
バリン、と結界に入ったヒビに忌々しそうな顔を向けて、でもまた俺に向けた顔は恍惚としてた。
「本当は今回も兄さんの恋人を奪ってやろうと思ってたんだけど、僕はジュリエラの聖人ぶってる所も嫌いだったんだよね。だから今2人が一緒にいてくれて本当に嬉しいよ」
寄せられる唇が気持ち悪くて唯一動く足で腹を蹴り上げるけど、まるで子供を相手してるみたいに簡単にいなされてしまう。
「ロロアはどうした」
「ああ、家族に見捨てられたのがよっぽどショックだったみたいだね。簡単にこの体から弾け飛んじゃった。丁度良かったんじゃない?こいつ指名手配犯だったんでしょ?」
ロロアのしてきた事は到底許される事じゃないけど、でも個人が勝手に裁いて良い事じゃないし、まして魂が弾け飛んだって事は二度と転生出来ないって事だ。
「あれ、怒ったの?あいつに襲われそうになってたのに?」
顔を寄せてくるロランドから必死で顔を背けるけど、片手でぐい、っと正面を向かされてしまう。
「あんなすぐバレる場所で襲うなんてバカだよねぇ」
「……まさかお前が何かしたのか」
「ん?ふふ、ちょっとだけね。理性の強い人だったらかからない魔法だよ?あんな簡単にかかっちゃうなんてよっぽど兄さんを犯したかったんだね。――でも気持ちはわかるなぁ。前の兄さんは周りを使って心を折ってやりたかったけど、今の兄さんなら僕も犯してやりたい」
その瞬間目の前に業火が飛んできて正直クソビビったけど、木の根が解けて落下する俺をネイビスが受け止めてくれた事で結界が破られた事を知る。
流石ネイビス!この短時間で良く結界を破ってくれた!ありがとう!
「禁術の所為で死ねなくなってつまんなかったんだけど、やっと役者が揃ってくれたみたいで嬉しいな。ねえ兄さん、今度は誰から殺そうか。殺さないでって僕に股開いてくれるなら殺さないであげるからよく考えて?――また来るね」
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