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新たなスタイル
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あれから1か月。俺は新たな戦い方のスタイルを獲得した。
そう。うっかり剣を持ってるつもりになるなら杖を剣にしたら良いじゃないか、と。って言っても今までみたいに杖を杖のままで振り回すんじゃなく、杖に風魔法で斬属性をつけて、身体強化で筋力のなさをカバーする。今までそんな結論に達しなかったのはフランツもイツカも身体強化が出来なかったからだ。当然俺もそんな知識持ってなかったし。
でもその特訓が血反吐出るんじゃないかってくらいきつかったんだけどな……!
身体強化ってそもそも自分の基礎能力を魔法で高めるって事だから、失敗したら当然体内で魔力爆発、って事になってそりゃあもう……死ぬかと思う目に遭うってわけで。
外に向けて起こる魔力暴走は発熱みたいな形で表れたり、もっと大きな魔力だったら他人から抑えてもらわないといけないけど、自分の体内で爆発する魔力は自分が痛いだけだ。
そこはSクラス冒険者のネイビス。ハイポーションSなんて高額な物を買い込んで、俺の足が破裂しようが内臓が破裂しようがお構いなしに治しては再開、治しては再開、の繰り返し。鬼スパルタだった。
正直お前本当に俺の事好きなの?本当は殺しに来たんじゃないの?って思いもしたわけですが。
「斬れたぁ……!」
俺は地面にどぉん……と倒れ黒い煙になって消えるマッドベアに感嘆の声を上げた。
「上出来だ」
頭を撫でる大きな手の平はもはや俺の中で馴染になりつつある。
殺す気か、とも思ったけど出来た時はこうやっていちいち頭を撫でて褒めてくれるのがネイビスのやり方だった。最初は子供扱いか!って思ってたんだけど段々とその手が心地良く感じるようになるって……なんか絆されてる感半端ないけど。
だけどその微笑みにちょっと頬が赤くなってしまう自分がいるのも事実。顔が良いってずるい。
「おら、いちゃついてないで先行くぞ」
ギルドマスターのセリフにいちゃついてない!と叫ぶのをグッとこらえたのは、まだ周りに魔物がいるかも知れないからだ。
中部と深部の間くらいにいる筈の魔物の、浅部への出没が増えて来てる事からギルドはやっぱり赤目はいるって判断したらしく今も捜索は続いている。
いつまたサンダードラゴンとか他のドラゴンが来ても良いようにアイテムや装備はきっちり揃えた冒険者達は10チームになった。1パーティー大体4人として4パーティー1チームだから簡単に計算して40人程度。ランクはA~Bが主で、Cランク辺りもいるだろうけどEは多分俺だけ、Sはネイビスとギルドマスターだけだろう。
浅部3チーム、中部3チーム、深部4チームで深部の4チームは一番危険って事でギルドマスターとネイビスがいる。ただ深部にいるサンダードラゴンが中部に出て来たりしてるからどこの層が安全、とかはあんまりないかもな。
「デュナ、見違えるくらい強くなったね」
「ロロア!」
今夜の野営地に着いてテントをたてたり、魔物避けの香を範囲計算しながら焚いたりとそれぞれが動く中、炊き出し担当になった俺に話しかけてきたのは留守番の時暇だからって採取に出てた俺と良く一緒に依頼を受けてたロロアだった。
オレンジの髪と緑の目がミカンを想像させて見ると腹が減ってしまうから困るけど、俺みたいな低ランク冒険者にも優しい良い奴だ。
「ネイビスが色々教えてくれたんだ」
何でも出てくるマジックバックからバケツを取り出して魔法で水を入れるとジャガイモの泥を落としていく。隣で同じように人参の皮むきを始めたロロアも炊き出し担当なんだろう。2人並んで他愛ない話をする。
「ネイビスってあの……デュナを狙ってるって噂の?」
「そ、そんな噂流れてるのか」
宿屋にいた冒険者達から流れた噂だろう。最近出会ってなかったロロアにまで言われるって事はこの街のギルドを利用する連中には知れ渡ってると思って良い。
それに家の修繕に来たおじさん達も何か生暖かい眼差ししてたし、もしかして街中に広がってないよな……?
「デュナは忘れられない恋人がいるんだよね?」
「あ~、うん……いると言うか……いたと言うか……」
もう見つかったと言うか。
ちょっと言い淀む俺にロロアが心配そうな目を向けた。
「もしかして無理矢理言い寄られてるの?」
「え!?違う違う!」
別にネイビスはあれ以来特に何かしらアクションを起こしてくるわけでもなく、だからと言って俺に無関心な素振りもなく、なんて言うんだろう。押しては引いて、みたいな絶妙な感じなんだ。子犬みたいになる時もあれば特訓の時は狂犬みたいだったし、厳しくしたかと思えば優しく労ってくれたりする。
しかも俺がやっぱ夢だったかも、と思う頃にす、って腰に手を回して「忘れてないよな?」って言ってきたり、ど直球に「俺お前のそういうとこ好き」って言われたり。ちなみにその発言が衝撃過ぎてなんでそう言われたかは忘れた。だからイツカに鳥頭とか言われるんだ。でもそれくらい破壊力すごかったから仕方ないだろ!
カァ、っと赤くなる頬にジャガイモ洗いで冷えた手を当てて冷まそうとしてたら
「デュナに先に目をつけたのは僕だったのに」
ロロアが何か呟いたんだけど俺の耳には丁度ネイビスの呼ぶ声が入って来たから、ロロアの呟きは届かなかった。
そう。うっかり剣を持ってるつもりになるなら杖を剣にしたら良いじゃないか、と。って言っても今までみたいに杖を杖のままで振り回すんじゃなく、杖に風魔法で斬属性をつけて、身体強化で筋力のなさをカバーする。今までそんな結論に達しなかったのはフランツもイツカも身体強化が出来なかったからだ。当然俺もそんな知識持ってなかったし。
でもその特訓が血反吐出るんじゃないかってくらいきつかったんだけどな……!
身体強化ってそもそも自分の基礎能力を魔法で高めるって事だから、失敗したら当然体内で魔力爆発、って事になってそりゃあもう……死ぬかと思う目に遭うってわけで。
外に向けて起こる魔力暴走は発熱みたいな形で表れたり、もっと大きな魔力だったら他人から抑えてもらわないといけないけど、自分の体内で爆発する魔力は自分が痛いだけだ。
そこはSクラス冒険者のネイビス。ハイポーションSなんて高額な物を買い込んで、俺の足が破裂しようが内臓が破裂しようがお構いなしに治しては再開、治しては再開、の繰り返し。鬼スパルタだった。
正直お前本当に俺の事好きなの?本当は殺しに来たんじゃないの?って思いもしたわけですが。
「斬れたぁ……!」
俺は地面にどぉん……と倒れ黒い煙になって消えるマッドベアに感嘆の声を上げた。
「上出来だ」
頭を撫でる大きな手の平はもはや俺の中で馴染になりつつある。
殺す気か、とも思ったけど出来た時はこうやっていちいち頭を撫でて褒めてくれるのがネイビスのやり方だった。最初は子供扱いか!って思ってたんだけど段々とその手が心地良く感じるようになるって……なんか絆されてる感半端ないけど。
だけどその微笑みにちょっと頬が赤くなってしまう自分がいるのも事実。顔が良いってずるい。
「おら、いちゃついてないで先行くぞ」
ギルドマスターのセリフにいちゃついてない!と叫ぶのをグッとこらえたのは、まだ周りに魔物がいるかも知れないからだ。
中部と深部の間くらいにいる筈の魔物の、浅部への出没が増えて来てる事からギルドはやっぱり赤目はいるって判断したらしく今も捜索は続いている。
いつまたサンダードラゴンとか他のドラゴンが来ても良いようにアイテムや装備はきっちり揃えた冒険者達は10チームになった。1パーティー大体4人として4パーティー1チームだから簡単に計算して40人程度。ランクはA~Bが主で、Cランク辺りもいるだろうけどEは多分俺だけ、Sはネイビスとギルドマスターだけだろう。
浅部3チーム、中部3チーム、深部4チームで深部の4チームは一番危険って事でギルドマスターとネイビスがいる。ただ深部にいるサンダードラゴンが中部に出て来たりしてるからどこの層が安全、とかはあんまりないかもな。
「デュナ、見違えるくらい強くなったね」
「ロロア!」
今夜の野営地に着いてテントをたてたり、魔物避けの香を範囲計算しながら焚いたりとそれぞれが動く中、炊き出し担当になった俺に話しかけてきたのは留守番の時暇だからって採取に出てた俺と良く一緒に依頼を受けてたロロアだった。
オレンジの髪と緑の目がミカンを想像させて見ると腹が減ってしまうから困るけど、俺みたいな低ランク冒険者にも優しい良い奴だ。
「ネイビスが色々教えてくれたんだ」
何でも出てくるマジックバックからバケツを取り出して魔法で水を入れるとジャガイモの泥を落としていく。隣で同じように人参の皮むきを始めたロロアも炊き出し担当なんだろう。2人並んで他愛ない話をする。
「ネイビスってあの……デュナを狙ってるって噂の?」
「そ、そんな噂流れてるのか」
宿屋にいた冒険者達から流れた噂だろう。最近出会ってなかったロロアにまで言われるって事はこの街のギルドを利用する連中には知れ渡ってると思って良い。
それに家の修繕に来たおじさん達も何か生暖かい眼差ししてたし、もしかして街中に広がってないよな……?
「デュナは忘れられない恋人がいるんだよね?」
「あ~、うん……いると言うか……いたと言うか……」
もう見つかったと言うか。
ちょっと言い淀む俺にロロアが心配そうな目を向けた。
「もしかして無理矢理言い寄られてるの?」
「え!?違う違う!」
別にネイビスはあれ以来特に何かしらアクションを起こしてくるわけでもなく、だからと言って俺に無関心な素振りもなく、なんて言うんだろう。押しては引いて、みたいな絶妙な感じなんだ。子犬みたいになる時もあれば特訓の時は狂犬みたいだったし、厳しくしたかと思えば優しく労ってくれたりする。
しかも俺がやっぱ夢だったかも、と思う頃にす、って腰に手を回して「忘れてないよな?」って言ってきたり、ど直球に「俺お前のそういうとこ好き」って言われたり。ちなみにその発言が衝撃過ぎてなんでそう言われたかは忘れた。だからイツカに鳥頭とか言われるんだ。でもそれくらい破壊力すごかったから仕方ないだろ!
カァ、っと赤くなる頬にジャガイモ洗いで冷えた手を当てて冷まそうとしてたら
「デュナに先に目をつけたのは僕だったのに」
ロロアが何か呟いたんだけど俺の耳には丁度ネイビスの呼ぶ声が入って来たから、ロロアの呟きは届かなかった。
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