10 / 27
家を買った
しおりを挟む
あの後ネイビスは本当に1人でフレアドラゴンを狩って借金を返し終えた。凄すぎる。
で、俺達はというと今古い家具を捨てて新しい家具を搬入してもらっている所である。何故なら家を買ったからだ。
住む家は当然あの日記があった元幽霊屋敷。日記の話をしたら2人共えらく興味を持って、だったら一度その家に住んでみよう、って事になったんだ。どっちにしたって赤目退治が終わらないとギルドマスターがフランツ達を放してくれるはずないし。
古臭さくて修繕が必要なのと、元幽霊屋敷だったのと、掃除を完了できたのが俺達だけだった、って理由で相場の三分の一程度の格安で手に入れた屋敷は部屋数も多く俺達4人だけで住むには少し勿体ない。
まあその内赤目退治が終わったらまたよその街に移るかもしれないし、その時はまた売りに出すだけだ。
ただ格安なのは良いんだけど、修繕とゴミ処理は自分達でやってね、って事で俺はひたすら外に投げ出される古い椅子達を魔法で燃やし続けている。
う~ん、こういう時は何の間違いもなく魔法発動出来るのになぁ。どんどん積み上がる消し炭をさらに綺麗に消し去ってため息を1つつく。
今日もフランツとイツカは赤目探しだ。ギルドマスターはネイビスも連れて行きたがってたけど、イツカに断られて渋々納得してた。
理由は俺のこの見た目なんだよな~。俺を付け狙う変態がいるのも事実だ。一応もうイツカにボコられた上で捕まったから大丈夫だって思うんだけど。
キンバリーの時からイツカは少し心配性なんだ。俺だってね、やる時はやりますよ。あの変態野郎に襲われかけた時も咄嗟に杖で殴っちゃったけど、その後股蹴り上げたのも俺だよ。それ以上にイツカはボコボコにしてて流石に止めたけど。
フランツはあんまり感じないけど、やっぱりイツカにも100年前の記憶に引きずられてる所は有ると思うんだ。キンバリーはジュリエラが来るまでロメリオの護衛もしてたし。後は今世の俺が何故かこんな弱々しい見た目をしてるのも問題なんだろうけど。
そう思いながら振り向けば職人と一緒になって屋敷の修繕をしてるネイビスが視界に入る。防具に包まれてた下の体はやっぱり芸術品みたいに綺麗な筋肉がついていて、何だったらロメリオよりも体が出来上がってるかも知れない。
今日の職人みたいな袖のない服を着てると腕の筋肉の盛り上がりも、胸の筋肉の付き具合も良くわかる。頭にタオルを巻いてるけど頬を流れる汗が謎の色気を出してきてうぐ、と変な声が出た。不意に宿屋での事を思い出したからだ。
――俺が相手に選ぶとしたらコイツしかいねぇから
かぁ、と頬に熱が集まるのがわかった。
俺だってネイビスに会うまではそう思ってたよ。相手はジュリエラしかいないって。でもさぁ、でもさぁ……!
職人に交じって木を担ぐその姿が何か無駄にキラキラしてる。幽霊屋敷に住人が?って不思議に思ったらしい近隣住民がネイビスのキラキラぶりにきゃあきゃあ言いながら集まって来てるし。
俺は杖の先にある薄青い魔石に映る自分の顔を見た。魔石は角ばってるから勿論変な顔にしかならないんだけど、薄ピンクの髪は何だか俺の思うかっこいい男の色ではない。自然と色付く頬と唇、バサバサの睫毛は女性陣から羨ましがられるけど俺はそんな物より男らしい筋肉が欲しかった。
そしたらネイビスに“下”になれなんて……。
「ぎゃーー!!やめやめ!!そんなの絶対ダメ!信じない!!」
かと言ってネイビスを組み敷く未来も信じられないんだけど。
となると答えはおのずと狭まってくる。このまま過去に取りつかれてジュリエラを思いながら独り身でいるか、ジュリエラの魂を持つ今世のネイビスと添い遂げるか、全く100年前とは関係のない相手を選ぶか。
ん?そういやそうだな。何もネイビスだけが選択肢じゃないじゃん。確かにジュリエラにこだわってここまで来たけど、ジュリエラが今世で元気過ぎるくらい元気に過ごしてるのがわかったんだから別の誰かとくっついたって良いよな。
たまたまユマニエルとキンバリーが前世通りくっついてたから俺も、って思っちゃったけど。
「何を1人で騒いでんだ」
「ぎゃーー!!?」
ぴと、って顔に冷たい物を押し付けられた驚きと、さっきまで離れた場所にいた筈のネイビスの声がした事への驚きで2倍驚いた悲鳴を響かせる。職人さん達が「今日もデュナは元気だな~」なんて微笑まし気に見てくるのがいたたまれない。
「ちょっと休憩にするんだと」
「きゅ、休憩!そ、そ、そうだな!ずっと働き詰めだもんな!」
何でか謎に浮気した気分になって挙動不審になる俺を不思議そうに見つめながら、用意してあった飲み物を渡してくれる。
「日陰、行くぞ」
「ひぎゃ……!」
今度の悲鳴は何とか飲み込んだ。
だって急に俺の頬に触るから!!びっくりするってもんだろう!何!?って訊いたら、ちょっと日焼けしてる、って。帽子でも被っておくべきだったか……。
しまったな~、なんて思いながら日陰に入ると同時にネイビスの両手で頬を包まれる。
「ぎゃーー!!」
今度は飲み込めなかった悲鳴に一瞬顔を顰めたネイビスだったけど両手は離さない。一気に頬に熱がぐわぁぁと集まってしまう。
一体何なんだよ!?職人さん達は「おやおや」なんてやっぱり微笑まし気に見て来るし!
あれ、でも……頬がひんやりして気持ち良い。恥ずかしさに熱が上がってるから尚更だ。思わず黙ってされるがままになってたら、にやりと笑ったネイビスに
「そんな擦り寄るくらい、気持ち良い?」
って耳元でいつもより低音ボイスにして囁かれたから
「良いわけあるかーー!!」
って叫んでその手を振り払ったのだった。
で、俺達はというと今古い家具を捨てて新しい家具を搬入してもらっている所である。何故なら家を買ったからだ。
住む家は当然あの日記があった元幽霊屋敷。日記の話をしたら2人共えらく興味を持って、だったら一度その家に住んでみよう、って事になったんだ。どっちにしたって赤目退治が終わらないとギルドマスターがフランツ達を放してくれるはずないし。
古臭さくて修繕が必要なのと、元幽霊屋敷だったのと、掃除を完了できたのが俺達だけだった、って理由で相場の三分の一程度の格安で手に入れた屋敷は部屋数も多く俺達4人だけで住むには少し勿体ない。
まあその内赤目退治が終わったらまたよその街に移るかもしれないし、その時はまた売りに出すだけだ。
ただ格安なのは良いんだけど、修繕とゴミ処理は自分達でやってね、って事で俺はひたすら外に投げ出される古い椅子達を魔法で燃やし続けている。
う~ん、こういう時は何の間違いもなく魔法発動出来るのになぁ。どんどん積み上がる消し炭をさらに綺麗に消し去ってため息を1つつく。
今日もフランツとイツカは赤目探しだ。ギルドマスターはネイビスも連れて行きたがってたけど、イツカに断られて渋々納得してた。
理由は俺のこの見た目なんだよな~。俺を付け狙う変態がいるのも事実だ。一応もうイツカにボコられた上で捕まったから大丈夫だって思うんだけど。
キンバリーの時からイツカは少し心配性なんだ。俺だってね、やる時はやりますよ。あの変態野郎に襲われかけた時も咄嗟に杖で殴っちゃったけど、その後股蹴り上げたのも俺だよ。それ以上にイツカはボコボコにしてて流石に止めたけど。
フランツはあんまり感じないけど、やっぱりイツカにも100年前の記憶に引きずられてる所は有ると思うんだ。キンバリーはジュリエラが来るまでロメリオの護衛もしてたし。後は今世の俺が何故かこんな弱々しい見た目をしてるのも問題なんだろうけど。
そう思いながら振り向けば職人と一緒になって屋敷の修繕をしてるネイビスが視界に入る。防具に包まれてた下の体はやっぱり芸術品みたいに綺麗な筋肉がついていて、何だったらロメリオよりも体が出来上がってるかも知れない。
今日の職人みたいな袖のない服を着てると腕の筋肉の盛り上がりも、胸の筋肉の付き具合も良くわかる。頭にタオルを巻いてるけど頬を流れる汗が謎の色気を出してきてうぐ、と変な声が出た。不意に宿屋での事を思い出したからだ。
――俺が相手に選ぶとしたらコイツしかいねぇから
かぁ、と頬に熱が集まるのがわかった。
俺だってネイビスに会うまではそう思ってたよ。相手はジュリエラしかいないって。でもさぁ、でもさぁ……!
職人に交じって木を担ぐその姿が何か無駄にキラキラしてる。幽霊屋敷に住人が?って不思議に思ったらしい近隣住民がネイビスのキラキラぶりにきゃあきゃあ言いながら集まって来てるし。
俺は杖の先にある薄青い魔石に映る自分の顔を見た。魔石は角ばってるから勿論変な顔にしかならないんだけど、薄ピンクの髪は何だか俺の思うかっこいい男の色ではない。自然と色付く頬と唇、バサバサの睫毛は女性陣から羨ましがられるけど俺はそんな物より男らしい筋肉が欲しかった。
そしたらネイビスに“下”になれなんて……。
「ぎゃーー!!やめやめ!!そんなの絶対ダメ!信じない!!」
かと言ってネイビスを組み敷く未来も信じられないんだけど。
となると答えはおのずと狭まってくる。このまま過去に取りつかれてジュリエラを思いながら独り身でいるか、ジュリエラの魂を持つ今世のネイビスと添い遂げるか、全く100年前とは関係のない相手を選ぶか。
ん?そういやそうだな。何もネイビスだけが選択肢じゃないじゃん。確かにジュリエラにこだわってここまで来たけど、ジュリエラが今世で元気過ぎるくらい元気に過ごしてるのがわかったんだから別の誰かとくっついたって良いよな。
たまたまユマニエルとキンバリーが前世通りくっついてたから俺も、って思っちゃったけど。
「何を1人で騒いでんだ」
「ぎゃーー!!?」
ぴと、って顔に冷たい物を押し付けられた驚きと、さっきまで離れた場所にいた筈のネイビスの声がした事への驚きで2倍驚いた悲鳴を響かせる。職人さん達が「今日もデュナは元気だな~」なんて微笑まし気に見てくるのがいたたまれない。
「ちょっと休憩にするんだと」
「きゅ、休憩!そ、そ、そうだな!ずっと働き詰めだもんな!」
何でか謎に浮気した気分になって挙動不審になる俺を不思議そうに見つめながら、用意してあった飲み物を渡してくれる。
「日陰、行くぞ」
「ひぎゃ……!」
今度の悲鳴は何とか飲み込んだ。
だって急に俺の頬に触るから!!びっくりするってもんだろう!何!?って訊いたら、ちょっと日焼けしてる、って。帽子でも被っておくべきだったか……。
しまったな~、なんて思いながら日陰に入ると同時にネイビスの両手で頬を包まれる。
「ぎゃーー!!」
今度は飲み込めなかった悲鳴に一瞬顔を顰めたネイビスだったけど両手は離さない。一気に頬に熱がぐわぁぁと集まってしまう。
一体何なんだよ!?職人さん達は「おやおや」なんてやっぱり微笑まし気に見て来るし!
あれ、でも……頬がひんやりして気持ち良い。恥ずかしさに熱が上がってるから尚更だ。思わず黙ってされるがままになってたら、にやりと笑ったネイビスに
「そんな擦り寄るくらい、気持ち良い?」
って耳元でいつもより低音ボイスにして囁かれたから
「良いわけあるかーー!!」
って叫んでその手を振り払ったのだった。
25
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる