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「こんばんは」
目の前に停まった黒塗り高級車の窓が開き初老の男に穏やかに声をかけられて、可愛らしいマスコットが描かれたヘッドホンを耳から外した少年が顔を上げた。
触り心地が良く、撫で付けただけでも素直に整う茶色の髪、幼さを残す大きめの瞳は黒曜のように美しく、口元を彩るのは人懐っこい笑顔。均整の取れた、しかし未だ未完成な体つき、足は長く腰の位置は高い。
ただ立っているだけでも人目を引く容貌の少年はその笑顔のまま
「こんばんは!隣乗っていい?」
駆け寄って中を覗き込むと、運転席でハンドルを握る男は、もちろん、と頷き彼の為に助手席のドアを開ける。へへ、と嬉しげに笑った少年を乗せ人通りの少ないコンビニに停まった場違いな高級車は走り出した。
「先にお店で何か食べるかい?」
「んー……ルームサービスがいいなぁ~」
「いいとも。何でも頼みなさい」
「やった!」
もうお腹ペコペコなんだ、と少年は屈託なく笑う。その様が愛らしいと男は顔を綻ばせ、車は夜の町を走り抜けた。
「御馳走様でした!」
きちんと手を合わせて元気一杯に言われた男はくすくすと笑いを溢し、彼の口元をチョイ、と指先で拭う。
「クリームがついていたよ?」
「え、わ、ありがとう」
「どういたしまして。……さて、それじゃあショウタ君、どうしようか?」
指先のクリームを舐めて訊けばショウタと呼ばれた少年は数瞬眉を寄せ迷い、それから立ち上がって言った。
「先に風呂かなー。今日体育あったしさ」
「別に私は構わないが」
「オレが構うの!」
顔立ちはどちらかと言えば凛々しいのに、彼の仕種はそれを裏切る。もう、と可愛らしく頬を膨らませる少年の頭を撫でそのまま、まるでダンスにでも誘うかのように浴室までエスコートした。
羞恥も戸惑いもなく服を脱ぐショウタの少年らしい健康的な肌、まだ未完成ながらバランスの取れた体を舐めるように眺めているうちに浅ましい欲望に小さく火が灯った。
「ショウタ君」
今にも浴室へ突進しかけていた元気な少年の腕を掴みくるり、と反転させ腕に閉じ込める。既に男も服を脱いでおり晒された素肌同士が触れあった。
「ダメだよ、おじさん。今日は風呂の後~!」
だから今はこれで我慢して、と軽く触れるだけのキス。見下ろしたショウタはいたずらが成功した子供のような顔で笑っている。そんなことをされたら余計煽られるだけだというのに、と苦笑し仕方なく浴室の扉を開け二人で幼子と父親のような戯れで誤魔化しながら体を洗い、浴槽へ浸かる頃には思春期の息子と父親の会話になった。
学校はどうなんだ、んーまあまあ?、友達とはうまくやれてるのか、それなりー、言い合っている内に二人してくすくすと笑い出す。これは風呂に入るときのいつもの遊びだ。
「もうそろそろ、ね?」
“親子”の時間は終わり、その合図にショウタが男の首にするりと腕を回せば男はショウタの腰に腕を回し浮力で軽い体をぐ、と引き寄せる。
「今日はここで?」
「オレ、ベッドでもシたいな」
「時間までたっぷりしてあげよう」
送ってあげるから、と毎回ごねる男をいつものごとくやんわり拒み、何とか終電間際の電車に滑り込めて一息つく。間に合わなかったらあのコンビニまで送ってもらいそこから徒歩になってしまう所だった。そうなったら朝までに帰れる自信がない。
何度も貫かれ何度も絶頂を迎えた体は怠く、本当ならあのまま布団の上で眠ってしまいたかったけれどそうはいかないのだ。少年は無造作にポケットに突っ込んでいたお金を財布の中へしまい窓から外を眺めた。
(10万もくれるなんてあの人ホントに羽振りいいよなぁ……)
初めての相手でもある彼が自分の体のどこにそんな価値を見出だしているのかは知らないが、それを稼ぎとしている少年としてはいい金ヅル、一番の上客である。
他の人は2万~3万、それ以下はお断りが基本だけれど、本当に切羽詰まっている時なら多少安くても仕方なしに買われる事もある。
ガタン、ゴトン、と音をたてる電車の揺れが心地よく、ついうとうとしてしまうが折角稼いだお金を盗まれでもしたら事だと、そのお金の使い道を思い浮かべた。
(家賃分はまだ大丈夫だし、学費も何とかなってるし……たまには贅沢してもいいかも)
贅沢、とは言え所詮はファミレスのちょっと高めのヤツくらいしか無理だが。それでもふ、と浮かべた笑顔はまるで汚れなど知らない無垢な子供のようだった。
目の前に停まった黒塗り高級車の窓が開き初老の男に穏やかに声をかけられて、可愛らしいマスコットが描かれたヘッドホンを耳から外した少年が顔を上げた。
触り心地が良く、撫で付けただけでも素直に整う茶色の髪、幼さを残す大きめの瞳は黒曜のように美しく、口元を彩るのは人懐っこい笑顔。均整の取れた、しかし未だ未完成な体つき、足は長く腰の位置は高い。
ただ立っているだけでも人目を引く容貌の少年はその笑顔のまま
「こんばんは!隣乗っていい?」
駆け寄って中を覗き込むと、運転席でハンドルを握る男は、もちろん、と頷き彼の為に助手席のドアを開ける。へへ、と嬉しげに笑った少年を乗せ人通りの少ないコンビニに停まった場違いな高級車は走り出した。
「先にお店で何か食べるかい?」
「んー……ルームサービスがいいなぁ~」
「いいとも。何でも頼みなさい」
「やった!」
もうお腹ペコペコなんだ、と少年は屈託なく笑う。その様が愛らしいと男は顔を綻ばせ、車は夜の町を走り抜けた。
「御馳走様でした!」
きちんと手を合わせて元気一杯に言われた男はくすくすと笑いを溢し、彼の口元をチョイ、と指先で拭う。
「クリームがついていたよ?」
「え、わ、ありがとう」
「どういたしまして。……さて、それじゃあショウタ君、どうしようか?」
指先のクリームを舐めて訊けばショウタと呼ばれた少年は数瞬眉を寄せ迷い、それから立ち上がって言った。
「先に風呂かなー。今日体育あったしさ」
「別に私は構わないが」
「オレが構うの!」
顔立ちはどちらかと言えば凛々しいのに、彼の仕種はそれを裏切る。もう、と可愛らしく頬を膨らませる少年の頭を撫でそのまま、まるでダンスにでも誘うかのように浴室までエスコートした。
羞恥も戸惑いもなく服を脱ぐショウタの少年らしい健康的な肌、まだ未完成ながらバランスの取れた体を舐めるように眺めているうちに浅ましい欲望に小さく火が灯った。
「ショウタ君」
今にも浴室へ突進しかけていた元気な少年の腕を掴みくるり、と反転させ腕に閉じ込める。既に男も服を脱いでおり晒された素肌同士が触れあった。
「ダメだよ、おじさん。今日は風呂の後~!」
だから今はこれで我慢して、と軽く触れるだけのキス。見下ろしたショウタはいたずらが成功した子供のような顔で笑っている。そんなことをされたら余計煽られるだけだというのに、と苦笑し仕方なく浴室の扉を開け二人で幼子と父親のような戯れで誤魔化しながら体を洗い、浴槽へ浸かる頃には思春期の息子と父親の会話になった。
学校はどうなんだ、んーまあまあ?、友達とはうまくやれてるのか、それなりー、言い合っている内に二人してくすくすと笑い出す。これは風呂に入るときのいつもの遊びだ。
「もうそろそろ、ね?」
“親子”の時間は終わり、その合図にショウタが男の首にするりと腕を回せば男はショウタの腰に腕を回し浮力で軽い体をぐ、と引き寄せる。
「今日はここで?」
「オレ、ベッドでもシたいな」
「時間までたっぷりしてあげよう」
送ってあげるから、と毎回ごねる男をいつものごとくやんわり拒み、何とか終電間際の電車に滑り込めて一息つく。間に合わなかったらあのコンビニまで送ってもらいそこから徒歩になってしまう所だった。そうなったら朝までに帰れる自信がない。
何度も貫かれ何度も絶頂を迎えた体は怠く、本当ならあのまま布団の上で眠ってしまいたかったけれどそうはいかないのだ。少年は無造作にポケットに突っ込んでいたお金を財布の中へしまい窓から外を眺めた。
(10万もくれるなんてあの人ホントに羽振りいいよなぁ……)
初めての相手でもある彼が自分の体のどこにそんな価値を見出だしているのかは知らないが、それを稼ぎとしている少年としてはいい金ヅル、一番の上客である。
他の人は2万~3万、それ以下はお断りが基本だけれど、本当に切羽詰まっている時なら多少安くても仕方なしに買われる事もある。
ガタン、ゴトン、と音をたてる電車の揺れが心地よく、ついうとうとしてしまうが折角稼いだお金を盗まれでもしたら事だと、そのお金の使い道を思い浮かべた。
(家賃分はまだ大丈夫だし、学費も何とかなってるし……たまには贅沢してもいいかも)
贅沢、とは言え所詮はファミレスのちょっと高めのヤツくらいしか無理だが。それでもふ、と浮かべた笑顔はまるで汚れなど知らない無垢な子供のようだった。
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