【本編完結】農民と浄化の神子を並べてはいけない

ナナメ

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第三章 神子

今は幸せです【本編完結】

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リュンヌが生まれた、冬が間近なあの日。パーピュアと王宮侍医が出産の為にうちに来てくれた。
というかこう…実際に取り上げてくれるのは王宮侍医だったけど補助要員できた顔見知りのパーピュアにあれやこれや見られる羞恥は半端なかったな…。まあ、産まれそう!ってなってから産まれるまでの間はそんな羞恥を感じてる暇なかったけど。

産まれた子供に本来ついてる筈の器官がない、とあたふたする王宮侍医から子を受け取って確認したパーピュアは物凄い驚愕の顔をしてた。もう漫画だったら雷落ちてそうなくらいびっくりしてた。だから不安になって何か問題があったのかくたびれ果ててぐったりしながら訊いたんだ。

『女の子だ…』

『へ…?』

『女の子だ』

正直その時に転生者のパーピュアがいてくれて良かった。じゃなきゃぐったりした俺と混乱してる王宮侍医さんであたふたするしかなかったもんな。パーピュアがいたからって原因がわかったわけじゃないけど、パーピュアが冷静だったおかげで王宮侍医さんが我に返ってくれたから産後の処置なしで放置されずに済んだし。

リュンヌが女の子で生まれた原因がわかったのはその日の夢の中。久々に神様に呼ばれてあの泉にいた俺に神様は琴音が世界を巡る魂に戻った事を教えてくれて、それから言った。

『悪しき者の呪いは解かれました』

何の話だ、って訊いたら。
そもそもヒト族から女の子がいなくなったのは悪しき者が人が繁栄しないように呪いをかけたからだった。だから神様は対抗策として辛うじて残ってた力で女の子がいなくても子孫がつくれるように男をイオとメムに分けたんだそうだ。
その呪いが解けたって事は。

『じゃあこれから前の世界みたいに男女しかいなくなる?』

そうなったら今メムの人達はどうなるんだろう。

『いいえ。男女もイオとメムも私の力。これからは男性体、女性体どちらもイオとメムで分かれるようになるでしょう』

どゆこと?ってなって詳しく聞いたら、最初に男と女っていう生き物をこの世界に生み出したのは神様。悪しき者の横槍が入って女性が消え、苦肉の策として男性の性別を更に分けた。呪いが解けた今、呪われる前と後の遺伝子が交じり合ってどちらも存在するようになるらしい。
ややこし過ぎて俺にはさっぱりわからなかったけど、つまり男の俺がメムとして子供を産めるように女のイオが男や女のメムを妊娠させたり出来るって事だよな。出生率めちゃくちゃ上がりそうだな…。

リュンヌが生まれた時も大騒ぎになったけど、それから他の家でも女の子が生まれるようになり、困った王家はナフィーリアに助力を求めた。獣人には女の人がいたから俺達にはわからない事を教えて貰おうと思って。当時は皆産まれたての赤ちゃんばっかりだったけど、生理とかあるなら俺達じゃ教えられないし、何より体の作りが全く違うからな…。女の子のイオは…ひとまず一緒に教育してもらって自分達が違和感を覚えるようになったら本人達の希望に合わせた教育をしようって事になった。

そんなわけであの戦いから7年経った今現在でもナフィーリアとの関係は良好だ。リュンヌはもうすぐメイディが建てた女学校に通う事になってる。ナフィーリアから教師を呼んで女性のあれこれやマナーを教わる為に建てた学校で、望めば平民でも通えるようになってる。ここで学んだ子達が将来後から産まれた子供達に知識を引き継いでいってくれるだろう。

「…リュンヌも来年から学校かぁ…!」

「姉様は母様ににてぼんやりしてるから、しんぱいです」

何だか感慨深さと寂しさを感じて愛娘をむぎゅう、と抱き締めてたら。二子のエトワールが大人びた顔で言った。君、人生何度目かな?我が子ながら大人っぽ過ぎない?4歳って言ったらまだまだ甘えたい盛りのいたずらっ子じゃない?初めてのおつかいでドキドキハラハラする頃じゃない?

「大丈夫よ。周りは皆私と同じなんでしょう?お友達沢山作ってくるわ」

「変なやつにだまされないでくださいよ」

まだ若干舌足らずに大人びた事を言うエトワールをローゼンが抱き上げる。うんうん、そっくりで可愛いなぁ。というかエトワールの心配性はきっとローゼン譲りだな。リュンヌの能天気は一体誰に似たのやら…。確かにちょっと心配かも。リュンヌはディアに似てるから、親の欲目抜きにしても将来間違いなく美少女になるだろうし。

「送り迎えは俺達がするし、心配ならお前も一緒に行こうか」

「ローゼン父様、僕も姉様とおなじ学校にかよいたいです」

「あの学校は女の子の学校だから一緒には無理だ」

きっとその内イオとメムみたいに男女の共学校とか出来るんだろうけど…。

「学校はついていけないけど、通学の時はエルがリュンヌを守ってやってな」

ローゼンの腕の中の小さな頭を撫でると、頬を嬉しそうに赤くしながら「僕はもう母様にいいこいいこしてもらうほど子供じゃありません」なんてぷい、ってするのがもう食べちゃいたいくらい可愛いんだよぉぉぉぉ!!!

「ね~、かあさま!フェランとピュルテは?おんなじがっこう?」

ティエの両腕にぶら下がりながら三子のフェランが言う。毛先の紫は若干ローゼンの遺伝子入ってない?って思うけど猫みたいな身のこなしがティエそっくりだ。

「一緒じゃないわね~。ピュルテは姉様と同じよ」

ティエに言われて「え~」と二人揃って不服気にぶら下がった足を揺らす。そのまま逆上がりでもしそうな勢いだけど大丈夫か、ティエ…。
四子ピュルテも女の子。美人はディアの遺伝子が混ざるようになってるんだろうか…。前髪が一房だけ銀色なのはそういう事か?双子だけどフェランは猫みたいなツリ目なのに対し、ピュルテは目がくりくりしてて愛らしい顔をしてる。つがい達には俺そっくり、って言われて嬉しいけど平凡な俺と同じなのは目の色くらいだと思う。だってピュルテは子犬みたいに可愛いから!

今お腹にいる子の性別はわからない。でも例えどの性別だったとしても皆で愛してあげるから早く出ておいでね、と腹を撫でてたらその手に大きな手が重なった。

「痛むのか?」

「ううん。大丈夫だよ。ありがとうディア」

気が付いたらその手にさらに小さな手が重なって、次々別の手が重なっていく。

「はやくでてきてね、あかちゃん」

「僕いつにいさまになれる?」

ワイワイと賑やかな家族を見て、それからふと空を見上げた。

父さん、母さん。俺、家族が沢山増えました。
怖い事も辛い事も沢山あったけど、今は幸せです。未だに消えない神子の称号はいらんけどな!


     ~終~


■■■
この後は朝陽編などの番外編をちょこちょこ書いていく予定ですが、ひとまず完結にこぎつける事が出来ました。これも一重に読んでくださる皆様、励ましてくださった皆様のおかげです。本当にありがとうございました!
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