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第三章 神子

新たな道を

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あれから一週間経った。ディアは驚異の回復力ですでにベッドを降りて動き回ってて、未だに体力が完全に戻ってない俺は唖然とするしかない。
もちろん傷が塞がってるわけじゃないからまだ激しい運動は出来ないんだけど…なんでこうも回復力が違うかな…。ご飯食べる量とか関係あるんだろうか。怪我した翌日からモリモリ食ってたもんな…。

広い屋敷の中、他にも部屋があるのに俺の為にこの部屋に留まってくれてるディアは黙々と書類を片付け中だ。ローゼンも同じく。ティエは邪魔にならない位置で静かに素振りをしてて、音も立てずに動ける事が凄過ぎてずっと眺めてしまう。

___あの日から琴音が現れたとは聞かない。俺をナスティールで待つって言ってたし、もしかしたら来ないのかも知れない。だけど、俺の番を狙ってるみたいだから…まだ怖くて皆と離れたくない。俺の我儘なのはわかってるけど、また知らない所で誰かが怪我をしたら、って思うと怖いんだ。

「…っ」

ズキリ、と痛む下腹。ここには闇の紋があった。今は見えないけど、父さん達はずっとは抱えてられないって言ってた。俺が抱えてしまった負の感情は記憶と共に薄れてるけど、ただ預かってもらってるだけ。だからこれはいつか俺が解決しないといけない問題だ。

「ティエ…、そろそろ俺も護身術教えて」

2年前から少しづつ教わってはいたけど、元々のセンスのなさか実戦であんまり役に立った試しがない。ダティスハリアでだってほとんど役に立たなかった。皆のとこへ戻ってきてからは体力がなくてなってて立つだけで精一杯だったし、訓練の再開なんてもっての外だと却下されてたんだ。
だけどもう3食食べられるようになったし、すぐ疲れるけど目が覚めた直後よりマシだ。それにもう半月もしたら雪解けになる。雪が解けたらすぐナスティールに行って朝陽を助けないと。

「前に教えてあげたやつ、ちゃんと覚えてる?」

「うん」

「…ならまずそれやって、疲れなくなったら新しいのを教えてあげる」

ローゼンが何か言いたそうな顔をしてたけど、結局何も言わずに書類に目を落とす。ディアはただ黙って頷いてくれた。


 ◇


「…確かに、地下書庫の隠し部屋から該当文献が出てきた」

ナスダルとの一件で一度は半壊した王城だったが重要な物は厳重に保管されていた為に被害は免れていた。その地下書庫にはさらに隠し扉があり、開ければ小部屋があったという。

「神子コトネに禁術をかけ幽閉した事、アークオランが瘴気に飲まれた神子を封印した事、ナスティールを捨てて逃げた事…」

テューイリングはその文献をテーブルの上に置く。古びたそれは今にも崩れてしまいそうな様相をしていたけれど、読むことに支障はない。

禁術の方法、封印の仕方まで書かれたそれは間違いなく王家の印が押してある。

「確かにアークオランが行った事なんだろう」

「兄上…いえ、陛下。私達は同じ間違いをするわけにいかない」

全を守るのは王族としての責務。しかし全を守るには個もまた全の一つである事を思い出さなければいけない。

「我々はもう、神子を犠牲にする道を選んではいけないんです」


■■
メリークリスマス!クリスマスネタやりたかったけど時間がありませんでした…。

そして年末年始夜勤が立て続けに入っており、しばらく更新頻度が落ちます。申し訳ございません。
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