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第三章 神子
ただの夢だった?
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ハッと目を開けるとそこは変わらずさっきいた部屋の中で、俺の動きで起きたのかずっと起きてたのかわからないティエが俺の頭を撫でてくれた。
「魘されてたけど、大丈夫?」
「…ティエ…」
ぎゅっと抱き着くと
「ここにいるわ」
と抱き締め返してくれる。体はまだ熱くて寒いから熱は下がってないんだろう。だったら今見た夢は熱の所為?いや、それにしては妙にリアルだった。まだ心臓がドキドキいってる。
「…ティエ、俺と朝陽以外黒目黒髪の人っている?」
「え?」
どういう事?と首を傾げるティエは全く心当たりがなさそうだ。
それにあの人が言った事が本当なら…あの人が神子?でもそれならあの人に浄化を頼めば良かった話だろう。どうして俺が喚ばれないといけなかったんだ?
「神子って他にいる?」
「待って待って、スナオ。何の話をしてるの?」
「…夢、かなぁ?」
俺の額に手を当てて側の小さな容器に布を浸してまた額に当ててくれる。冷たくて気持ちがいい。その冷たさでちょっとだけ頭が冷えてティエの手を握った。たった今冷たい水に浸した手がこれまた気持ちよくてそのまま頬に当てる。
「…変な夢を見るんだ。もう何回も見てる夢」
「どんな夢?」
「雷が鳴る丘に第一騎士団がいて、…でもみんな死んじゃう夢」
「嫌な夢ね」
そう。すごく嫌な夢。一番最初に見たのは確かディアと町に出た時だったっけ?その後はブラッキル領を出た後だったかな。その時にはあの影に「早く堕ちておいで」みたいな事を言われた気がする。その後も2年間の旅の合間にたまに見た。毎回同じ事を言われて目が覚めてたから、今日みたいに会話をしたのは初めてだ。
「俺と同じ黒目黒髪の奴がいたんだ」
「アサヒじゃなく?」
「朝陽じゃなかった。全然知らない人。そいつが自分が神子だから俺は紛い物だって。丘で待ってる、って言うんだ」
ティエの眉間に皺が寄る。怒ってるのか考えてるのかわからない顔を見上げたらすぐ笑顔になって俺の鼻先にキスしてくれた。
俺の頬から離れた手がまた背中を優しく叩いたりさすったりしてくれる。こうされると途端に眠たくなっちゃうから、ティエの手から何か波動が出てるんじゃないかって疑った。そんなわけないけど、でもティエなら何か出してそう。
「でも本当にスナオとアサヒ以外の双黒はいない筈よ」
「…ただの、夢だったかな…」
うとうとする俺の背中を撫で続けてくれるティエの胸にすり寄った。せっかく乗せてくれた布が落ちちゃったけど、今は甘えたい。ティエも察したみたいで濡れた布を容器に戻して俺を抱き寄せてくれる。
「このタイミングで雷が鳴る場所の夢を見たなら、無関係じゃないかも知れないし本当にただの夢かも知れない。だから団長が戻ったら聞いてみましょ」
「信じてくれるの?」
ただの夢だって切り捨てるにはあまりにリアルだったそれを、俺自身夢なのか夢じゃない何かなのか判別がつかない。朝陽に雷が鳴るって言われたから見た夢だって判断されたらそこまでだったけど、ティエは簡単に切り捨てないでくれた。それが嬉しい。
「スナオの話は信じるわよ。それに…気になる事もあるし…でも今はもう少し寝ましょ」
「うん…」
頭がぼんやりしてて起きてるのもしんどくなってきたから言われた通り目を閉じる。次は怖い夢じゃないといいなぁ。出来ればモフモフに囲まれる夢とかさ。皆で畑耕したりして…ローゼンは麦わら帽子似合いそうだけど、ディアとティエは似合わなさそう。
そんな事考えながら寝たら、今度は羊の大群に出会う夢を見た。しかもあの羊毛ぎっちりな手触りじゃなくてモッフモフしたどっちかっていうと手触りのいい毛布みたいな…猫なら思わずモミモミこねたくなる、そんな感じの…。
◇
ふと寝ていた筈の朴が
「モフモフ…」
と呟いてさわさわと毛布を撫でているのに気付いた番達はその寝顔を見下ろした。しかし本人はぐっすりと眠っている。紅潮した頬はまだその熱が下がっていない事を伝えているがパーピュアから預かった薬は本人が起きてからだ。番達は微笑んでから朴を起こさないようソファーへ移動した。
「…それで、その夢の相手はスナオに“紛い物”と言ったと」
「はい。確かナピリアート・ブラッキルもそのような事を言っていたと記憶していたので」
紛い物は死ね、という叫びはパルティエータを含めあの場にいた者は全員聞いている。だが朴の浄化を目の当たりにした誰もがその力が紛い物ではない事を知っている。
「本人は気にしていないか忘れたのでは、とパーピュアは言っていたが…無意識下で覚えていたのかも知れん」
「ではやはりただの夢だと?」
首を傾げるローゼンにディカイアスは考え込む間を開けてから言った。
「いや…雷が鳴る丘…と言ったんだったな。確かにナスティールには丘がある」
「しかし丘はどこにでもあります」
それこそ王城の庭にすら小さいながら丘はあるのだ。朝陽が言った雷とどこかで見た丘の記憶が結びついて、何となく覚えていたナピリアートの言葉と結びついて夢に見た可能性も捨てきれない。
「スナオは前々からその夢を見ていたと言っていました。そして今回は双黒の男がここで待っている、と言ったそうです」
「ーーー嫌な夢だ、で終わればいいのだがな。スナオの他に神子はいないはずだ」
これがただの朴の夢でなければ、相手が神子だと名乗っている以上放置はできない。ダティスハリアが喚んだのがその相手だという可能性もある。
再びもそり、と朴が動き緩慢に瞬きをし始めた為彼らは一旦話をやめて寝ぼけ眼の愛しい番の元へ向かった。
「魘されてたけど、大丈夫?」
「…ティエ…」
ぎゅっと抱き着くと
「ここにいるわ」
と抱き締め返してくれる。体はまだ熱くて寒いから熱は下がってないんだろう。だったら今見た夢は熱の所為?いや、それにしては妙にリアルだった。まだ心臓がドキドキいってる。
「…ティエ、俺と朝陽以外黒目黒髪の人っている?」
「え?」
どういう事?と首を傾げるティエは全く心当たりがなさそうだ。
それにあの人が言った事が本当なら…あの人が神子?でもそれならあの人に浄化を頼めば良かった話だろう。どうして俺が喚ばれないといけなかったんだ?
「神子って他にいる?」
「待って待って、スナオ。何の話をしてるの?」
「…夢、かなぁ?」
俺の額に手を当てて側の小さな容器に布を浸してまた額に当ててくれる。冷たくて気持ちがいい。その冷たさでちょっとだけ頭が冷えてティエの手を握った。たった今冷たい水に浸した手がこれまた気持ちよくてそのまま頬に当てる。
「…変な夢を見るんだ。もう何回も見てる夢」
「どんな夢?」
「雷が鳴る丘に第一騎士団がいて、…でもみんな死んじゃう夢」
「嫌な夢ね」
そう。すごく嫌な夢。一番最初に見たのは確かディアと町に出た時だったっけ?その後はブラッキル領を出た後だったかな。その時にはあの影に「早く堕ちておいで」みたいな事を言われた気がする。その後も2年間の旅の合間にたまに見た。毎回同じ事を言われて目が覚めてたから、今日みたいに会話をしたのは初めてだ。
「俺と同じ黒目黒髪の奴がいたんだ」
「アサヒじゃなく?」
「朝陽じゃなかった。全然知らない人。そいつが自分が神子だから俺は紛い物だって。丘で待ってる、って言うんだ」
ティエの眉間に皺が寄る。怒ってるのか考えてるのかわからない顔を見上げたらすぐ笑顔になって俺の鼻先にキスしてくれた。
俺の頬から離れた手がまた背中を優しく叩いたりさすったりしてくれる。こうされると途端に眠たくなっちゃうから、ティエの手から何か波動が出てるんじゃないかって疑った。そんなわけないけど、でもティエなら何か出してそう。
「でも本当にスナオとアサヒ以外の双黒はいない筈よ」
「…ただの、夢だったかな…」
うとうとする俺の背中を撫で続けてくれるティエの胸にすり寄った。せっかく乗せてくれた布が落ちちゃったけど、今は甘えたい。ティエも察したみたいで濡れた布を容器に戻して俺を抱き寄せてくれる。
「このタイミングで雷が鳴る場所の夢を見たなら、無関係じゃないかも知れないし本当にただの夢かも知れない。だから団長が戻ったら聞いてみましょ」
「信じてくれるの?」
ただの夢だって切り捨てるにはあまりにリアルだったそれを、俺自身夢なのか夢じゃない何かなのか判別がつかない。朝陽に雷が鳴るって言われたから見た夢だって判断されたらそこまでだったけど、ティエは簡単に切り捨てないでくれた。それが嬉しい。
「スナオの話は信じるわよ。それに…気になる事もあるし…でも今はもう少し寝ましょ」
「うん…」
頭がぼんやりしてて起きてるのもしんどくなってきたから言われた通り目を閉じる。次は怖い夢じゃないといいなぁ。出来ればモフモフに囲まれる夢とかさ。皆で畑耕したりして…ローゼンは麦わら帽子似合いそうだけど、ディアとティエは似合わなさそう。
そんな事考えながら寝たら、今度は羊の大群に出会う夢を見た。しかもあの羊毛ぎっちりな手触りじゃなくてモッフモフしたどっちかっていうと手触りのいい毛布みたいな…猫なら思わずモミモミこねたくなる、そんな感じの…。
◇
ふと寝ていた筈の朴が
「モフモフ…」
と呟いてさわさわと毛布を撫でているのに気付いた番達はその寝顔を見下ろした。しかし本人はぐっすりと眠っている。紅潮した頬はまだその熱が下がっていない事を伝えているがパーピュアから預かった薬は本人が起きてからだ。番達は微笑んでから朴を起こさないようソファーへ移動した。
「…それで、その夢の相手はスナオに“紛い物”と言ったと」
「はい。確かナピリアート・ブラッキルもそのような事を言っていたと記憶していたので」
紛い物は死ね、という叫びはパルティエータを含めあの場にいた者は全員聞いている。だが朴の浄化を目の当たりにした誰もがその力が紛い物ではない事を知っている。
「本人は気にしていないか忘れたのでは、とパーピュアは言っていたが…無意識下で覚えていたのかも知れん」
「ではやはりただの夢だと?」
首を傾げるローゼンにディカイアスは考え込む間を開けてから言った。
「いや…雷が鳴る丘…と言ったんだったな。確かにナスティールには丘がある」
「しかし丘はどこにでもあります」
それこそ王城の庭にすら小さいながら丘はあるのだ。朝陽が言った雷とどこかで見た丘の記憶が結びついて、何となく覚えていたナピリアートの言葉と結びついて夢に見た可能性も捨てきれない。
「スナオは前々からその夢を見ていたと言っていました。そして今回は双黒の男がここで待っている、と言ったそうです」
「ーーー嫌な夢だ、で終わればいいのだがな。スナオの他に神子はいないはずだ」
これがただの朴の夢でなければ、相手が神子だと名乗っている以上放置はできない。ダティスハリアが喚んだのがその相手だという可能性もある。
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