上 下
114 / 202
第二章 浄化の旅

ドラゴンうるせぇ!!

しおりを挟む
レオニスは

「どうやってあの塔までいくつもりだ?」

と首を傾げる。
土魔法で足場を作って行っても良いけど…あ。

『ミコォォォォォーーーー!!』

「ぎゃぁ!こっち来た!!」

突風で吹き飛ばされそうになる俺をレオニスが抱き止め、上空を睨み付けた。

「向こうを助ける前にお前がやられるぞ」

「確かに…あの爪食い込んだら死にそう…」

ヘルクロウの爪ですら結構な傷が出来たんだ。ドラゴンの爪なんか食い込んだら体が真っ二つになっちゃう。
しかも俺を狙ってずっと上空を旋回してるから下の皆はドラゴンに攻撃したくても出来ないみたいだ。

「…レオニス、あそこにいるのこの国の王子達とその伴侶達なんだよ」

「そのようだな」

「俺は下でドラゴンを引き付けるからその間にあの人達助けられない?」

何言ってんだこいつ、みたいな顔された。
だけどドラゴンが俺を狙ってるのなら俺が下に行けばドラゴンも下に来るはず。そしたら騎士団やナフィーリア軍も攻撃の手立てがあるだろうし、その間に階段が崩落して動けないみんなを助けられるんじゃないかな、って。

それに今は俺しか目に入ってないドラゴンが逃げ場のないみんなを見つけたら何をするかわからない。早くあそこから助けなきゃ。

「あの人達はこの国にいなきゃいけない人達なんだ」

「死ぬつもりか?」

えっ、この人何怖いこと言ってるの?俺だって死ぬつもりさらさらないですけど!ちょっと下に降りて引き付けて、パーピュア達が助かったら全速力で逃げるつもりでいますけど!

「俺が死んだらねぇ…ディアが…俺のつがいが他の番二人に殺されちゃうらしいから死なない」

「何だ、お前番持ちか」

また頭の上を通過していくドラゴンから俺を庇って残念そうに言ってくるレオニスを見上げる。

「ナフィーリアに拐って帰ろうかと思ったが、残念だ」

「…国際問題になるんじゃないの」

いや、でも俺もちょっとモフモフの国は気になるけどね!今度遊びに行かせてね。

『ミコォォォォォーーーー!!コノクニモ、スベテハヨノモノゾォォォォーーーーーーー!!』

とりあえずドラゴンうるせぇ!!

「…それで、あっちの救助任せても良い?」

「貸し一つだな」

ぐしゃぐしゃと頭を撫でたレオニスのモフモフをどさくさ紛れに触って、よろしく、って言って塔から飛び降りる。向こうの方からメイディの、スナオ様!って悲鳴みたいな声が聞こえてきたけど、大丈夫。俺だってこの3ヶ月馬車でダラダラしてばっかりだったわけじゃないよ。

「えいっ!」

ヘルクロウに落とされた時に使ったぽよぽよ水風船、いつでも出せるようになったんだ。それに乗ってぽよん、ぽよん、と下まで降りる。
みんなの事もこれで下まで降ろしてあげられたら良いんだけど、あんまり長く出せないし万が一ぽよらなくて落ちちゃったりしたら大変だしな。
あっちはレオニスに任せよう。ほんのちょっとしか話してないけど、あの人は何か信頼できそうな雰囲気だったし。

スタッ、と着地した途端に物凄い地響きを立ててドラゴンが地面に降りてきた。しかも爛々と光る金の瞳がもう背後にまで迫ってて、目の前でがばりと鋭い牙の並んだ口が開く。

「あっち行けー!!」

火は嫌いだ。一番最初に丸焼きにされそうになった記憶が甦るから。だけど一番攻撃力が高いのも火。毎日ロウソクくらいの炎から克服して、最近やっと出来るようになった。イメージは火炎放射器。俺の手の平から勢い良く噴射した火炎に

『ギャァァァァァ!!!!』

っとたまらず仰け反るドラゴンから走って逃げる。
確かドラゴンは魔法耐性も高いって言ってたから、熱々のお茶でちょっと火傷したわぁ、程度のダメージにしかなってないだろう。とにかくここから引き離さないと!
でも普通に走ったってドラゴンの一歩は俺の何百歩分?ってくらい。だから今度は複合魔法。水で作ったボードを風の魔法で浮かせてジェット噴射がついたスケボーみたいなイメージでその場を急いで離れる。これバランス取るの大変だけど慣れたら走るより断然早くていいんだよな。

案の定ドラゴンは直ぐ様復活して俺を追ってきた。とりあえずパーピュア達の側からは離れたからレオニス、今のうちに頼んだよー!!

「スナオ!」

「ディア!」

水のスケボーは便利な反面2属性の魔法を使うから集中力も乱れやすいしすぐくたびれるのが難点だ。
とりあえず皆がいるところまで誘導してみたけど、誘導しても良かったのか?

「ごめん、連れてきちゃったけど良かった!?」

「構わん。飛ばれるよりはいい」

「でもあれどうやって倒すの!?」

前も第一騎士団はほぼ壊滅状態になった。それはナスダルドラゴンじゃない、別のドラゴンだったらしいけどーーーなんて思った背後から。

『グギャァアァァァァーーーー!!!』

「えぇぇぇぇ!!!?もう一匹ーーー!!?」

真っ赤な鱗、碧い瞳のドラゴンが長い尾を振って周りの兵を薙ぎ払っている。そのドラゴンの向こうに。

「クソ眼鏡!!!」

遠目で良く見えないけど間違いない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

追放されたボク、もう怒りました…

猫いちご
BL
頑張って働いた。 5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。 でもある日…突然追放された。 いつも通り祈っていたボクに、 「新しい聖女を我々は手に入れた!」 「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」 と言ってきた。もう嫌だ。 そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。 世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです! 主人公は最初不遇です。 更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ 誤字・脱字報告お願いします!

【父親視点】悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!

匿名希望ショタ
BL
悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!の父親視点です。 本編を読んでない方はそちらをご覧になってからの方より楽しめるようになっています。

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!

彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど… …平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!! 登場人物×恋には無自覚な主人公 ※溺愛 ❀気ままに投稿 ❀ゆるゆる更新 ❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

捨てられた僕を飼うけだものは

おさかな
BL
とある元貴族の家に生まれた子、ひよりは家の邪魔者として半ば追い出されるようにして獣人の住む町に奉公へ向かうこととなり、そこで美しい銀色の狼の紳士、アカツキと出会う。 偽の紹介状を渡され行く宛てをなくしたひよりは、アカツキに拾われそこでメイドとして働くことになる――

処理中です...