109 / 202
第二章 浄化の旅
近隣諸国
しおりを挟む
「ん…ぅ…」
ちゅ、ちゅ、と軽くキスした後ぬる、と入り込んでくる舌にくすぐられて体がぴくり、と跳ねてしまう。
だけど待て待て!馬車動いてるし!中の音が聞こえなくても外から覗いたら見えるし!あえて覗こうとする人はいないだろうけど、それでも今はダメー!!
押し返そうとする手の平を顔の横に押し付けて動けなくされて焦るけど、ディアも今はダメな事はちゃんとわかってるようで最後にちゅ、っとおでこにキスして離れた。
「もー!折角マッサージしてあげたかったのに!」
「すまん。だが軽々しくイオの上に乗るのは良くない」
パルティエータだったら襲われてるぞ、なんて苦笑いとともに忠告される。…確かにティエは「我慢できねぇ」とか言ってきそう…。
モゾモゾ起き上がってディアの足の間に座る。比べ物にならんくらい足長い…。羨ましい…。なんてしばらく他愛もない話をした後、ディアはふ、と俺を後ろから抱き締める。
「スナオ」
「ん?」
「パワハルの事だが」
「…うん」
その名前で胃がきゅぅ、と痛くなるけど抱き締めてくれる腕に安心して縋った。
ここのところバタバタして忘れてたけどあのクソ眼鏡は逃げてたんだった。
「見つかった?」
「いや。見つかったわけではない。ただ最近国境がきな臭くなってきている。それを先導してるのがパワハルではない、と断言できないそうだ」
レイアゼシカは「あいつじゃないと思いたい」って言ってたんだって。パワハルだと確信を得たわけでもなく、パワハルじゃないという確信もない。だから俺に教えとく、って。
「…それ俺が聞いても良かったの?」
「殿下からは何も言われてないが…お前は知っておきたいかと思ってな」
前も知っておきたいと言っていただろう、って言われて頷く。
怖いし本当は知りたくないけど、でも知らずに遭遇するのはもっと怖い。
「教えてくれてありがとう。気を付ける」
というか皆から離れんわ。ずっとくっついとくわ。いや、ほぼほぼ離れてないけど。
あとはあの適当な神様(仮)に呼び出されない事を祈るしかない。
「…ねぇ、国境は大丈夫なの?」
というかアークオランの向こうは何て言う国なんだろう。
俺はまだこの国の事だけでいっぱいいっぱいだったから、この国以外どんな国があるか知らないんだよな。
「今はただの小競り合いで終わっているが…何かあった場合は一度旅を中断する事になるだろう」
今小競り合いを繰り返してるのは西の国境でその先にあるのは獣人の国ナフィーリア。ローゼンやティエ達がいたのもこの西の国境近くの村だったんだって。でもラスカーテトさんみたいな獣人も住んでたように、特に仲は悪くなかったらしい。
反対に東の国境を越えたらエルフの住む大森林ハルル。エルフはあんまり他国と関り合いになりたくない人が多いけど、王都にエルフがいたように最近は大分オープンになってきてるんだって。
北の国境の先は魔術師の多く住むアークオランとはまた別のヒト族中心の国ダティスハリア。こっちもあんまり他国と関り合いになりたくないらしくて、ほとんど他国には来ない。黒に見える紺色っぽい髪色の人が多いらしい。
南にはドワーフの住む岩山の国。ドワーフはそこの洞窟に住んでるみたいだ。
国境に面してる国はその4つだけど、さらに先に行けば魔族の住む国とか他にも国はあるらしい。
今はまだ通行証を持ってる人はどこの国の人でもアークオランに入ってこれるけど、これが小競り合いの域で収まらなくなったら国境は封鎖されてしまう。そしたら物流も止まっちゃうし良いこと何か1つもない。
「ナフィーリアは友好国だ。それが突如敵対するとは考えたくないが」
「きな臭いねぇ…」
「そうだろう?何が起こるかわからん。用心するに越したことはない」
話しは終わりとばかりに、ディアの指が俺の首にかかった人魚の涙を掬い上げた。外からの光で色を変えながらキラキラ光るそれはすごく不思議だ。
「人魚の愛し子か」
「聞いたことある?」
「ああ。祝福を与えたい相手の前にのみ現れるが、その時々で姿は違うらしい」
俺の不運の申し子が不憫で出てきてくれたんだろうか。
「俺の前にはおじいさんの姿で出てきたよ」
「なら今のお前に必要なのは知恵なんだろう」
「ん?どゆこと?」
曰く。その時々の相手により、「老人=知恵」「青年=力」「少年=成長」「幼児=優しさ」みたいな感じでそれぞれに意味があるんだって。
確かに俺には知識とか知恵とか足りてないもんな…。
「知恵かぁ…。あんまり勉強しないまま旅に出ちゃったもんな。魔法も中途半端だし」
「それに関してはお前に非はない。全てはこの国の問題だ。だが旅の最中に使える魔法は増えているだろう」
お前は良くやっている、と頭をナデナデされると恥ずかしいけど、でも騎士団長のディアから言われるとやっぱり嬉しいな。
「不測の事態が起きても魔法が発動出来るようにしたいし、パーピュア達みたいに近くに寄られても戦えるように護身術とか習いたい!」
いつでも皆が万全で守ってくれるとは限らないし相手が魔法に弱いとも限らない。物理特化でも魔法防御を底上げするアイテムは沢山あるらしいし。
だからせめて魔法に頼らずに、みんなが来てくれるまで耐えるだけの護身術は身に付けておきたいな。
ちゅ、ちゅ、と軽くキスした後ぬる、と入り込んでくる舌にくすぐられて体がぴくり、と跳ねてしまう。
だけど待て待て!馬車動いてるし!中の音が聞こえなくても外から覗いたら見えるし!あえて覗こうとする人はいないだろうけど、それでも今はダメー!!
押し返そうとする手の平を顔の横に押し付けて動けなくされて焦るけど、ディアも今はダメな事はちゃんとわかってるようで最後にちゅ、っとおでこにキスして離れた。
「もー!折角マッサージしてあげたかったのに!」
「すまん。だが軽々しくイオの上に乗るのは良くない」
パルティエータだったら襲われてるぞ、なんて苦笑いとともに忠告される。…確かにティエは「我慢できねぇ」とか言ってきそう…。
モゾモゾ起き上がってディアの足の間に座る。比べ物にならんくらい足長い…。羨ましい…。なんてしばらく他愛もない話をした後、ディアはふ、と俺を後ろから抱き締める。
「スナオ」
「ん?」
「パワハルの事だが」
「…うん」
その名前で胃がきゅぅ、と痛くなるけど抱き締めてくれる腕に安心して縋った。
ここのところバタバタして忘れてたけどあのクソ眼鏡は逃げてたんだった。
「見つかった?」
「いや。見つかったわけではない。ただ最近国境がきな臭くなってきている。それを先導してるのがパワハルではない、と断言できないそうだ」
レイアゼシカは「あいつじゃないと思いたい」って言ってたんだって。パワハルだと確信を得たわけでもなく、パワハルじゃないという確信もない。だから俺に教えとく、って。
「…それ俺が聞いても良かったの?」
「殿下からは何も言われてないが…お前は知っておきたいかと思ってな」
前も知っておきたいと言っていただろう、って言われて頷く。
怖いし本当は知りたくないけど、でも知らずに遭遇するのはもっと怖い。
「教えてくれてありがとう。気を付ける」
というか皆から離れんわ。ずっとくっついとくわ。いや、ほぼほぼ離れてないけど。
あとはあの適当な神様(仮)に呼び出されない事を祈るしかない。
「…ねぇ、国境は大丈夫なの?」
というかアークオランの向こうは何て言う国なんだろう。
俺はまだこの国の事だけでいっぱいいっぱいだったから、この国以外どんな国があるか知らないんだよな。
「今はただの小競り合いで終わっているが…何かあった場合は一度旅を中断する事になるだろう」
今小競り合いを繰り返してるのは西の国境でその先にあるのは獣人の国ナフィーリア。ローゼンやティエ達がいたのもこの西の国境近くの村だったんだって。でもラスカーテトさんみたいな獣人も住んでたように、特に仲は悪くなかったらしい。
反対に東の国境を越えたらエルフの住む大森林ハルル。エルフはあんまり他国と関り合いになりたくない人が多いけど、王都にエルフがいたように最近は大分オープンになってきてるんだって。
北の国境の先は魔術師の多く住むアークオランとはまた別のヒト族中心の国ダティスハリア。こっちもあんまり他国と関り合いになりたくないらしくて、ほとんど他国には来ない。黒に見える紺色っぽい髪色の人が多いらしい。
南にはドワーフの住む岩山の国。ドワーフはそこの洞窟に住んでるみたいだ。
国境に面してる国はその4つだけど、さらに先に行けば魔族の住む国とか他にも国はあるらしい。
今はまだ通行証を持ってる人はどこの国の人でもアークオランに入ってこれるけど、これが小競り合いの域で収まらなくなったら国境は封鎖されてしまう。そしたら物流も止まっちゃうし良いこと何か1つもない。
「ナフィーリアは友好国だ。それが突如敵対するとは考えたくないが」
「きな臭いねぇ…」
「そうだろう?何が起こるかわからん。用心するに越したことはない」
話しは終わりとばかりに、ディアの指が俺の首にかかった人魚の涙を掬い上げた。外からの光で色を変えながらキラキラ光るそれはすごく不思議だ。
「人魚の愛し子か」
「聞いたことある?」
「ああ。祝福を与えたい相手の前にのみ現れるが、その時々で姿は違うらしい」
俺の不運の申し子が不憫で出てきてくれたんだろうか。
「俺の前にはおじいさんの姿で出てきたよ」
「なら今のお前に必要なのは知恵なんだろう」
「ん?どゆこと?」
曰く。その時々の相手により、「老人=知恵」「青年=力」「少年=成長」「幼児=優しさ」みたいな感じでそれぞれに意味があるんだって。
確かに俺には知識とか知恵とか足りてないもんな…。
「知恵かぁ…。あんまり勉強しないまま旅に出ちゃったもんな。魔法も中途半端だし」
「それに関してはお前に非はない。全てはこの国の問題だ。だが旅の最中に使える魔法は増えているだろう」
お前は良くやっている、と頭をナデナデされると恥ずかしいけど、でも騎士団長のディアから言われるとやっぱり嬉しいな。
「不測の事態が起きても魔法が発動出来るようにしたいし、パーピュア達みたいに近くに寄られても戦えるように護身術とか習いたい!」
いつでも皆が万全で守ってくれるとは限らないし相手が魔法に弱いとも限らない。物理特化でも魔法防御を底上げするアイテムは沢山あるらしいし。
だからせめて魔法に頼らずに、みんなが来てくれるまで耐えるだけの護身術は身に付けておきたいな。
4
お気に入りに追加
1,913
あなたにおすすめの小説
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
追放されたボク、もう怒りました…
猫いちご
BL
頑張って働いた。
5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。
でもある日…突然追放された。
いつも通り祈っていたボクに、
「新しい聖女を我々は手に入れた!」
「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」
と言ってきた。もう嫌だ。
そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。
世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです!
主人公は最初不遇です。
更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ
誤字・脱字報告お願いします!
顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
気付いたら囲われていたという話
空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる!
※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる