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第二章 浄化の旅

本当の狙いは

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「ではパルティエータが拾った小瓶と国王陛下の部屋にあった小瓶は同じものであると?」

「極微量に残った中身の分析はまだだが、小瓶自体は一般に流通している物ではない」

小瓶の形状、材質、加工工程、そのどれもが特殊で、聖王国だけでなく他の国でもほぼ使われていない物らしい。遥か昔の文献に作り方を残すだけの物なのだとか。
それが同じように性格の激変した人間の近くにある。最もパルティエータが拾った小瓶がナピリアートの物だったかは不明だが。

「…陛下はスナオを手元に置きたいらしいと聞きました」

パーピュアが、ふ、と口を開いた。あれはそんな可愛らしい物ではないけれど、あえて二人は何も言わず先を促す。

「しかしナピリアートはスナオへ“紛い物”と言ったと」

「紛い物…」

「紛い物は死ね、そう言って空に放り出したそうです」

そしてその後も執拗にすなおを狙っていたようだが、パーピュアが来た事で狙いは逸れた。

「本来の狙いはスナオだったのかも知れません」

レイアゼシカを奪われた怒りで我を忘れパーピュアに襲いかかったけれど。

「…スナオの浄化の力は本物だ。それを紛い物、と?」

ディカイスの眉間にぐっ、と皺が寄る。それに対し、まぁまぁ、と言いながらレイアゼシカは顎に手を当てため息をついた。

「反神子派でもいるのかねぇ…。それに関しては少し様子を見よう。浄化は始めたばかりだ。自分のところまでやってこない、神子は紛い物だから瘴気が収まらない、なんて言う輩はどこにでもいるだろう。スナオ本人はどうだ?気にしていたか?」

「特に気にしてはいないようです。もしくは空中に放り投げられた事が衝撃で忘れてるのかも知れませんね」

パーピュアは苦笑気味だ。スナオは良くも悪くも楽観的で、時折酷く卑屈になる事はあるけれど大抵の事は笑って許してしまえる度量の持ち主だと思っている。でなければとうに気がふれているだろう。

「…神官長の足取りは未だに掴めませんか」

今現在不安があるとしたら朴に執着していたあの神官長の事くらいだが、レイアゼシカは首を横に振った。

「やはり国内ではないな。このまま諦めてくれると良いが…国境付近の小競り合いが増えて緊張状態に陥ってる今は出てこないで欲しいもんだねぇ。…煽ってるのがパワハルじゃないと思いたいんだけど」

重々しいため息が部屋を満たした。




翌朝腹の調子もすっかり良くなって快適な目覚めを迎えた俺は目の前の事態にちょっと混乱する。
あれ?俺端っこで寝なかったっけ…?
いつ戻ってきたのか後ろから抱き締める形でディアの腕の中にきっちり囲い込まれてて、手はティエに握り込まれてた。
何か暑いと思ったんだよな…。

それにしてもまぁ…イケメンは寝顔もイケメンだよな。間違っても大イビキかいたり白目になってたり涎垂らしてたりしないもんなぁ。どういう事だ。イケメン補正でもかかってんのか。
というかディアがこんなにぐっすり寝てるのも珍しいかも。耳元でスースーと規則正しい寝息が聞こえてくすぐったい。

俺ももうちょっと寝ていたいけど…今日は出発するって言ってた気がするしな。なんて俺がモゾモゾしてたら一度ぎゅ、っと俺を抱き締めたディアに耳元で

「おはよう」

と言われて朝から耳が孕むかと思いました。




ガラガラと車輪の音を立てて馬車が進む。
出る前にみんなの首に人魚の涙をつけたらそれぞれキスで応えてくれたけど…最近慣れてきたとは言えやっぱああいうのは慣れない。恥ずか死ぬかと思った。
なんて思い出して悶えてる俺をディアが不思議そうな顔で見てくる。
ディアは指揮を取る立場であんまり馬車に乗ってもらえないからちょっと嬉しいな。今日はローゼンが指揮を取ってるんだって。そうだよな。ディアもたまには重責から離れてお休みしないとな。いつもいつも気付けば何だかんだ仕事してるし。
だから今日は馬車をベッド状のままにしてあるんだ。侍従ちゃんズがいつも俺にやってくれるマッサージをしてあげようと思って!侍従ちゃんズみたいな本格的なマッサージは出来ないけど、服の上から揉むくらいは出来るよな。

そんなわけで鎧は脱いでもらってるんだけど…やっぱりこのぴっちりインナー…ちょっとエッチだ…。
いや、もう裸だって何度も見ましたけど。でも何でか裸よりぴっちりインナーの方がエッチく見えるわ。あんまり見てるのも申し訳ないからディアに寝転がってもらって背中をもみもみする。

「んー…やっぱ結構動くからかな?凝ったりしてないね」

普段あれだけ柔軟に動くし、血行は良いんだろうなぁ。可動域も広いし体も柔らかい。俺は運動嫌いな訳じゃないけど仕事柄同じ体勢でいることが多かったから肩凝り酷いんだ…。最近は動いてる事の方が多いからここへ来る前ほどでもないけど。
もみもみさすさすしてる内に…ぐるん、と視界が入れ替わる。
いつの間にか素早く向きを変えながら起き上がって、逆に俺を押し倒したディアに見下ろされてた。

「あれっ」

すごい早業!!

「マッサージよりこっちの方が良い」

こっちってどっち、と訊く前にむちゅっと唇を塞がれた。

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