【本編完結】農民と浄化の神子を並べてはいけない

ナナメ

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第二章 浄化の旅

魂を運ぶ虫 ※微グロ注意

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いや!今回はね?無茶してなくない?むしろまた不可抗力だったくない?いきなり空中に連れていかれるなんて誰も思わなかったよね?ね?
しかも浄化は俺しか出来ないんでしょ?なら俺が動くのも仕方ないよね!?

「…その怯えた顔、襲いたくなるからやめて」

困ったように微笑んで、ぎゅ、と俺を抱え直して水車小屋があった場所に走ってくれる。
やっぱりちょっと震える腕にティエの気持ちが籠ってる気がして、俺はその首に腕を回した。

「…あのね、ティエ。みんなが俺を心配してくれるように、俺もみんなが心配なんだ」

ティエの走り方は普段から音を立てないようにしてるからなのか、不思議と大きく揺れたりしない。だからその首にしがみついてぽつん、と言った。

「みんなが怪我するの嫌だし、死んじゃったら、って思うと怖いよ」

思えば最初に治癒魔法を使った時、ローゼンが俺のつがいだって知らなくて良かったのかもな。あの時点でわかってたら俺はパニックになってたと思うから。

「だからそうならないように、俺だってみんなと一緒に頑張りたいんだ。ティエ達もだし、騎士団のみんなも、一人だって失いたくない」

俺の手で守れる物なんてきっとそんなに多くはないけど、俺が守った誰かがまた他の誰かを助けてそれが連鎖して結果皆を守れるなら…それが一番良いと思うんだ。

「きっとこの先も皆を守る為に無茶するよ。でも…絶対みんなを置いていったりしないから、だからティエ達も俺を置いていったりしないで」

俺を抱く腕にぎゅ、と力が籠る。

「…あなたに無茶させないようにワタシ達もしっかりしないとね」

ふ、と笑う気配と共に言われて、その頬にキスして…その裏でドバッと冷や汗をかく俺。
だ、大丈夫かな?お仕置き回避したかな!?流石にまたお仕置きじゃー!とかやられたら今度こそ俺の尻爆発するからな!!?ティエ様!今の俺の言葉、他の二人にもちゃんと伝えてね!?いや!いいわ、変な風に伝わったら困るから自分で言うわ!
だから今回は絶対魔力切れとかその他で気絶するわけにはいかないぞ…!最後まで気をしっかり保つんだ!頑張れ俺!!

うん!と一人決意を新たにしてる内にうぞうぞと瘴気が逃げ込んでいく水車小屋跡地に到着した。

「…地下…?」

元は床下にあったのだろう、鉄格子で塞がれた地下への入り口。下を覗くと瘴気で真っ黒になってて何も見えない。
でもティエは下を覗き込んで直ぐ様俺の目を塞いだから、きっと俺が見ない方がいい何かがあったんだろう。

「ティエ…瘴気で何も見えないから大丈夫。浄化するよ」

「…わかった」

そっ、と外された手の平が俺の背中に触れる。魔力の高くないティエからはパーピュアやメイディみたいな光は分けてもらえないけど、その手の平の温もりに勇気をもらって鉄格子の上に手をついた。

うぞうぞする瘴気を掃除機のごとく吸い込んでいくと、また腹に集まっていくのがたまらなく気持ち悪い。何で腹に集まるんだろう。そんな疑問が浮かんだけど、さっさと浄化しないといつもみたいに負の感情に飲まれてしまう。ふる、っと頭を振って疑問を振り払っていつもみたいに光で包むイメージをして。

「戻れ!」

もう一度バンッと手をつくと。俺の体からブワッと何かが抜けて辺りがパーッと明るくなって。次見た時には辺りにはふわふわと蛍みたいな光る虫が集まってた。

「…虫…?」

「死者の魂を運ぶ役目があるって言われる虫よ」

力が入らなくてティエに寄りかかったままふわふわと舞うその虫を眺めてたら、何匹かが俺の元に来てまるで礼でも言うかの様にちかちかと光ってから飛び立つ。
何だろう。本当に誰かの魂だったのかな。何だかありがとう、って聞こえたような。
まぁ真相はわからないけど、魂を運ぶ虫だと言うのなら

「次の人生、幸せにね」

今生が幸せだったかは知らないから次の人生も、とか次の人生は、とか言えない。だからそう言った。
一際強く光った虫達が川に沿って消えていくのを何とも言えない気持ちで眺めてたら。

カラン…、と音がした。

「誰!?」

俺を素早く背中に隠し、バッと振り返るティエの足元にコロコロコロコロ何かが転がってくる。まさか爆発物じゃないだろうな!?なんて警戒もあらわに見てたんだけど、僅か手前の小石に引っ掛かって止まったそれは何の変哲もない小瓶。

「…小瓶…?」

しばらく辺りを警戒するけどそれ以上何もなく、特に他に物音がするわけでもない。ティエも気配を感じないのか僅かに困惑した表情のまま布を取り出してその小瓶を持ち上げた。中身も何も入ってない、本当にただの小瓶だ。辺りを見回してもやっぱり人気はないし、どこかから風で転がるような軽さでもない。
瘴気があった場所に突然転がってくる謎の瓶なんて怪しすぎる。

「…一応何かの証拠になるかも知れないわね」

布で包んでさらに毒物だった場合の事を考えて中身が漏れ出ない袋に入れて、それをさらに魔封じ付きの袋に入れて、と厳重に包んで腰の荷物いれに押し込んだティエが俺を抱き上げた。
あー…安心して寝ちゃいそう…。いや、ダメだ!まだ油断するな俺!あと二人お仕置き魔神が待ってるからな!!





「ナピリアート・ブラッキル。お前には誘拐、監禁、殺人の容疑がかかっている」

子供から大人まで見目の良いメムが何人も行方不明になっていて、巧妙に隠されてはいたけれど辿った糸の先にはナピリアートがいた。この地に派遣されていた第四騎士団もブラッキル家に目はつけていたものの、相手は伯爵家。令状を取るのすら難しくなかなか捜査に踏み込めずにいたところに第一騎士団とレイアゼシカがやって来たのである。

そして夜までに一気に捜査を進め、ようやく主犯を追い詰められた。

「…ナピリアート・ブラッキル。あの瘴気についても話を聞かせてもらおう。お前の屋敷に出入りしていたという男の事もな」

ディカイアスに剣を突き付けられ、騎士団に拘束されて尚パーピュアを睨んでいたけれど、

「仮にも私の番だと言うのなら、捜査に協力してもらおう」

レイアゼシカの冷たい声音にパァ、と顔を輝かせて頷いたーーー瞬間。

「ぅ…ぐぅ…ッ!!!」

頭を振ってもがくナピリアートの細首に血のような赤い紋様が浮かんでいる。ギチギチと絞め上げ、騎士が異変を察し離れた途端ーーーバァン!!と、弾けた。

血飛沫が飛び散り、ごとり、と首が落ちる。何が起きたかわからない、そんな表情のままだ。ゆらり、ゆらり、と揺れていた体がゆっくりと倒れた。

しばらく辺りに警戒と驚愕の静寂が落ち、やがてポツリ、とディカイアスは言う。

「ーーー口封じされたな…」

小悪党な父を諌める心優しい青年だった筈のナピリアートの豹変ぶりは、賢王と言われたナスダルの異変と通じるものがあった。背後にいたのは同一人物だったのではないのか。
掴めそうだった手がかりが消え失せ彼らは失意のため息をついた。

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