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第二章 浄化の旅
傭兵隊 グレイブ・アンヘル
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神子が第一騎士団と旅に出たのは周知だし、あの出発パレードでチラッと俺の顔も見てたし俺が神子だって最初からわかってたんだってー。
ただあの状況で言う暇もなかっただけらしい。
うん…。まさか急にあんな卑猥なモンスターが襲ってくるとは夢にも思わなかったもんな。というかあんなモンスターがいるなんて事も想像しなかったしな。
そしてこの森にモンスター退治に来たと言う彼らは、傭兵グレイブ・アンヘルというらしい。
傭兵…!!初めて見たけど、騎士団とまた違った感じでかっこいいな!
俺がここにいるって事はこの外れない指輪で番のみんなに伝わってる、って言ったらドン引きしてたけど、迎えがくるのがわかってるなら動かない方がいいって事で温泉の側で野営をする事になった。
そんなわけで今俺は、廣森 朝陽って名乗った隻眼の青年と一緒に天然の温泉に浸かっています。
「やっぱり朝陽も異世界転移した人だったんだな~」
この世界で二十歳を迎え、ここへ来てもう7年経つ彼は現在27歳。年上だから敬語…と思ったんだけど、当の朝陽から敬語は苦手だから嫌だ!と散々言われタメ口にしてる。他のみんなも敬語は嫌だと言うからタメ口にしてるけど、俺が神子だからどうこう言うより敬語だとアンリエッタさんを思い出すから嫌みたいだ。
神子だからみんなに敬語を使ったら駄目!って言うのは騎士団とかお偉方が言ってるだけなのかな…?傭兵隊にはあんまり関係なさそう。
「騎士団には異世界転生した人もいるんだけどさ、結構多いな。異世界人」
「んー。俺はお前しか会った事ないけど、黙ってるだけで他にもいるかもなー」
「朝陽は神子だー!とか言われなかったのか?」
「最初の頃に言われたけど、俺魔力ほとんどないしな。すぐ違うってわかったみたいだぞ。…それよりも朴…お前何も知らなそうな可愛い顔して一丁前にエロい痕つけてんなぁ」
朝陽にニヤリ、と笑われ首を傾げ…そしてハッとする。
そう言えば…!!ローゼンにつけられた痕!大分薄くなってきてたけどまだ残ってた…!!!
バシャン!と湯をはね飛ばしながら湯に口元まで潜って痕を隠すと、
「何だよ、隠すなよ。ちょっとお兄さんに見せてみ?」
なんて手をワキワキさせて寄ってくる。
「ギャー!!見なくていいよ!!というか今さらだけど朝陽って性別どっち!!?」
日本の癖で同性だと思って一緒に風呂入ってるけど、これでイオだったりしたら…侍従ちゃんズにイオと二人で風呂なんて警戒心無さすぎます!!って怒られる気がする。…俺が大浴場行ってるって話したらそうやって怒られたんだ。確かにメムも入ってるけど、あの人達は戦えるからいいんです。スナオ様は組伏せられたら終わりです!ってお目々吊り上げて言われて、すいません…って謝るしかありませんでした。
「俺はメムだ」
「あ、良かった。俺も」
異世界人はメムになるんだろうか…?今のところ転移にしろ転生にしろみんなメムだ。
「でもメムは力弱い人が多いって聞いたんだけど…朝陽は強そうだね」
「俺は魔力ほとんどない分物理に全振りされたみたいだわ」
「えぇ…いいなぁ…。俺なんか肩叩かれただけで骨折するのに…」
「おお!あれな!めっちゃびびった!」
なんて俺達が楽しく談笑してる頃、温泉を囲うようにアンリエッタさんが立てた衝立の向こうからは何やら賑やかな声している。声…というか…悲鳴というか…。え、これ大丈夫なやつ?
◇
「くそ…っ、この向こうに行けば天国があるってのに…!」
「畜生!天国の前なのに地獄の番人みたいな奴がいやがるぜ…!!!」
衝立の向こうからはアンリエッタの大切な朝陽と神子の笑い声がしている。今頃二人でキャッキャウフフと温泉を楽しんでいるのだろう。
そして不埒な馬鹿共から朝陽とついでに神子の清らかな裸身を守るのがアンリエッタの役目である。ーーーそう、アンリエッタの大切な番、朝陽を守るのは自分しかいない。
「私がここにいる限り、この衝立の向こう側に行けると思わない事ですね」
アンリエッタの魔力に合わせ、ザワザワと森の木々が揺れる。しかし決して衝立が揺れる事はない。
「くっ…笑顔でプレッシャーかけて来やがって…!」
「おい!木の上から見えるんじゃないか…!?」
「ハッ!お前頭いいな!!」
いや、番人の目の前でそれを言ってしまう辺り頭が残念なのでは。アンリエッタは、ふ、と穏やかに微笑んだ。慈愛の微笑みーーーに見える、悪魔の微笑。
「甘いんだよ脳筋共が!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁーーーーー!!!」
「さっきの触手、ちゃっかり使役してやがったぁぁぁぁーーーー!!!」
「おっさんの触手ぬるぬる状態見て何が楽しいんだーーー!!!」
触手に捕まって地べたを引きずり回されるおっさん達。それを遠巻きに眺める我関せず組。
グレイブ・アンヘルは今日もみんな仲良しである。
◇
「…何か…外から触手がどうとか…」
段々悲鳴が大きくなっているような…。だ、大丈夫なのか!?
朝陽はいつもの事だ、とケタケタ笑ってるけど外からは
『あーーー!!グレッグがやられたーーーー!!!』
『グレッグーーー!!お前の意思は俺達が継ぐぜーー!!』
なんて結構な騒ぎだ。一体何が起きてるんだ…!?
「まぁまぁ、気にするなよ。アンリが何とかするって」
「…えぇ…、うん…」
『うわぁぁーーーー!!!サイハーバルもやられたぞーーーー!!』
『くそぅ!悪魔めぇぇぇ!!!』
…本当に大丈夫なやつ…??
ただあの状況で言う暇もなかっただけらしい。
うん…。まさか急にあんな卑猥なモンスターが襲ってくるとは夢にも思わなかったもんな。というかあんなモンスターがいるなんて事も想像しなかったしな。
そしてこの森にモンスター退治に来たと言う彼らは、傭兵グレイブ・アンヘルというらしい。
傭兵…!!初めて見たけど、騎士団とまた違った感じでかっこいいな!
俺がここにいるって事はこの外れない指輪で番のみんなに伝わってる、って言ったらドン引きしてたけど、迎えがくるのがわかってるなら動かない方がいいって事で温泉の側で野営をする事になった。
そんなわけで今俺は、廣森 朝陽って名乗った隻眼の青年と一緒に天然の温泉に浸かっています。
「やっぱり朝陽も異世界転移した人だったんだな~」
この世界で二十歳を迎え、ここへ来てもう7年経つ彼は現在27歳。年上だから敬語…と思ったんだけど、当の朝陽から敬語は苦手だから嫌だ!と散々言われタメ口にしてる。他のみんなも敬語は嫌だと言うからタメ口にしてるけど、俺が神子だからどうこう言うより敬語だとアンリエッタさんを思い出すから嫌みたいだ。
神子だからみんなに敬語を使ったら駄目!って言うのは騎士団とかお偉方が言ってるだけなのかな…?傭兵隊にはあんまり関係なさそう。
「騎士団には異世界転生した人もいるんだけどさ、結構多いな。異世界人」
「んー。俺はお前しか会った事ないけど、黙ってるだけで他にもいるかもなー」
「朝陽は神子だー!とか言われなかったのか?」
「最初の頃に言われたけど、俺魔力ほとんどないしな。すぐ違うってわかったみたいだぞ。…それよりも朴…お前何も知らなそうな可愛い顔して一丁前にエロい痕つけてんなぁ」
朝陽にニヤリ、と笑われ首を傾げ…そしてハッとする。
そう言えば…!!ローゼンにつけられた痕!大分薄くなってきてたけどまだ残ってた…!!!
バシャン!と湯をはね飛ばしながら湯に口元まで潜って痕を隠すと、
「何だよ、隠すなよ。ちょっとお兄さんに見せてみ?」
なんて手をワキワキさせて寄ってくる。
「ギャー!!見なくていいよ!!というか今さらだけど朝陽って性別どっち!!?」
日本の癖で同性だと思って一緒に風呂入ってるけど、これでイオだったりしたら…侍従ちゃんズにイオと二人で風呂なんて警戒心無さすぎます!!って怒られる気がする。…俺が大浴場行ってるって話したらそうやって怒られたんだ。確かにメムも入ってるけど、あの人達は戦えるからいいんです。スナオ様は組伏せられたら終わりです!ってお目々吊り上げて言われて、すいません…って謝るしかありませんでした。
「俺はメムだ」
「あ、良かった。俺も」
異世界人はメムになるんだろうか…?今のところ転移にしろ転生にしろみんなメムだ。
「でもメムは力弱い人が多いって聞いたんだけど…朝陽は強そうだね」
「俺は魔力ほとんどない分物理に全振りされたみたいだわ」
「えぇ…いいなぁ…。俺なんか肩叩かれただけで骨折するのに…」
「おお!あれな!めっちゃびびった!」
なんて俺達が楽しく談笑してる頃、温泉を囲うようにアンリエッタさんが立てた衝立の向こうからは何やら賑やかな声している。声…というか…悲鳴というか…。え、これ大丈夫なやつ?
◇
「くそ…っ、この向こうに行けば天国があるってのに…!」
「畜生!天国の前なのに地獄の番人みたいな奴がいやがるぜ…!!!」
衝立の向こうからはアンリエッタの大切な朝陽と神子の笑い声がしている。今頃二人でキャッキャウフフと温泉を楽しんでいるのだろう。
そして不埒な馬鹿共から朝陽とついでに神子の清らかな裸身を守るのがアンリエッタの役目である。ーーーそう、アンリエッタの大切な番、朝陽を守るのは自分しかいない。
「私がここにいる限り、この衝立の向こう側に行けると思わない事ですね」
アンリエッタの魔力に合わせ、ザワザワと森の木々が揺れる。しかし決して衝立が揺れる事はない。
「くっ…笑顔でプレッシャーかけて来やがって…!」
「おい!木の上から見えるんじゃないか…!?」
「ハッ!お前頭いいな!!」
いや、番人の目の前でそれを言ってしまう辺り頭が残念なのでは。アンリエッタは、ふ、と穏やかに微笑んだ。慈愛の微笑みーーーに見える、悪魔の微笑。
「甘いんだよ脳筋共が!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁーーーーー!!!」
「さっきの触手、ちゃっかり使役してやがったぁぁぁぁーーーー!!!」
「おっさんの触手ぬるぬる状態見て何が楽しいんだーーー!!!」
触手に捕まって地べたを引きずり回されるおっさん達。それを遠巻きに眺める我関せず組。
グレイブ・アンヘルは今日もみんな仲良しである。
◇
「…何か…外から触手がどうとか…」
段々悲鳴が大きくなっているような…。だ、大丈夫なのか!?
朝陽はいつもの事だ、とケタケタ笑ってるけど外からは
『あーーー!!グレッグがやられたーーーー!!!』
『グレッグーーー!!お前の意思は俺達が継ぐぜーー!!』
なんて結構な騒ぎだ。一体何が起きてるんだ…!?
「まぁまぁ、気にするなよ。アンリが何とかするって」
「…えぇ…、うん…」
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『くそぅ!悪魔めぇぇぇ!!!』
…本当に大丈夫なやつ…??
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