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第一章 異世界に来ちゃった

朝に弱い男

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翌朝、騎士団に保護されて以降初めてローゼンの部屋以外で目が覚めたわけですが。後ろからがっちりティエに抱き締められてるし、頭の下にはティエの腕が…。これって腕枕…っ!

何か恥ずかしくなって一人、キャーッ!と両手で顔を覆う。

「スナオ…?」

「ん…っ」

や、やめろーーー!!寝起き一発目にその18禁ボイスは!!!しかもティエも寝起きだからかちょっと声が掠れてて、より一層色気が溢れてるし!耳が孕むってこういう事だよな!
文句言おうとバッ、と振り返って、また俺はキャーッ!ってなった。

「何で服着てないの!?」

「んー…いつも上は着ない…」

あ、ホントだ。下はちゃんとはいてる。いや、じゃなくて!

「こらこらこら!!俺を布団に引きずり込むな!二度寝しようとするな!」

「スナオ、朝から元気すぎ…。まだ寝よう…」

「ダメだって!ティエ今日仕事は?それに俺、パーピュアに会いに行かなきゃ!」

「んん…明日でいいじゃん…」

なんと言うことでしょう。この男…もしや朝に弱いのか…!?

「スナオも声嗄れてるし…寝たら治るよ…」

「誰のせいだ!寝なくても勝手に治るわ!おーきーろ!!」

ゆさゆさと何度も肩を揺さぶってようやくムクリ、と起き上がり大あくびをしている。片手で髪をかきあげる仕草が男らしくてちょっとドキッ、としてしまった。くそぅ、イケメンは何やらせてもイケメンだよな…っ!

「…スナオ…おはよぉ」

「う…っ」

うわぁぁぁぁぁ!!!何だこの生き物ぉぉぉぉ!!!!男前なのに朝はこんなにふにゃふにゃしてるのか…!?ギャップ…!ギャップ萌え…っ!

というか、普段からこんなにふにゃふにゃしてて仕事にちゃんと行けてるんだろうか?
心配ポイントがおかんみたいかも知れないけど、ちょっと気になる。

「ティエ、普段遅刻せずにちゃんと仕事行ってるか?」

俺の社畜魂が遅刻は許されないと叫んでるんですよ。

「ちゃんと行ってるわよ~」

ハッ!やっといつものティエだ!何か安心する。
ベッドを降りて、んー!!っと伸びをするその背中に残る沢山の赤い筋。あれって…もしかしなくても…俺の爪痕じゃーーーーん!!!!
ごめんね!?あれ絶対服に当たると痛いやつだよね!

「ティ、ティエ…っ」

治癒魔法をかけようと慌ててベッドから降りた瞬間…

「ぎゃん!」

ぐしゃあ、と足から崩れ落ちてしまった。
えっ、何で?足に全然力入んないんだけど!

「ちょっとちょっと!スナオ、大丈夫?」

逆に慌ててしゃがみこむティエに助け起こされてしまった。

「足に力が…」

「あーそれは…ごめんなさい」

昨日というか割りと深夜くらいまで遠慮容赦なくヤったせいで足腰に力が入らなくなった、というティエの言葉に俺はまた恥ずか死ぬ思いをしたのでした。なので背中の傷は治してやりませんでした。





今騎士団の食堂に行くのはちょっと、というティエの主張で部屋に食事を運んでもらった。
あの塩気のあるふかふかパンとスープ、またも巨大な目玉焼きとやたら長いカリカリベーコン。それにあの青いサラダ。青って食欲減退色っていうけど…食べてみるとうまいんだよな、これ。今日はそこにちょこん、とミニトマト的な赤い実が乗ってる。
そしてやっぱりローゼンと同じくティエも沢山食べるし、何だったら俺にも食べさせようとしてくるし。

「無理だから!ホントに腹一杯だから!」

少食過ぎるって言われるけど、あんた達がめちゃくちゃ食べるんだからね!?俺普通だから!

そんなこんなで朝食後。団長執務室には若干重苦しい雰囲気が漂っている。この雰囲気の出所はずーん、と沈んでるパーピュアさんです。

(あれ…?ローゼンは…?)

ちら、と周りを見回すけどそう広くもない部屋の中だ。パーピュアの他にいるのはディカイアスとティエだけで、いつもいるローゼンがいない。
俺の視線が動いたのに気付いたのか

「ローゼンは貧血だ。明日には良くなる」

とディカイアスが教えてくれる。

「貧血…」

「腹に穴が開いたからな」

「腹に穴!!!」

なんてこった!だからあの時担架で運ばれてきたのか!
それって無事なのか聞こうと思ったけど、そういやみんな無事だった、って昨日聞いたもんな。無事じゃなかったらディカイアスもこんなに淡々としてなさそうだし。…いや、俺にこの人の表情変化がわかるだろうか…。

「命に別状はない。今日もスナオが来ると聞いて出勤しようとするからベッドに縛り付けてきた」

「マジか」

容赦ないですね…?

「本題に入りたいが…その前にパーピュア」

パーピュアはディカイアスに声をかけられ、びくっ、と肩を揺らした。のろのろ上げた顔は何か悲壮な決意を込めているように見える。

「お前は…スナオに治癒をさせたら魔力切れを起こす、とわかっていたな?」

「えっ」

そうなの?びっくりしてパーピュアを見ると、す、と目を逸らされた。少し考え込むような間があってからもう一度こっちに視線を向けたパーピュアはいつものようにしっかりと俺達を見つめて言った。

「わかっていました。あの状況で、スナオが魔力を制御できるはずがないので」

「私達はスナオを関わらせないように寮に結界を張らせていた筈だが?」

「…スナオの魔力では結界は無意味です。彼の魔力は3S。騎士団の誰よりも魔力が高いですから」

それはすなわち、魔法防御も誰よりも高く魔法で彼を止められる者はいない、って言われて当の俺はびっくりして思考停止状態だ。
というか俺結界張られてたの?それにもびっくりなんですけど!

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